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ディストピア生活初級入門(第5部まで完結)  作者: 中将
第3章 電脳戦

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第37話 結果発表までの余興

「不意打ちは完全に成功したようですね。テルル中将さんの作戦はいつも的確で驚きます」


 クリーさんは汗をぬぐいながら言った。全速力で走ってきたためかまだ息が整っていない。


「いやぁ、チェリーさんがもう1チームが存在しているかもしれないと気づいてくれて助かった。気づいてくれてなかったら無様に空の宝箱の前で呆然と凍り付いていたところだったね(笑)

 ホント銀髪の男を倒して完全に油断してたよ(笑)」


 ホント、最後の詰めが甘いのが僕の悪い所と言える……。ただ戦って良いだけの場合はこんな初歩的なミスをしないのだが、安心しきった瞬間はとんでもないことをやらかす傾向がある……。


「いえ、先ほどの銀髪の男の発言を何となく思い出していたら気づいたんです。

 それにこういう長いプロジェクトに関しては終わりが肝心ですからね。

 ここで失敗してしまってはこれまでの苦労が水の泡になってしまいます。

 それだけは何としても防ぎたかったんです」


「僕はラストに一番油断しやすいから本当に助かったよ。

 正直このピラミッド攻略のMVPと言っても過言では無いね」


「いえいえ、そんなことは……」


「私もそう思います。私なんてどういう宝箱の中身なんだろうとかそんなことを呑気に考えていましたからね」


「そうそう。宝箱の中身をこれでゆっくり探せるわけだ。空いている宝箱の中を順々に見ていこう」


「いえ、その必要は無いです。実を言うと、トーテムホールに最後の1つの球を埋めた時に中から鍵が出てきたんです。恐らくはまだ宝箱は開いて無いのですぐに分かるかと」


 クリーさんは金色の鍵を取り出す。豪華な竜の装飾がしてあり、“いかにも凄い宝箱の鍵”という雰囲気を醸し出している。

 

「おぉ、これがその鍵か……」


 クリーさんがおもむろに僕に手渡してくれたので思わずそれを受け取ったが、その重みが戦果をまざまざと実感させてくれた。


「あ、そうなると私の発見もあまり意味はありませんでしたね……」


「いや、宝箱の中身を見つけて“ヒャッホーイッ!”と喜んでいるところを後ろから不意打ちを喰らうという可能性はあった。リスクは少しでも減らした方が良い」


「全く無意味でなかったのでしたら良かったです――あっ! あの宝箱ではありませんか!?」


 チェリーさんが指差す先の宝箱は確かに開いていない! あれに間違いなさそうだ!

 他とは作り自体は変わら無さそうなので、この方法でしか開けることは出来なさそうだった。


「一応は爆発する可能性があるからちょっと離れていてね。最悪は僕が離脱しても他のチームの誰かが獲得できればいいから」


「分かりました。少し離れておきます」


 2人が安全地帯まで離れたのを確認すると、僕は鍵穴に鍵を入れた。

 カチャリという音が鳴ると共に“ギィーッ”と音を立てて宝箱が開いた。

 僕は咄嗟に伏せたが、何も起きそうになかったので中身を確認した。


「こ、これは! 2人とも来てみて!」


 中身はこのゲームでもトップレベルの価値SSランクの宝石だった!


「SSランクとありますがどれぐらい凄いんですか?」


 あまり経験が無い2人はどうにもピンと来ていない様子だった。


「これはこのゲームでも中々ないレベルの貴重性のあるモノで、ぶっちゃけて言うとこれを見つけた瞬間ほとんど上位入りは間違いないレベルだ」


 2人とも飛び上がった。あまりの驚きように思わずフフっと笑ってしまった。


「す、凄いじゃないですか! 私、初参加なのにこれで良いんでしょうか?」


「何を言ってるんだよ。チェリーさんがいなかったらとてもこの戦いを切り抜けられなかった。1人では限界がある局面があることは銀髪の男が証明しただろ? 賞金は3人で均等に分けようじゃないか」


 ほとんどの場合は僕が一番活躍することが多いチーム戦ではあるが、3等分することにしている。その方が後腐れが無くていいからだ。


「えっ……それではテルル中将さんがほとんど頑張ってこられたのに申し訳ない気が……」


 クリーさんも凄く恐縮している。


「いいって。3人でのチーム評価になるんだしさ。

 折角だから後で出来れば2人の連絡先とかも教えて欲しいね」


「……そうおっしゃるのでしたら、後で連絡先を教えますね。

 あまりリアルの私を晒したくは無いのですが……」


「あぁ、匿名のアドレスでも良いよ。2人はとても有望だから期待できるし」


 特にチェリーさんは途轍もない才能を持っているように思える。案外この系統のゲームが初参加なだけでかなりの熟達者である可能性は非常に高そうではあるがね。


「それはとても光栄ですね。ゲームについていろいろとお詳しそうですし」


 ちなみに実際の人物とVR空間上の人物の個人データを全く分けることが可能なので匿名性が高い


 まぁ、特攻局などの特別な機関であれば個人のあらゆるデータが見ることができてしまうがね……。


「しかし、残る時間はいかがしましょうか? 生憎残る私たちの時間は1時間を切っているので、中々できることと言えば限られていると思うのですが……」


 チームとしての総合計時間は残り57分となっており、


「これ以上を短時間で安定して稼ぐというのは中々難しい。SSランクの宝を手に入れた以上、ダンジョンに潜る意味と言うのもあまり感じないしね。

 折角なんで3人で遊ばないかい? ローリスク・ローリターンの競技施設があるから、そこで親睦を深める意味も込めてさ」


「それは良い考えですね! どういった競技が楽しめるのでしょうか?」


 中にはそれに特化して楽しむ人たちもいるようで、それもこのバーチャリストが非常に人気の理由の一つである。


「そうだね――主にカジノみたいな娯楽施設やスポーツ競技みたいな運動施設が大別すればあるかな」


「あまりお役に立てなかったので、運動施設で挽回したいです」


 クリーさんが拳を握り締めながら言った。



 果たして、2人の活躍は凄すぎた……。

 チェリーさんは特に射撃で力を見せ、次々とど真ん中に命中させていった。

 クリーさんは体術が優れており、シミュレーターのトーナメントを勝ち上がっていく……。


 僕はそうした2人の活躍に圧倒されて、スポーツコーナーを離れ、無惨にカジノで地味な負けを続けていた。

 引き換えたチップを使い果たし、ルーレットのカラフルなテーブルで突っ伏していたところを2人に声をかけられる。


「だ、大丈夫ですか? お金もあまり失っていないようですし、大丈夫ですよ」


「あ、ああ……」


 確かにゲーム内通貨の損害はほとんどないが、プライドが崩壊した。

 2人は手元の資金を何倍にもしたというのに僕は全てを使い果たしたのだ……。


「生死をかけたここぞという時の賭けに負けたわけじゃないんですから。

 ルーレットなんて特に運じゃないですか」


 チェリーさんが優しく手を差し伸べてくれた。


「そ、そうだな。3人の総合的に見たら勝ったわけだし、チームでの合計だしね……」


 さっき自分で言った言葉を繰り返したが虚しさが心の中に残った。2人ともさっきはこう言う気持ちだったのかと思うと因果応報と言えた。


「そろそろ結果発表ではありませんか? このゲーム内通貨と言うのはどういう感じで評価されるのでしょうか?」


 ジャラリというクリーさんが持っている通貨が織りなす音が僕の屈辱感を増幅させた。


「正直なところあまり評価はされないね。売店で価値の高そうなものに交換しておいて、そこで総合評価を判定される。

 統計的にどれぐらいの価値になるかは分かっているから、僕が最適解で交換しておこう」


 データに基づいてパパッと交換した。もう結果発表まで数分と言う段階になっていた。

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