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ディストピア生活初級入門(第5部まで完結)  作者: 中将
第3章 電脳戦

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第16話 トイレ休憩

 乗馬してからおよそ20分。ようやくオアシスが視界に大きく広がってきた。


「ふぅ……やっと着いた。思ったよりも遠かったな……」


「コスモニューロンで遠くの場所を見ることができますが、物理的な距離に関しては飛行自動車でないと縮められませんからね」


 確かにチェリーさんの言うとおりに、普段は飛行自動車で移動しているからコスモニューロンで見えた範囲も一瞬で到着するが、今はそうはいかない。

 現代技術の圧倒的な力をまざまざと感じさせたし、こうして現代人は不健康になっているのだなと思った――まぁ、今僕がいる世界もVR空間だけど(笑)。


 周りを見渡すと、オアシスはそれほど凶暴な生物はみたところい無さそうで、安心して休憩して良さそうだ。


「ここまで頑張ってくれたお馬さんに水を飲ませてあげましょう」


 クリーさんがサッと馬を降りて湖のところに先導してあげていた。

 僕とチェリーさんもぎこちないながらも同じように自分の乗っていた馬に対してしてあげた。

 グビグビと気持ちが良いぐらい勢いよく水を飲んでいる。


「ここらへんでリアルでのトイレ休憩にしませんか? 各人5分ずつで足りるでしょうか……?」


 クリーさんがそう提案した。僕はサッと周りを見回す周囲からは敵の気配は感じられない。


「では、僕が持っている煙玉を分けておこう。いざという時に惜しみなく使ってくれ」


 ログアウトをするとその人は消えるのでデメリットは無いが敵に襲われた時に人数が少ないと厄介なのである。


「分かりました。もしも襲われた時には使います」


「まぁ、5分とはしておくけど目安で良いから焦らなくていいよ」


 2人とも本当に女の子かもしれないからな……。


「はい、では行ってきます」


 まずは提案したクリーさんからログアウトしていった。

 やはりVR空間と生理的な問題とは切り離せないからな……。

 最近はこのゲームのように長時間拘束するゲームも増えているからオムツが飛ぶように売れているらしいからな何とも言えない世の中になったものだ……。

 そうは言うが、僕も本気でプレイするときはオムツをすることはある(笑)。


「チェリーさんはこのゲームについては初心者と言うことみたいだけど他のゲームについては精通しているの? 随分と上手いけど……」


「最近はあまりゲームをしたことはありませんでしたが、子供の頃はよくやってましたね。

 私のお父さんがとてもゲームが強かったので」


 なぜか照れながらチェリーさんはそう答えた。


「へぇ、そうなんだ。それじゃ、今日はたまたまなんだね?」


「ええ、そうですね。操作がそれなりにできるのはリアルで鍛えているせいでしょうかね」


 VRではゲームが強いかリアルで体をしっかり動かせるかどちらかの人が強い傾向はある。


「なるほどね。僕はリアルではショボいけど日常的に何かゲームをやっている感じかな」


「大会とかは出ているんですか?」


「んー、ボチボチだね。まぁ趣味でやっているようなものだから」


 本当はプロゲーマーで世界大会優勝回数20回を超えているがな……。


 と会話をしているとクリーさんが戻ってきた。5分きっかりである。突っ込まれるとボロが出そうだから良かった……。


「お待たせしました」


「次は私が失礼させてもらいますね」


 チェリーさんがログアウトしていった。


「クリーさんはゲームとか普段はやるの?」


「ストレス解消としてそこそこというところですかね。

 平日は仕事がありますから中々できないのですが……

 テルル中将さんはプロ顔負けの技術と判断力だと思います」


「まぁ、そう褒められると嬉しいね。クリーさんもそれなりに上手だと思うけどね。

 VR空間での操作はリアルでの体の使い方もあると思うし、チェリーさんは普段鍛えているそうだけど、クリーさんはどうなの?」


「確かにチェリーさんは初心者とは思えない動きですよね……私もそれなりにリアルで体を動かしている方だと思ったんですけど……。まだまだ修行不足です」


「まぁ、僕はリアルだと動かないからねぇ(笑)。ダメダメだって妹からもイジられてるぐらいでねぇ(笑)」


「そうなんですか。私の周りにもゲームが強くていつもは色々言われているけどいざという時に頼りになるという方は居ますね」


「へぇ、僕と似たようなタイプがねぇ……」


 どこの世界にも似たような奴がいるものだ。


 そんなことを話しているとチェリーさんが戻ってきた。こちらもきっかり5分だ。


「お待たせしました」


「それじゃ、僕も行ってくるよ。敵が襲撃してきたら無理に交戦しようとせずにすぐに逃げてね。

 位置はコスモニューロンですぐに分かるからさ」


 味方位置だけは分かるようになっているから便利だ。


「分かりました」


 僕はログアウトするとすぐさまトイレに駆け込み、続いて部屋に戻ると手元に置いてあったクッキーやチョコなどのお菓子と飲み物を一気に飲み込む。この瞬間のために最初に持ち込んでおいたのだ。

 なるべく高速でよく噛んでから時刻を見ると4分45秒まで経過している。

 危ない、危ない。僕は目を瞑って再びダイブした。


「ふぅ~。お腹いっぱいになった」


「お帰りなさい……5分で一体何を食べてきたんですか?」


「元々このゲームは長時間になるのが分かっていたから、事前に自室に食べるものと飲み物を用意しておいたんだ。

 2人とも次からは用意しておくといいよ。ちょっとした栄養補給と体力補給にもなるし」


「なるほど、参考になります」

「経験者は流石に違いますね」


 2人とも感心しきりだった。


「さて、それよりもここからはこのオアシスを探索するか。

 さっきも言ったけど何か目印になりそうなものの近くに宝箱があるから大雑把でいい。

 とにかく敵を見つけたらすぐに煙玉を使って逃げて欲しい。

何か不審なものや注目すべき物を見つけたらすぐにコスモニューロンで連絡してくれ。

10分後にまたここで落ち合おう」


 このオアシスは外で見ていた時よりも意外と広く、よく見ると遺跡のようなものも点在していた。この中のどこかにあるような気がしてならない。

 だから効率的に探してく必要がある。


「分かりました」


 僕たちは3つに分かれる。

 怖いのはどこかにか隠れているかもしれない敵の奇襲だ。


「うーむ、無いなぁ……」


 馬に乗ってそれらしい場所を巡りながら集合地に戻るが、めぼしいものは何も見つからなかった。


「どうだった?」


 僕は2人に聞くと、チェリーさんが笑顔になった。


「怪しい地下の階段がありました。そこに何かあるかもしれません」


「ほぉ、それは興味深いな。こっちは何も収穫は無かったクリーさんはどうだった?」


「私もめぼしい場所は見つけられませんでした。

 その階段に賭けてみましょう

 チェリーさん。案内していただけますか?」


「勿論です」


 そう言う階段の下には必ず何かある。最低でもアイテムぐらい眠っていそうな感じはする。

 チェリーさんに案内された場所は、木の根元にポッカリと穴が開いておりそこに階段が存在していた。


「おぉ……これはいかにも怪しいね。チェリーさんお手柄だよ」


 僕はかつてまどかにやっていたみたいにチェリーさんの頭を撫でそうになったが寸前で何とか止められた。

 流石に知り合ったばかりの他人にやるのはヤバすぎる……。


「ただ、後ろから奇襲されて壊滅する可能性もある。

 後ろについては僕が見ておくからクリーさんに前の先導を頼む」


「分かりました――でも、その前にお馬さんに挨拶をしたいです

 これでお別れかもしれないので」


「あ、そうだね。ここまでありがとう!」

 

 僕たちは馬のたてがみを撫でてあげた。少し寂しそうな目で僕を見つめている――これがデジタルだと思うと凄い再現能力だなと大変感心した。


「では、行きましょう」


 クリーさんとチェリーさんが階段を降りていく。

 僕も周りを見回し誰も他人が潜んでいなさそうなのを確認しながら階段を降りだした。

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