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ディストピア生活初級入門(第5部まで完結)  作者: 中将
第3章 電脳戦

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第29話 トーテムホール

 しかし、チェリーさんとクリーさんと別れて捜索していくうちに、あることに気が付いた――僕の知識が無さ過ぎて探すにしても何を探してどうしたら良いのか分からなかった(笑)


 2人がいる時はリーダーとして何とか振舞おうと必死にやっていたのだが、1人になった時にその事実に気づいてしまった(笑)。


「と、取り敢えずは季節の特徴について調べてみるか……」


 歩きながら調べてみるが先ほどの会話以上のことは分からない。

 仕方ないのでこれまでの経験に基づいて何かきっかけになりそうな物をひたすら探すことにした。


「お、“いかにも“という感じの物があるじゃないか」

 

 荒野の先にトーテムホールのような4角形のカラフルなオブジェを見つけたので、近くまでは迅速に、目の前まで来たら慎重に様子を窺った。


観察をしていると4つの顔に“何か”を入れるような口元が存在した。これが大きなカギになりそうだ。

 コスモニューロンのマッピング機能でこの位置を記憶させた。


 気が付けば時間も15分以上経過しているので急いで宝箱が乱雑においてあったところに戻ってみることにした。




 出来るだけ急いで戻ってみると、26分経過していた。待っていたのはクリーさんだった。しかし、それはコスモニューロンで判別できただけで大きな宝箱の陰に隠れていた。


「どうしたの? そんなところに隠れて」


「テルル中将さんですか。やっと安心できます。

……実を言いますと捜索をしている最中に他のチームと遭遇してしまいました。

私は1人なのに対して向こうは3人だったので、逃げるので必死でした。ですから、私からはあまり収穫がありませんでした……申し訳ありません」


 本当に心からホッとした表情をしている。


「いや、謝ることは無いよ。ここはメンバーの頭数が減ることが一番致命的というか事実上の敗退だからね。逃げることも英断だと思う」


 そんなことを話しているとチェリーさんが早足でやって来た。少し顔が紅潮している。


「ふぅ……遅れて済みません。でも、私の方は収穫がありましたよ。

 これなんかはどうですか? たまたま見つけたのですが、何か意味がありそうな物でしたので持ってきました」


 チェリーさんは何やら手のひらサイズの水晶球のようなものを取り出した。


「これは?」


「何かありそうだなと思って何となく風魔法で飛ばしていたら見つけたんです。“いかにも“という感じがするので何かキーになるモノでは無いですか?」


 確かにこのフィールドの自然の中にはあまりそぐわない人工的な球体である。

 僕はピンとくるものがあった。


「先程ちょうどそれが入るような口を持っていたトーテムホールのようなモノを見つけたんだ。

 もしかしたらそこのオブジェにその球が嵌まる可能性がある」


「なるほど……もしかするとそれがあの宝箱の山の中から正しい宝箱を解放する条件の可能性がありますね」


「むしろその可能性が濃厚のような気がする。ただ、その球が入りそうな空間が4つあったんだ。

 そうなると、残り3つあると思うのだが――参考までにその球を獲得できた時のことをもう少し詳しく教えて欲しい」


「確か、冬の景色の時に何かが見えたような気がしたんです。

 それで色々な風魔法を連続的に試してみたら春の場面の時に桜の木の中からこの球が出てきたわけなんです」


「ふぅむ……」


 僕は先ほどの季節のことを踏まえて色々と考えていた。


「私は思ったのですが、風魔法が春風と同じような作用を起こした可能性はありますね。

 季節の状況から見るにそうだと思います」


 クリーさんが僕とチェリーさんを同時に見るような形でそう言った。


「そうなると、チェリーさんの情報を元に推測すると違う季節の時に球があるかどうかが分かり、季節に応じた何かを行うことによってようやく球が獲得できるというわけか……」


「その可能性はありそうですね。そうなるとかなり厄介ですね……」


「ああ、まずヒントとなる場所を発見できないといけない上に、僕達の魔法や攻撃、若しくはアイテムなどで条件を満たせるかどうかも分からない。

 勿論、あのトーテムホールがここの解除の鍵であると言うことが前提だけどね」


「なるほど……とりあえずは、トーテムホールにちゃんと入るかどうか確認してみましょうか?」


「一応やってみるか。そうでないと意味が無いものを探すことになる。

 稀にフェイクとして誘導するオブジェがあるケースもある。

無意味な時間を過ごした時の脱力感がヤバいからな……」


「確かに、確かめてみる価値はありそうですね」




 僕の先導で早足でトーテムホールに向かう。マッピングをしてあり、真っすぐ向かうことができたので、数分後に無事に到着した。


「あ、ピッタリ嵌まりました!」


 果たして僕たちの予想通りだった。カチリという音がしたことから何かの作動システムに関わっている可能性が高い。

確認が終わるとすぐにチェリーさんはトーテムホールから球を取り出す。

 恐らくは他人に利用されないためだろう。


「これで目的はハッキリしたな。残り3つの球を探すことが第一になる。これで目的が分からず漠然と動くことは無くなったのが大きい」


「思ったのですが……このトーテムホールや球はそれぞれ一つなのでしょうか? 一つずつだとすると他のチームと競合することになると思うのですが」


 チェリーさんの言葉に僕はハッとなった。


「確かにその視点についてはあまり無かった。争奪戦になることも想定したほうが良いと言うことか……。でも、第4階層がトーナメント制だったことを考えるとここで1チームになると考えたほうが自然だな」


「そうなると、ありそうに見せかけてそこに罠を張ったり敵が待ち伏せをしていたりする可能性があると言うことなんですね」


「クリーさんその通りだ。既に1チームは宝箱の爆弾で消えてはいそうだが残り2チームは健在と想定して動いた方が良いな

 そうなると、様々なことを考慮に入れて行動しないとな」


「ですが、動かないで立ち止まっていても仕方ないです。

 ある程度リスクを取ったほうが良いのではないですか?」


「うん、チェリーさんも大分このゲームが分かってきたようだね。

 僕の手を離れたと言うことか……」


「いえいえ、テルル中将さんあってのこのチームですよ」


「とりあえずは、これまで探していないところを探してみませんか? 後は私が向かったところには他のチームがいました。3人で向かうのでしたらそこに向かった方が良いかもしれません」


「確かに陣地として構えているかもしれないから皆で向かってみるのも良いかもしれないな。ただし、探索されつくされている可能性もあるし罠が張り巡らされている可能性もある。

 その点は注意して欲しい」


 そう言いながら動き出すことにした。だが、最終目標そのものはトーテムホールに嵌まる球を残り3つ探すことだと決まったとはいえ、依然として漠然とした状況であることには変わらない。


 何せどこにどのようにしてあるのか全く分からないのだから。

 まぁ、イマイチ目標が分からないのがこのピラミッドの階層システムの特徴ではあるから大きく前進したとも言えるけどね。

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