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ディストピア生活初級入門(第5部まで完結)  作者: 中将
第3章 電脳戦

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第31話 銀髪の男

 季節が変化しても、地面が砂漠の地帯に入った。春の場面で風が巻き起こると、桜吹雪と砂嵐が同時に起きているという何ともカオスなステージだ。


「砂嵐は視界が見えにくいので非常に危険だ。ここにも敵が潜んでいる可能性がある。最大限の警戒をしてくれ! 特に足元を取られないように!」


 上着で砂嵐を防御しながら僕は叫んだ。


「分かりました!」


 2人は元気に答える。環境が悪い状態だとウンザリする人が多い中この2人はまだまだ元気でモチベーションも高そうだ。


 第一階層では注意した直後にトラップに引っかかる大失態を犯した。

 ついさっきは注意をした直後に襲撃されたので、あらゆる方向に注意を向けた。

 こういう他人に注意をする時と言うのは危機を察知する能力がさらに冴えているのかもしれない。


 そんな中、思わず目を疑うほどのスピードでこちらに向かってくる影を目視した。

 よく見ると銀髪の男が大きな鎌を構えて疾走してきている!


「2人とも敵だッ! 伏せろッ!」


 大きな鎌をブンッ! と振るう。僕の前髪が一部切り取られヒラリと舞う。

ランク9の武器ではあるのだが、非常に大きさがあるので扱うのがかなり難しい。更に砂漠の中なのだから足元を取られる。その状況下で軽々と大鎌を扱っているので相当な手練れだと分かる。


「球をヨコセ!」


 強烈な威力の鎌攻撃を繰り出す。チェリーさんとクリーさんは以前僕が言ったように必死に生き残るように防御している。


「雷撃抜刀術!」


 僕は相手の攻撃を交わしながら抜刀術を繰り出した。

 銀髪の男は飛び退いて回避した。僕はそれに対してさらに踏み込んで攻撃をする。

 動きに無駄は無いし、これは中々レベルが高い。相手が1人であったとしても倒すのは難しいものを感じた。


「これでドウダッ!」


 叫びながら銀髪の男は鎌を振り回しまくって来る。

 普通ならばアッサリと倒せるところを僕がかなり粘っているのもあって、倒しきれないので少し焦りがあるのかもしれない。

 徐々に動きが雑になってきていると言える。


「こっちも守ってばかりではない! どうだっ!」


 銀髪の男の足元を斬りつけたが、フワリと飛び上がり、回避した。砂漠地帯で戦っているとは思えないほどの身のこなしだ。


 更に銀髪の男は交わした反動を利用して鎌を振り回してくる。

 僕は横に飛ぶと辛うじて肩を掠めただけで済んだ。


「テルル中将さんに触るな!」


 クリーさんが銀髪の男に斬りかかって右手を斬りつけることに成功していた。


「クッ! 貴様らは中々手強いな! 貴様らは後回しだ! 覚えていろよ!」

 

 クリーさんの攻撃ではマントの一部を切裂くことには出来たがほとんどダメージを与えられなかった。

 しかし、銀髪の男はこちらを警戒してかここに来た時のように軽い足取りで退却していった。


 気が付けば砂嵐は止んでいた。夏の日差しが砂漠を照り付けており暑くなってきたが、僕たちはようやく一息付けた感じだった。


「ふぅむ、こういう奴か……」


 一般的に公開されているデータを見て見ると、驚いたことにあの男の仲間は既に“NPC”となっている。NPCになる条件としては、何かしら外的要因によりログアウト状態から一定期間過ぎると一般人の平均的な装備と能力を持ったAIによるNPCがチームにあてがわれる。

 なぜそんなことが行われるのかというと、ダンジョンによっては3人揃っていないと入場することも出来ないものもあるからだ。


 だが、その状況下では上位を目指す上においては勝てない。NPCは一定の動きをしてくることが把握されているので上位プレイヤーにはカモにされているのだ。


 その状況下でここに存在していると言うことはこの男がどれだけ強いのか? と思ってしまう。


「と、とんでもない奴でしたね……」


「しかも、仲間がいないようでしたからよっぽどです」


「そうだよね。既に仲間は離脱してNPCになっていて、NPCもこのダンジョンから脱落しているようなんだよね。一匹狼の方がやりやすいという人はいるけどアレはいくらなんでも極端だね……。

 あの動きについては、砂漠の砂嵐の影響を全く受けていないようだったからZOCの影響を受けないか軽減するアイテムだったのかもしれないね」


「ZOCって何のことですか?」


 チェリーさんは初心者だからあまり詳しくないか。


「ああ。ZOCっていうのは簡単に言うと環境:地形、他のキャラクターの影響を受けることを言うんだよ。その地形の影響を受けないアイテムを持っているかもしれないと言うことだね」


 基本的に、スキルの差があるので装備が同じならば僕より動きが良いと言うことはまずあり得ない。


「と言うことは逆を言うと、砂嵐のような過酷な状況下だとまた先ほどの男が襲ってくる可能性があると言うことですか……」


「クリーさんその通りだね。自分の得意な環境で戦うことが定跡だからね。

 強烈な砂嵐が止むと同時に退却したのも多分そのせいだろう」


 僕の実力を恐れたのもあるかもしれない。同条件ならまず他の人には負ける気がしないからな。

しかし、銀髪の男も見極めが優れているというのは実力がある証だ。

 本当の実力者は、相手の実力を瞬時に把握するし引き際も心得ている。


「なるほど……気象条件や足場が悪い時にまた襲ってくる可能性があるんですね……」


「それも環境的に悪い時にやって来るから厄介だな……基本的には先ほど見たいに耐えてくれれば良いよ。2人とも良い動きだった」


 大鎌の変則的な動きに対して適切に防御をしているように見えた。


「ありがとうございます。何もできなかったのに褒められるのはちょっと複雑ですけど……」

 

 チェリーさんは特に防御魔法を展開していただけのようなので不甲斐なさを実感していたようだ。


「まぁ、役割があるからね。あの状況では砂嵐が目に入って厳しいだろうからね

局面で攻撃できそうなときに攻撃をしてくれれば良い」


「はい……しかし、あんな砂嵐が吹き荒れる状況下で動けるのは本当に凄いと思いました」


「敵がいるとアドレナリンが出るのか動きが変わるのは自分でも分かるね。

 いないと同じ足場の悪い所だと第3階層の氷の道で滑っちゃうぐらいの感じだけど(笑)」


 あれは今思い出しても情けなかったしカッコ悪かった……。お尻メチャ痛かったな……。

 敵に斬りつけられた時より精神的な恥ずかしさのダメージもあって今日の中でも一番痛かった……。


「なるほど、緊迫感が大事なんですね……」


「まぁ、日常では僕は家族からもイジられるほど地位が低いからね(笑)。

 ゲームの中だけでも思い通りにやりたいね」


「は、はぁ……」


 2人とも苦笑している。この家庭内で地位が低いというのは、ゲームの上手い人でありがちなことだとは思うけどね(笑)。


「アッ! あそこに何か浮き出ているのは私が球を取ることができたような感じです!」


 歩きながら話しているとチェリーさんが足を止めて甲高い声を上げた。

 指をさしている方向を見ると小さいスフィンクスのようなオブジェの辺りに確かに何か光っているのが分かる。

 僕はマッピングをして次の景色に移り替わる時を待った。

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