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ディストピア生活初級入門(第5部まで完結)  作者: 中将
第3章 電脳戦

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第34話 見えない敵への対処法

 先程の様子からすると、隠れることのできる忍者部隊は僕たちを監視している様子があった。

 つまり、逐一僕たちに隙が出来るのを待っているのだろう。また、安全地帯から襲撃の機会を窺っているのだ。


 先程の場所から1キロぐらい歩いただろうか? 今度は道が無くなり、袋小路になっている場所に到達した。


「とりあえず引き返しましょうか?」


 クリーさんがそう言った時、僕はハッとして真上を凝視した。敵の気配を崖の上の方から感じた――そして何かしらの影を目視したのだ!

 僕はすかさず、両手で後頭部を掻いた。勿論本当は痒いわけでは無い。


 するとクリーさんは目を見開く。チェリーさんの表情が強張るのが分かった。

 僕の合図の意味が分かったのだ。


「あっ……!」

 

 クリーさんが受け身を取りながら転び、球が転がる。しかし、他人から見ればわざと転んだように見えない上手い転び方だ。

日差しに反射し、キラリと光った。


 僕は刀を抜刀する構えを取った。


「貰った!」


 そう言ってどこからともなく声がした。


「そこかっ! 雷撃抜刀!」


 僕は大体あてずっぽで球の周辺に抜刀攻撃を行った!


「ば、馬鹿なっ!」


 もはや、様子が見られているのと、奇襲が来ると完全に分かっていたので、相手の姿は見えなかったのだが、完全にタイミングがドンピシャだった。

 斬られた忍者は30%ほど体力が吹き飛んだ形になった。


 クリーさんは冷静にわざと落とした球を冷静に拾い上げた。

 “成し遂げた”と言ったようなしたり顔だった。凛々しくてとても美しく感じた。


「逃がしませんよっ!」


 相手が逃亡しようとするとチェリーさんが風魔法を周囲に展開して、相手の逃げ道を塞いだ。


「な……!」


 相手が逃げ道を塞がれて立ち往生をしていると、他の忍者の仲間がすかさず救いに来ていた。


「逃げるぞ! 捉まれ!」


 敵の仲間が煙玉を投げようと取り出しているのが視界に入ったので僕は、そこに向かって飛びついた。


「ガッ!」


 上空に煙がぶちまけられた。

 僕が刀の柄の部分を突き上げて煙玉を上空に突き飛ばして噴射させたのだ。


「今ですっ!」


 チェリーさんとクリーさんが僕たちの罠に引っかかった忍者に一気に斬りかかる。

 あまりスキルが無いのだろう、クリーさんの攻撃は何とか回避するも、チェリーさんの攻撃も味気なく受けてしまいその場に倒れ込む。


「く、くそぅ……」


 忍者の男はついにHPがゼロになって消滅していった。


 僕は目の前に残る2人に目を向ける。しかし、既に眼に光が灯っていない。


「あぁ……リーダーが……ここまで頑張ったのに……

 あの、痛いのは嫌なのでこれを無条件で進呈します」


 そう言ってその女性忍者は球を渡してきた。紛れもなく僕たちが探していたモノだった。


「あ、ありがとう」


 悪意も無く士気喪失しているような感じを受けたので、僕は素直に受け取った。


「頑張ってくださいね。折角だからこのまま優勝しちゃってください」


「うん、エールありがとう。やれるだけのことはやるよ」


 僕がそう答えると残った忍者2人もこのダンジョンから離脱していった。

 恐らくはリーダーがこのチームのあらゆる支柱だったのだろう。

 思ったよりも話せそうな人達だったなと言うのが正直な感想だった。


「やりましたね! 作戦通りでした」


 2人とも笑顔でホッとしたような表情だ。こういう時に限って残る銀髪の男が襲撃してくる可能性があるから完全に警戒は解かないがね。


「正直言って、あまり強くはありませんでしたが、不利になるとすぐに撤退していくのでかなり厄介でしたね」


「自分の実力と状況を見極めるのに長けていたようだったから、必ずしも弱いとは思わないね。

 本当に弱い奴と言うのは自身の弱さに気づかず、突っ込み続けることだ。

 あのチームは流石にここまで勝ち残っただけのことはあると思う」


 マジで弱い奴は本当に自分の実力が分かってないからな……。そう言うのが団体に1人でもいると本当に足を引っ張るから困る。

 僕ですら、そういう奴らに足を引っ張られ続けたことが数多くあった。


「た、確かに私たちも弱さを痛感しているので凌ぐことだけを考える局面がありますからね……」


 クリーさんは本当に申し訳なさそうにしている。


「大丈夫。2人とも弱くないよ。僕も足を引っ張られているとは思っていないし。

しかし、これでようやく残る球は1つか……。あの銀髪の男が持っていると思われるが、アイツが僕が見たところによると戦闘に関しては“野生のカン”というのがありそうだ。

 データと言うより自分の感覚を信じていると言って良い」


「テルル中将さんはどうなんですか? 何か戦いの際に重視されていることってあるのですか?」


「うーん、僕はどっちかって言うとデータを重視するけど、ここぞという時の勝負所になるとデータがどうだこうだ言っている場合では無くなるからね(笑)。

 状況次第かなと言う感じはするね」


「なるほど、何かに極端に偏ることが無いというのはとても重要かもしれませんね」


 クリーさんが何か勝手にうなずいていた。


「今度の作戦はどうしましょうか? またわざとコケられるのですか?」


「すっかり、コケる作戦が常套手段となっているみたいだけど(笑)。

銀髪の男にはそれはあまり関係ないのではないかと僕は分析している。

 なぜなら自分の有利な地形の時に奇襲することが装備アイテムの都合上とても有効だからだ。

 つまり、悪天候の瞬間が来れば必ず襲ってくると言うことだ」


「なるほど……そうなると、悪天候になりやすそうでありながら私たちが迎え撃ちやすいところが良いと言うことでしょうか?」


「その目の付け所は良いね。どこが僕たちにとって有利に戦える場所かどうかよく検討しよう」

 

 僕も同じようなことを提案しようとしていただけあって、チェリーさんが同じような思考であることはとても心強い。


「個人的には悪天候の時以外はあまり襲ってこないのであれば脅威を感じないのですがどうでしょうか?」


「まぁ、気を張っている時間としては短いだろうけど、戦う時はかなりシビアな条件でやらなくちゃいけないからね……でも、良い部分を捉えておくというのは良い事だね。

 プラスの側面から勝ち筋と言うのは探していくことが多いからね。

 また悪い事ばかり目が行っていると気持ちが落ち込んでいく傾向も強いしね」


「……先ほどから私たちにとって戦う上で条件の良いところ考えていたのですが、

 刻一刻と状況が変化していくので“景色が固定されているところ“に限ると思うのです。

 ただ、宝箱の数多くある地帯は爆弾がある可能性があるから守りにくいと思うのです」


「チェリーさんの言うとおりだね。景色が替わらない地域で何か有効な手段はないものか……」


 僕たちが1,2分真剣に考えてるとクリーさんが突然声を上げた。


「トーテムホールの周辺で戦うのはどうでしょうか? あそこは重要なポジションなので景色は変わらないでしょうし、敵としても最終チェックポイントと知っていますから、必ずやってくると思います」


「クリーさん。それは良い提案だね。無事に勝つことができて球を獲得できれば、すぐにそこに埋めることも出来るしね。早速移動して、あそこで迎え撃つ手段を考えよう」


 僕たちはこうしてトーテムホールに移動することにした。

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