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ディストピア生活初級入門(第5部まで完結)  作者: 中将
第3章 電脳戦

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第35話 ついに決着?

「オウ、ようやく来たヨウダナ」


 思ってもみなかったことだった。僕たちがトーテムホールに到着すると、何と先にあの銀髪の男が待ち構えていたのだ! 

 これは予想外の展開だったが、待つ手間は省けたと言える。

 しかし、これは逆に言えば相手の作戦の思う壺と言う可能性もあるのだ。


「2人とも気を付けてくれ。気象条件が安定している状況で相手が仕掛けてくるということは、何かしら勝つ算段が付いているに違いない」


 しかも、この間は砂嵐が収まるや否や撤退していくほど警戒心の強い奴だ。

 恐らくは僕の実力をある程度のところ評価してくれたのだろう。

 何かしら作戦があるに違いなかった。

 

 僕は銀髪の男の一挙手一投足を警戒した。僅かな呼吸さえも何かしらの前兆かもしれない。


「ハハハハ! そう警戒するナッテ! どうせ、俺が一撃で仕留めてやるンダ! 痛みはナイサ!」


 大した自信である。まぁ、僕も戦う局面になるとそれぐらいの気持ちで常にいると言えはいるんだが(笑)。


「孤立主義でここまで勝ち上がってきたのは称賛に値するが、僕達の連携はそれを上回る!」


 僕はそう言いながら鞘に手をかけた。


「いや、俺も最初はここに1人で来たわけじゃナカッタ。実を言うとあの宝箱のトラップに引っかかって1人消え。ここを離脱するかどうか言い争いになり、もう1人も離脱したンダ」


「プフッ!」

 

あまりにもダサすぎる内容だったので思わず吹き出してしまった。

一瞬集中力が切れたので、ここで攻撃されたら相当危なかったぐらいだ。


真横ではチェリーさんが必死で声に出さないようにしながらも腹を抱えて悶えている。


「チッ! 笑うナヨ。だが、後の2人は足枷に過ぎなかったとも言える! 俺は今、こんなにも自由に暴れまわれるんダカラヨッ!」


 そう叫ぶと一気に雰囲気が変わった! 何かしらアイテムを上空に投げつけると一気に

砂粒が正面から押し寄せてくる! 突然、砂嵐が吹き荒れだしたのだ!


 これまでこのヴァーチャリストでは見たことが無いタイプのアイテムだが、こういう天候を変えていくタイプのアイテムもある。

 普通は天候を変更させたところでほとんど戦局に影響を与えないが、ZOCを無視してくる銀髪の男とはとても相性が良いと言えた。


「まずはオマエからだッ! 散々笑っていたようダカラナッ!」


 銀髪の男はチェリーさんに向かって突進していった。

 チェリーさんは目に必死になって開こうとしているが避けられるほどの余裕は無さそうだ!


「くっ! チェリーさん! 雷撃抜刀術!」


 僕は手元が滑りそうになりながらも何とか堪えながら、抜刀した!

 

 銀髪の男が僕の攻撃を交わしたので、チェリーさんの喉元を掠めただけにとどめられた。

キチンと抜刀できていれば銀髪の男を捉えられたかもしれない距離ではあったが、これは仕方なかった。


「た、助かりました……。いきなりだったので……」


 初撃は正直言って、僕も対応が遅れかけたので、一番距離があったチェリーさんに向かってくれたのは助かった。


「チイッ! そう簡単には終わランカッ!」


「相手は一人だから、冷静に対応していけば必ず勝てる。僕たちの連携があれば大丈夫だ!」


「ホぅ、それなら見せてもらオウカッ!」


 銀髪の男は回転しながら勢いづけて、今度はクリーさんに向かって斬りこんできた!


「させません!」

 

 チェリーさんが風魔法で銀髪の男の足元を抉る! すると、少しバランスを崩したおかげでクリーさんは何とか交わすことができた。


「どうだ! 僕たちは連携を強めることでここまで勝ち上がってきたんだ! 1人1人の力は弱くても連携をすれば乗り越えていくことができるんだ!」


 連携と言うところを大いに強調させてもらった。どうやら、この銀髪の男はそのワードに対して少し敏感に反応しているところがあったからだ。

 イラつかせたり挑発することは相手の動きを鈍らせたり、隙を出させたりする効果があるのでとても有効なのだ。


 相手が有利な状況では特にあらゆる手を使って僅かでも勝率を挙げていく必要がある。


「俺は1人になってしまったこともあるが、モウ誰にも頼ラナイ! 1人でありながらチーム戦のゲームであるこのゲームで必ず1位になってミセルッ!」


「……それだけ強いのに宝箱があんなにあることに対して違和感を抱かなかったのか?」


 更に銀髪の男はこめかみに青筋を浮かべ、怒りの表情に変わった。


「ウルサイ! 俺のどうしようもない奴らは勇んで開けに行ったんだ! 俺はこれでも止めたんだぞ! 予想通りトラップで頭を抱エタンダ!」


 大鎌を明後日の方向に振り回し始めたので僕は相手が話している最中だが、すかさず低い姿勢で相手の胸元に向かって思いっきり飛び込んだ!


「チッ! コシャクナことをッ!」


 銀髪の男は完全に僕のことから視界を外していたのか避けきれず、3割ぐらいの体力を減らすことに成功した。


「ここは戦場だと言うことを常に忘れないことだね。僕たちの場合は一人が油断しても他がカバーできるからね。そこが君の弱点だ!」


 実際に今回、昨年度世界ランク1位僕ですらも無様な瞬間はあった……人間なのだから長時間、常に100点の動きを取り続けることは出来ないのだ。


「ハッハッハッ! 他人に頼るなど弱さの証! ここぞという時には他人に頼ることができないノダッ! 教えてヤルヨッ! 孤独こそ真の強さを発揮スルノダト!」


 確かに世界大会の会場では1人なのは間違いない。だが、僕は父上や玲姉やまどかなど家族に支えられてその場所に立っている――今もこの瞬間を生きていると言うことを決して忘れてはいけない。


 僕は砂嵐の中ではあるがガッと目を見開き、思いっきり踏み込みながら銀髪の男に向かって斬りつけた!


「グハッ! ば、馬鹿な……この砂塵の中でそれほどの動きをッ!」


 銀髪の男の体勢が大きく崩れたところをトドメとばかりに胸に向かって貫かせた。

 残されたHPはあっという間にゼロになり、背後で2人の歓声が湧き上がるのが聞こえた。


「……銀髪の男よ。確かにここぞという時には自分の判断がモノを言う。誰にも頼ることができない局面も確かにある。

だが、他人に頼るべき場所や場面と言うのもちゃんと存在するんだ。そこのバランスを見極められなければ今の状態から上に上がることは出来ない」


「ち、チクショウ……。ここまでとは……誰かと組むことについては検討シテオク……」


 そう言いながら本当に無念そうな表情で銀髪の男は消えていった。

 

 僕はどっと疲れが出たのでその場で崩れ落ちた。


「す、凄いです。あの砂嵐の中でも何事も無かったかのように動けてしまうんですから」


「ここが踏ん張るラインだなと思ったんでね。正直短期で決めなければ勝つことは難しいだろうと思ったからね」

 

 あー、眼を開いていられない。地面がデコボコで痛みもある――でも、敵がいないから、大の字で寝そべっていられるほど無防備に出来るのかと思うとその喜びも湧き上がってきた。


「大丈夫ですか? 目は洗われたほうが良いと思います」


 チェリーさんがどこからともなく取り出したタオルと水を渡してくれた。


「そ、そうだな」

 

 リアル世界で目つぶしを喰らったかのような痛みがあるので正直この心遣いは助かった。


「ふぅ~、これでスッキリした。


 眼がようやく開いた。視界が戻ってくるといよいよ勝ったのだという実感が更に湧いてくるのが分かった。


「ですがこれでついに4つ揃いましたね!」


「いやぁ、ホントかなり長くかかったような気がするよ。これで、何かのアニメや漫画の話であるようにこの世のすべての願いが叶うのではないかと思ってしまう程だ」


 それだけこのピラミッドの各階層を制するのは大変だったのだ。


「ははは! でもこれで得られる宝物は私たちを着実に上位に導くんですからそれほど間違ってないかもしれませんよ?」


「そうだね。流石にここまで苦労させておいてショボい評価の宝物と言うことは無いだろうからね」


 僕はようやく肩の荷が下りた気持ちでトーテムホールに球を嵌めこもうとした。

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