表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ディストピア生活初級入門(第5部まで完結)  作者: 中将
第3章 電脳戦

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

105/379

第7話 センスのあるチェリー 

「あの、すみません。私を仲間に入れてくれないでしょうか?」

 真っ先にとある施設に向かおうとすると、

突然、その寸前で女の子に声をかけられた。スラリとした体型の結構可愛い顔をしたカーボーイの格好をしている。結構似合っている。

 

「どうして僕に声をかけたんだい?」

 その返答次第でチームに入れてあげるかどうかを見定めようと思う。

 人次第じゃ見た目だけでこの子をパートナーの1人に選びそうだが、僕は実際に“勝てるかどうか”そこに注目したい。


「皆あの長い列に並ぼうとしているのに、あなただけは一目散にこちらのほとんど誰も行かない店に向かっているのを見て注目したんです。


ちなみに僕は何と声を掛けたらいいのか初期の交流方法が分からないので必ず“声をかけてくれた人が何と言うか”で仲間にするかどうかを決めている(笑)。


「ふぅん……僕が圧倒的に他の人より間違っているかもしれないけど大丈夫なの?」


「何か自信や確信がありそうな足取りでしたので、何か根拠があるのではないか? と思いました」


 ほぉ、この娘は随分と目の付け所が良い見方をしているな。

 見たところ参加レベルは“ビギナー”のようだが、それだけの観察眼と分析能力があるのならば、僕の助けになるかもしれない。


 恐らくリアルの仕事でも人間をよく観察しているような仕事なのだろう。

 例えば、カウンセラーや警察などと言った仕事だ。


「いいよ、チームに入れてあげよう。僕は参加レベル“プラチナ”だけど構わないかな?」

 

 ちなみに「参加レベル」とはこの系統のゲームに参戦したことがあるかないかを表す。

 ブロンズ、ミドル、シルバー、プラチナ、ゴールド、スペシャルと6段階に分かれている


 この「参加レベル」が低い人ほどチームに入れてあげることによって合計得点が装備の合計ポイントをされた後に最後乗算で少し補正される。

 そのために、経験者であってもラストの僅かな差を埋めるために“見込みがありそうな初心者”をチームに入れることはかなりのメリットになるのだ。


 ちなみに今の僕のプラチナぐらいのランクが一番人気が無い(笑)。

 加点もほとんどない上に普通なら経験値が中途半端だからだ。僕は初期の頃からある程度のコツを掴み2桁の順位ぐらい軽々マークしたから……ちょっと例外だけど……。


 とにかく、色々と複雑で経験者がいるほど有利なゲームではあるのだが、僕も必ずミドル以下の人を1人以上入れている。説明するのは少し得意だと思っているしね(笑)。


「はい、初めての参加なのである程度経験している方が良いと思っていました。私、チェリーって言います! よろしくお願いします」

 

 チェリーさんはとても愛嬌のある笑顔をしたが、実物は“おっさん”かもしれない(笑)。

中にはアバターの見た目に惚れてそのままバーチャル上で交際に発展することもあるそうだが――僕はリアルの見た目重視だからな(笑)。

 ということで、“ゲームのアバターはゲームの中”とかなり割り切った考え方をしている。


「僕は、『テルル中将』と言う。よろしくね」

「はい、よろしくお願いします。eスポーツ世界大会で有名な虻利虻輝さんがお好きなのですか?」


「そ、そうだね。世界的有名プレイヤーだし、ファンなんだ。このアバター結構高かったんだよねぇ~」

 僕が選んでいるアバターはなんと“リアルの僕そのもの”なのである。


 普通はリアルと同じアバターを作ることは出来ないし、選べないようになっているのだが、僕の場合は“世界大会優勝者の有名人“ということで”レプリカアバター虻利虻輝“を有料で支払えば選択できるのだ(笑)。


 僕は“自分じゃない姿”であんまりゲームをやりたくないんだよね(笑)。

何か、“別の人を操作している感じ“があってね(笑)。


 普通アバターで被ることがまず無い程、星の数ほど種類があるのだが、僕の場合”レプリカアバター虻利虻輝“の人はたまに見かけるので被ることがある(笑)。有名人は辛いね(笑)。

 未だに自分のアバターの人と組んだことは無いけどね(笑)。


 ただ、“自分“なのに人気だからか知らんがアバターも高いんだわ。これ確か当時150万円ぐらいした。今はもっと値上がっているかも……。

 

 自分の姿で遊ぶだけなのに、金払うのは意味が分からないがね……。

 まぁ、“正直なところ自分の姿で遊んでいるけど虻輝だと確定していない”と言う状況も面白いと言えば面白いけどね。


「あの……ちなみに行こうとしていたお店はどうして空いているんですか?」


「あの店は有料鑑定だからだよ。皆が並んでいるのは無料鑑定だからだ」


「どうしてわざわざ有料のお店に行くんですか? 無料鑑定もすぐに結果が出ると思うのですが……」

 無料鑑定も並んではいるけど、列のスピードはあっという間だ。判定スピードがとんでもなく早いから。


「無料鑑定だと評価精度が70%。ところが、有料鑑定だと99%の評価精度なんだ。

 この鑑定してもらうことは初期の段階でしか使えないのだが、その先の意思決定で大きな影響を及ぼす。

 特に持ち物数上限が決まっているこのゲームにおいては今ある評価をほぼ完全にしておきたいのだよね。

だが、有料鑑定は初期の金額の半分のゴールド(ゲーム内通貨)を支払わなくてはいけない。だから無料に皆並んでいるのだよ」


 持ち物数は装備品入れて僅かに20。その中で初期に与えられている10の品と1万ゴールドをどう使うかがカギなのだ


「なるほど、精度が金額を上回る価値と判断されているのですね。納得です。私も有料鑑定してもらいます」

 初心者にしてこの僕のセンスに付いて来られるのはやはりいい眼をしている。この娘はやはり入れておいて正解だ。

 

 以前は、“有料鑑定は絶対にしたくない”と頑なにパートナーに言われてそのままラストまで突っ走り初期で高評価されたモノが“贋物だった”と最後に分かったということがあった。

 優勝チームと僅かな差で4位だったので、その“贋物であるか否か”が響いたのだ。それ以来僕は初期に“有料鑑定”を必ず行っている。

 

「そう、僕の考え方としては。無料精度の評価より有料精度のほうが30倍価値があると思っているんだ。

要は、評価の失敗確率が無料を30%、有料を1%と見ているからなんだよね。

 所持品の価値や性能がどうなのかについて ゲームプランとしてどういう展開で進めばいいかかなり明確になる。このゲームは明らかに選択肢が多いからね」


「凄いですね……その分析力まるで本当の虻輝さんみたいですね……」


「い、いやぁ、それは最高の褒め言葉だよ。尊敬しているからね本当に」

 

 実を言うと僕自身でぇーす! と声高に言いたいところではあったが、そう言った瞬間にこのゲームの規約違反になるのでグッと堪えた。


 このゲームのAIの監視システムがプレイヤーが個人情報の公開を行った瞬間にゲームから退場することができる。

そのようなペナルティ3回を食らった時点で永久追放というかなりシビアなものだからだ。


 なぜそのような制限があるのかと言うと、このタイプの自由度の高いゲームが出始めた時に、

 獄門会などの組織が活動する温床となったり、売春や麻薬取引などの非合法的な行為が多発したのだ。


 また、僕のような有名ゲームプレイヤーだと一緒に組みたいという人が殺到してゲームの進行の妨げになったりもする。

 そのために、個人情報の公開に対して非常に大きなペナルティが課されているというわけだ。

 僕はとてもある程度の注意をしておけばありがたい制度だけどね。マジで僕目当てで殺到してくる人が多いから……。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ