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ディストピア生活初級入門(第5部まで完結)  作者: 中将
第3章 電脳戦

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第8話 チーム結成

「ところであと1人はどうしましょうか?」


「そうだねぇ、折角だから一緒に有料鑑定をしてくれる人が良いかな。

 前はそれでチームが割れたことがあったね……あれは不毛な議論だった」


「なるほど。それなら有料鑑定屋さんに行こうとした無所属の人に対して私が声を掛けますね。

女性のアバターの方が警戒心も無いでしょうし」

 

 多分このチェリーさんは本当に女性なのだろうとは思うけどね……。

 細かい配慮や観察眼もあるし、これを男がやっていたら逆に称賛するよ……。


 チェリーさんと僕は有料鑑定所から少し離れた場所から誰かやってこないか観察していた。

 5分余り観察していたが誰もこちら側には来ない。

無理もない。巷である攻略サイトのページには『無料鑑定で十分』などと書かれているから、それを信じて有料鑑定をしようとする人そのものが少ないのだ。


 7分ぐらい待つと一人のかなり大柄な女性アバターが有料鑑定に向かおうとしていた。

 大きなマントを羽織っているがそれが圧倒的な存在感を際立たせている。

 チェリーさんは臆せずにすかさず、その女性に声をかけに行った。

 僕には出来ねぇ(笑)。


「あの、まだチームに所属することが決まっていないのでしたら私達のチームに所属しませんか?

 あちらのテルル中将さんはかなりの経験者で凄く頼りになるんですよ。

 よろしければ一緒に有料鑑定をしませんか?」


「おお、それはとても嬉しいな。私も有料鑑定を一緒にしてくれる人を探していたのだ」

 彼女は僕の一つ下のランクのシルバーランクだ。とても凛々しい声をしている。


 制限時間6時間を考えると仲間探しに時間を取られたくないので彼女を最後の1人にしよう。


「あ、僕からもお願いします。僕がテルル中将です」

 

 ちなみに3人まとめて有料鑑定したほうが少し割安になる。僅かな差であったとしても優勝を目指すためには重要だ。


「私は、クリーという。よろしくお願いする」


 握手をするととても凄い立派な手だなぁ。きっとリアルでもとんでもなく背が高いのだろう――まぁ、これもアバターだから実際は小太りのおっさんの可能性もあるけど(笑)。


 チェリーさんもクリーさんも海外の方という可能性はあるが、

 仮に外国人だとしても、海外との垣根を感じさせない自然な感じなので本当にこういうところはこのゲームの素晴らしいところだ。


「リーダーはテルル中将さんで良いですか?」


「ええ、私もまだまだですから。色々と学びたいです」


 チェリーさんが提案するとすぐにクリーさんも賛同してくれた。これで自然な流れで僕主導に進められるのはとてもやりやすい。

 サポートも出来なくはないのだが、どうにも不本意な方針に従うのは嫌なんだよな……かと言って自分がリーダーに名乗り出るほどのコミュ力が無いんで(笑)。


「では一緒に鑑定をやりましょう」


 その前に、正式にチームメンバーとして3人を登録し、共通の所持品としてのカウントがされた。

 チームは終わってみれば時間制限はあるし味気なく出来るけど、何だかできるまでの間の緊張感は慣れないねぇ……。


 こうして、有料鑑定の結果は――一番マシなものはクリーさんが初期で持っている7ランクの剣。あとは3ランクか4ランクの物ばかり。


 価値は10段階で評価され、強さについてはあまり良く分からないと言って良いが、

 これは、正直言って初期に配られた物の価値としてはあまり良くない部類だ。

 大体初期に配布される装備は5ランク前後が多いからだ。

 

 僕の経験則として強さとしても装備品は並みかそれ以下という感じがする

 稀に何の変哲もない武器がとんでもなく強かったりするがそれについてはあまり期待しないほうが良いだろう。

これはある程度、リスクを取った行動をしなければいけないだろう。


 ちなみにアバターの見た目や現実の力の強さなどは全く反映されない。

なぜなら主催者としては純粋にこのゲーム内の装備品で戦って欲しいという意図があるからだ。


「あの……これは、正直に言ってあんまり価値的には高くないようだね。

ただ、総合順位をあまり気にしないのなら“元を取る”ことは簡単にできると思うんだけどどうする?」


 このヴァーチャリストと言うゲームは1回参加費用1万円と1回切りと考えると中々高額だが、1位の賞金も1000万円とこれまた高額だ。

 実を言うと、無難に安全な仕事をこなすだけで1万円の参加費用は回収できるだけの価値にすることは簡単だ。


 昔の工場の流れ作業的な仕事をしていただけで現実貨幣価値にして3万円ほどになり、1万人中3000位ぐらいになれた時があって正直驚いた(笑)。


 ちょっとしたところに広告などが忍ばせてあるので、恐らくは広告収入などスポンサー料で主催者は元を取っているのだろう。

 今人気が急上昇中のゲームだけあってスポンサーに連なっている会社は虻利傘下の企業をはじめ世界的にもそれなりに名のある所ばかりだ。


 ただ、僕の本音としては優勝の可能性を探るきっかけにしたいので、安穏と過ごす気にはなれないが、こればかりは今回のパートナーの2人次第だ。

 まぁ、仮に安穏と過ごすルートで行くのなら僕は別ゲームを陰で兼任させてもらうがね(笑)。


「折角だから1つでも上の順位を狙いたいです」

「私もそうです」


 お、流石にセンスがあるだけあってチェリーさんはストイックだ。

クリーさんも何度も参加していそうではあるので、そこそこ大丈夫そうな気がする。


「何だか、テルルさんはとても頼りになりそうな気がします。まるで本物の虻輝さんみたいですね?」


「い、いやぁ、それほどでも無いかな~。流石にトッププロと僕を比べるなんておこがましいよ

 ということで、ある程度の方針も決まったところで早速動こうじゃないか。

 時間もあまり無いのでね」

 

 本人です! と声高に言いたくなるのをまた我慢した。とても嬉しいのに名乗れないのは本当に辛い……。


 時間のところを見ると気が付けば20分経過している。本当に動いた試行回数が勝負になってくるので、1秒たりとも時間を無駄に出来ない。

 顔に力を入れた。にやけている場合ではない。


「お金に関しては一応リーダーでもある僕が管理したい。少し回復アイテムを買っておく」


 序盤のダンジョンを潜る際の理想的なアイテムの購入の仕方は大体僕の中では決まっている。

 傷薬と状態異常対策を重点的に対策しておくのだ。この回復アイテムに関しては最終の順位付けの際の価値のカウントはされないので、最終盤には“買わない”という選択も重要になる。


 よし、ここからが真のスタートだ。装備品としては心もとないが、メンバーとしては“勝てる”と思える構成だと僕は感じた。

 事実データとしても、こういうランク構成が一番勝ちやすいというのが出ている。センス的には2人ともありそうだから僕の判断と運次第で十分優勝は狙える。


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