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ディストピア生活初級入門(第5部まで完結)  作者: 中将
第3章 電脳戦

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第15話 乗馬教室

「あのピラミッドからこんな内部になっているだなんて信じられません……」

 

 2人が周りに目を奪われているので再び説明モードに入ろうと思った。


「凄くよく出来ているよね。そもそもVR空間なんでピラミッドの中だろうが何でもアリなんだろうね(笑)。

 このサバンナ系のダンジョンではとにかく広いので移動能力がカギになる。

 “足”となるような動物をいち早く見つけ、先ほどのような宝箱を見つけることが大事になるね。

 この手の動物は本当の野生動物とは違い、懐きやすいとかそう言った特徴もあると思うから安心して貰って良い」


 僕もリアルな動物だとちょっと気が引けるけど、「VRの中のシステムだ」と分かっているとどうにも大胆に動けてしまうのだから不思議だ(笑)。


「なるほど、そう言うギミックのタイプなんですね。

 確かに徒歩では途方に暮れそうです」


「クリーさん徒歩で途方だなんてフフフッ!」


 クリーさんはギャグを言ったつもりではない様子だったが、チェリーさんの笑いのツボが謎だ……。しかし、場がとても和んだのはとても良かった。


「コスモニューロンで少し遠いところを見ていたが、どうやらあっちには中型の馬のような動物がいるようだ。

 あっちに行ってみよう」


 僕が指す方向を2人が見ると2人とも同意してくれた。


 馬のような動物は水を飲んでいる。いわゆる“サラブレッド”と呼ばれるタイプではないが、

近くの繫みから僕たち3人は様子を窺っている。


「しかし、どうやって懐かせるかだが……」


 と僕が言っている傍からチェリーさんがサッと草むらから出て行ってしまった……。


 チェリーさんは馬に向かって撫でようと手を伸ばすが何メートルか遠くに逃げられてしまう。


「あら……嫌われちゃいましたか……」


 チェリーさんはガックリと肩を落とす。


「ここは餌付けをしましょう。馬が食べられそうなものを取ってきました」


 手元にどっさりと木の実を持っている。

 クリーさんは先ほどから何かを拾ったり、取りながらここに来ていたなと思ったらそう言うことだったのか。


「お、良いぞ。素晴らしい機転だ」


 クリーさんは動物に対して手慣れているのか、警戒を解きつつ迫っていきすぐに打ち解けていた。


「テルル中将さん達もこれで大丈夫だと思います」


 クリーさんから木の実を貰い、馬にあげるとすぐにカリカリっと食べてくれた。


「おぉ……食べてくれた。実を言うと僕は餌やりが好きでね。何か微笑ましい気分になるよね」


 それでもリアルでの餌やりの方が楽しいけどね。生命を繋ぐ活動に表向きだけの偽善だとしても関わっていると思えるからね。

どこかVRだと、満足感は多少はあるけどなんかしらけちゃうような感じもあるから……。

 

「……私はお馬さんに嫌われているんでしょうか?」


 チェリーさんはまだ馬に食べて貰えていないようだった。餌を差し出しても馬にそっぽを向かれている……。

 チェリーさんはガックリしている。


「あの……あまりこういうことを言うのは良くないのかもしれませんが、チェリーさんの動きはどうにも“肉食動物的な動き”です。

 素早い動きや直線的な動きは、肉食獣と間違われているとまでは言いませんが警戒感を持たれている可能性があります

 あとは、脇腹やお尻は不機嫌になってしまうことがあるので触らないほうが良いですね。

 たてがみを中心に撫でてあげると良いと思います」


 確かにチェリーさんの動きはいつも素早く、キビキビと動いている感じはある。

 その俊敏な動きが馬に警戒心を与えていると言うことか。


「へぇ、馬について詳しいんだね」


「ええ、犬を中心にちょっと。こういうサバンナだと色々な動物が見ることができるので、この場にいるだけでワクワクしますね」


 クリーさんはやはり動物に少し詳しいようだった。ここの動物は当然のことながらリアルな動物では無いが、実際の動物をモデルにプログラムされているだろうからその知識は存分に活用されるだろう。


「あ、やっと食べてもらえました! 良かったです! クリーさん、ありがとうございます!」


「いえいえ、良かったです」


 チェリーさんの笑顔はひとしおだった。

 それにつられて僕とクリーさんも笑みが零れた。


「もうそろそろ、乗っても大丈夫だと思います。最初はゆっくり走ってみましょう」


 突然、クリーさんによる乗馬講座みたいなのが始まった……。


 僕は、おっかなびっくりという感じで背中に乗ろうとすると、サッと馬が動き出す。


「ヒィ!」


 僕はしがみ付くようにして馬に捕まった……。振り落とされないように必死だ!


「こ、コイツ! 大人しく言うことを聞くんだ!」


 ヒヒィーン!


「グアッ……こ、コイツ!」

 

 ついに僕は振り落とされてしまった……。何とも情けない醜態である。


「馬を信頼してあげることが大事です。不安に思ってしまうと動物にも伝わってしまいますからね

 深呼吸をしながら静かな気持ちで乗ってあげましょう」


 クリーさんはよしよしと自分がまたがっている馬を撫でながらそう言った。


「な、なるほど……」


 あんなことをされた後だと通常なら信頼できないが、クリーさんが言うのなら……。


 僕はゲームの大会前のように深呼吸をして心を落ち着かせながら馬にまたがる。

最初は少し抵抗があったが、その後も落ち着かせようと撫でると自然と馬の動きも収まった。


「おぉ……何とかなった」

 

 乗れて見てしまえば簡単なことだ。しかし、コツが掴めないと途方もない事のように感じてしまう……。


「私もやってみます」


 チェリーさんは僕の失敗を上手く教訓にし、先ほどの嫌われ具合が嘘のようにすぐに乗馬することができていた。


「手綱や鞭が無いのでたてがみと足で操作してあげることになります。スピードを出したいときはこうやってちょっとお腹の辺りを足で叩くことになります。

 ただ、蹴りすぎると不機嫌になってしまうんで注意して下さい」


 そう言いながらクリーさんが少し先まで走って行く。

 僕達も神経を色々なところに尖らせながら必死でその後ろを追っていく――。


「2人とも初心者とは思えないほど素晴らしい上達ぶりです」


「ありがとう。こっちも必死で喰らいついている感じなんだよね……」


「わ、私もです」


 僕は前かがみになりながら振り落とされないようにしているが、チェリーさんはクリーさんと同じぐらいピシッと乗馬できている。リアルでもとんでもない体幹を持っているのか……。


「これぐらいのスピードなら走るより快適に進めそうですね? テルル中将さん、ここからどこら辺を目指した方が良いでしょうか?」


「そうだねぇ……。宝箱がありそうな場所としては、割と目印になりそうな場所にあることが多いね。このゲームに関しては少なくともせせこましい場所にあったことはほとんどない」


「なるほど……この広いサバンナで目印になりそうな場所は出てきたピラミッド以外では――あのオアシスのような場所でしょうか?」


 チェリーさんが指差した先には確かに湖のような場所と森のようになっている場所がある。


「ふむ……森の中はどうなっているか分からないが、あそこには確かに何かあってもおかしくはないな。行ってみよう!」


 僕たちは駆け出してオアシスに向かった。果たして宝箱はあの一帯に存在するのか!?

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