プロローグ
初めましてreinです。初めて小説書いてみました。
ノリと勢いで書いてるのでご理解どうぞよろしくお願いします。
「やっと出てこれたな」
そう言ったのは15歳の成宮翔、翔は約10ヶ月もの間鑑別所と少年院に幽閉されていた。
事の発端は中学3年の何気ない日常だった、学校が終わり早く家に帰ろうとした翔は近道になる裏道から帰ろうとしたら前方から声が聞こえてきた。
「や、やめてください、本当にこれ以上お金は持ってないんです」
そう声をあげたのはぼこぼこに顔をはらし涙を流してる40代ぐらいの幸の薄そうなおっさんだった。
「しらねぇよ、まだカードから出してた封筒に入ってた金持ってんだろ‼︎」
そう返したのは赤髪で短髪の翔と同じ中学の同級生赤司剛だ。
剛は学校で有名な不良、翔とは小学校も同じで昔は毎日遊ぶほど仲が良かった。それが変わったのは剛の両親が離婚してからだ。そこから剛は気に食わない事があると直ぐに暴力を振るうようになり、自分の意見に従わない奴に対しては暴力は勿論、周りの奴に対して虐めるように命令を出したりと、最低最悪な事を平気でするようになった。そんな剛に対して翔は何度も何度もそんな事をするのはやめろと言った。唯一翔だけが意見を言えるのは、翔は空手の段位持ちで実力は師範代クラスだから殴りあいになっても剛より翔の方が強かったのが理由で剛も翔にだけは周りの連中も使わず一切手だしをしてこなかった。
そんな関係の2人がこんな場面に遭遇したらどうなるかは決まっているだろう。
「剛、お前何やってんだよ!これは普通に犯罪だろ」
「ちっ、うるせぇやつがきた、全員撤収だ」と取り巻き5人に声をかけた。
翔は意外にも剛が素直に引いた事に違和感を覚えたが今はそんな事どうでもいいなと思い、殴られていたおっさんに声をかけた。
「大丈夫ですか?警察と救急車呼んだ方がいいですか?」
そう心配そうに眉尻を下げる翔に対しておっさんは
「いや、大丈夫痛い所は多いが特に異常はなさそうだからそのまま帰るよ」
おっさんはそう言いとぼとぼと足取りおぼつかないまま歩いて裏道から出て行った。
翔はこの行動にも違和感を覚える。
「普通あんだけ暴力振るわれたら同じ制服の学生に対してもっとこう暴言とか悪態とか仲裁に入られたとしても言いたくなると思うんだけど…」
まぁ考えてもしょうがないなと思い家に帰る。
そこから1週間ほど学校で剛に対してあの時の事についてあのおっさんに謝りに行くように言ったが、ほとんどが相手にされず無視されて終わり。
8月1日の早朝、いつもの日常が突然終わった。
朝、翔は2階の自室を出ていつものように顔を洗いに1階に降りるとそこには黒髪を長く伸ばし目尻が下がり優しそうな雰囲気で誰が見ても美人だというのに、今はそんな優しそうな雰囲気は一切なく、顔を青くした翔の母親成宮真千がインターホンの前で呆然と立ち尽くしていた。
翔は真千が18の時の子で父とは小学1年の時病気で死別母子家庭で1つ下に妹が居る。
そんな母親を見て翔は声をかける。
「母さんどうした?」
それに対し真千は呼吸が荒く、絞り出すように声を出す。
「しょ、翔あなに警察が来てる、逮捕状も出てるらしくて罪名は強盗、恐喝、脅迫って、そんなのありえないわよね?」
「え、意味わかんないんだけど、マジ?ありえねぇんだけど…悪戯ってわけ…ない…よな」
真千の心底焦った様子を見て悪戯はありえない事はわかった。
「今から家宅捜査するから翔の部屋に入るって、令状が出てるから拒否できないみたい」
「マジかよ、身に覚えなさすぎて本当にわけわかんねぇ、見られて困るもんも無いけど令状出てるって事は捕まる事確定してるじゃねぇか‼︎」
真千と翔がそう言って内に玄関のドアが開いた。
ガチャ「失礼します」
そう言って入ってきたのは5人スーツ姿の厳つそうなガタイで、目つきは鋭くいかにも警察官という風貌だった。
その内の1人の男が言った。
「私は、千葉県警所属の原田実と申します。今回罪名は、1週間前に起きた強盗、恐喝、脅迫に対しての物です。監視カメラの映像音声、被害者の証言、その場に居た5人の暴行を加えていた少年達の証言が証拠になります」
それを聞いた翔は声を荒げずにはいられなかった。
「いやいや、待ってください‼︎それをやったのは、監視カメラの映像音声があるなら明らかやったのはあの5人に決まってるじゃないですか‼︎」
「それは勿論分かっています。ですが暴力を振るったのは貴方に脅され断ったら何をされるかわからないからやったと言っており、脅しの音声も提出してもらいました。被害者も近づかれた時に被害届出すなよと、脅迫を受けたと証言もあり、そして学校内で赤司剛が粗暴な態度を取る様に命令しており、表面上は優等生の振りをしていた。これも命令されていた音声があります」
「ハッ、ハハ」
翔は呆れた笑いをするしかなかった。
明らか綿密に計画を立てた剛に嵌められたのだ、音声の提出そんな物学校での普段の会話を隠し撮りで録音、違和感ない様に編集でもしたんだろう、更に学校の皆はこの音声を聞かされ翔を助けようとする者は居なくなる、剛に常、翔が普段の行いをやめるように言っていたのも自分がいい奴と、見られたいがためにやっていた様に見える。
警察に捕まればますます、学校の皆んなは剛が嘘を言ってないと都合の良い様に思うだろう、被害者も脅せば言いなりだろうしな。
「終わってんじゃん俺」
力なく翔はそう言うしかなかった。
その後は警察が自分の部屋を他にも証拠になる物を探しているのを眺めるしかなかった。
家宅捜査が終わり携帯、財布等を取り上げられた後、罪名を告げられ手錠をかけられ、タオルで手錠を見えない様にされる。
「8時21分逮捕」
原田がそう言い、家を出て黒塗りの車に乗る様翔を促す。
真千はその翔の姿をただ泣きながら眺める事しか出来なかった。息子がそんな事する訳ないのはわかってるでも身内が何を言っても警察は聞いてくれない。
車が去ってから真千は泣きながら拳を握る。
「ごめんね…ごめんね翔…何もお母さんしてあげれなかった…翔を助けてあげれなかったごめんね翔うぅぅ…」
ガチャ、玄関の扉が開いた音がし真千が振り向くとそこには翔の妹、黒髪を肩まで伸ばし、目尻は下がり気味真千に似て優しそうな雰囲気に、寝起きでもわかる目鼻立ちの整った容姿の美少女成宮凛が居た。
「お母さんどうしたの?大丈夫?何があったの?」
凛は真千が泣いていて兄が家に居ないそんな訳も分からない状態でも真千が心配で声をかけた。
「翔が警察に連れて行かれちゃった」
凛は言われた言葉が衝撃的過ぎて言われた言葉の意味はわかっても理解が追いつかない。
「お兄ちゃんが警察に連れて行かれた?意味わかんない、お兄ちゃんが捕まる様な事するわけない‼︎」
凛は翔がどれだけ優しい人かわかっている、少しシスコン気味だが家族の事をとても大事に思っており、女で1つで頑張って育ててくれている真千にいつも感謝しており真千がご飯を作れない時は翔が作っていた、そんな心優しい翔が凛も大好きだった。
家族に迷惑がかかる事なんて絶対にしない、それを真千も凛も理解している。
「嘘よっ‼︎嘘よっ‼︎嘘よぉぉぉぉ」
凛は誰に向けるでもなく翔が捕まった事実を理解したくなくて、涙を流しながら叫んだ。
そんな凛を見て真千は少し落ち着きを取り戻し凛を抱きしめ言った。
「大丈夫、翔が捕まる様な事するわけない、まだあまりお母さんも翔がしたって聞いた事理解してないけど、被害者の人と証言をしたって言う5人に話しを聞きに行って見るから」
「わかった、凛も友達に話しを聞いて協力してもらう」
この時の2人は翔を信じており冤罪を晴らしてみせると意気込むが、被害者が面会拒否、弁護士しか会う事が許されず、翔の弁護士には国選弁護士が付いたが、翔を信じておらず刑を軽くする事しか考えていなかった、端から真千が弁護士を雇えば冤罪を晴らす事が出来たかもしれないが、国選弁護士の質の良し悪しを理解しておらず真千の前では耳心地の良い事ばかり言っていたため手遅れになってしまう、凛も学校が夏休みに入っていたため現状把握するにも自分の交友関係しかなく出来ることは少なく、時期の悪さタイミング悪さによって冤罪を晴らす事が出来なかった。
翔が連れて行かれ留置所に入れられたが2週間がたった頃少年鑑別所に移送される、翔はその間何度も取調べを受け何度もやってないと言ったが聞いて貰えず、警察は調書を取り終えたのか取調べは少なくなった、鑑別所での生活を1ヶ月ちょっと過ごした後、荷物を纏めろとの指示があり、翔は連れて行かれる。
再逮捕だった、剛のやってきた罪が翔に来ているため余罪が出てきたと言われ、また警察の留置所の生活が始まり、調書の作成に付き合わされる。
この繰り返される地獄で翔の心の支えは面会に来てくれる、真千と凛しかなかった。
「心配しないで翔、絶対に翔がしてないって認めさせてみせるから」
「お兄ちゃんが捕まるなんてありえない、こんなことした奴絶ぇぇ対許さないから‼︎」
真千と凛が自分の為に頑張ってくれている、怒ってくれてる、迷惑をかけているのに暖かい言葉をかけてくれるそれだけでただただ嬉しかった。
「ありがとう2人とも、2人が信じてくれるそれだけでだけで俺頑張れるよ」
そう言う翔の瞳から涙が溢れる。
「ご、ごめん、ごめん泣くつもり無かったんだけどさ、2人の言葉が嬉しくてな」
「翔…」
「お兄ちゃん…」
焦った翔は話題を変えるためもあるが自分が気になっていた事を聞いた。
「そうだ、朱里はどうしてる?心配かけてると思うんだが」
それを聞いた瞬間2人の顔が曇った。
朱里とは、フルネームは東堂朱里翔とは幼稚園からの付き合いで小中一緒の幼馴染であり翔の彼女でもある、中学生ながらの友達の延長みたいな交際だが、そんな関係なので勿論真千も朱里も知っている。
「あの人は大丈夫だよ、心配しないでお兄ちゃん、ちゃんと事情説明してるから」
「そうそう連絡送っても返ってこないからって、家にきたからその時に説明したわ」
それ以上言わない事と一瞬顔を曇らせた2人を見て翔は何かあったと分かりこれ以上聞くのをやめた。2人はもともと朱里の事をよく思っていない、俺がいない時何があったのかわからないが理由を話してもくれなかった。
「ありがとう2人とも教えてくれて」
翔がそう言い、話が切れたところで警官が「時間だ」と言った。
真千が辛そうな顔をしながら目を伏せる。
凛も同様だ。
そんな2人を見て翔は元気に笑顔で声をかける。
「2人とも来てくれてありがとう、めちゃくちゃ嬉しかったよ、また来てくれると嬉しいな」
そんな翔の姿を見て真千は泣きそうだけど涙は流さず笑顔で言う。
「勿論来るに決まってるでしょ、当たり前の事言わないの!また元気な翔の顔みに来るわね」
その時凛は泣いていた。下を向いて涙が地面に落ち、拳を握り下唇を噛んで身体を小刻みに震わせる。
「お兄ちゃんに毎日会いたいよ、お兄ちゃん悪くもないのに、家族なのに毎日会えないなんてこんな事おかしいよ!」
そんな凛を見てそっと真千が凛を抱きしめる。
「ごめんな凛…」
これ以上翔は何も言えなかった。なぜなら翔が1番この状況を認められなかった誰よりも納得してなかった、家族に笑顔を見せていても腹の内はどす黒い感情が渦巻いていた。
翔が何より許せなかったのは真千と凛に悲しい思いをさせ2人に苦労をかけさせている事だ。身内が犯罪者なんて近所と学校の生徒には直ぐに広まるそれを2人は何も言わないず、辛い表情なんか一切見せない。
絶対にこんな事をした奴に後悔させてやると翔は2人を見て決意した。
逮捕から3か月ようやく翔の裁判の日になる。家庭裁判所に連れてこられ、これまでの家庭裁判所調査官との面談の内容、弁護士の内容を元に判決を下される。
翔は調査官との面談でもやってない嵌められたと言ったが認めて貰えず。反省の色無しと見られてしまい裁判は不利になっていた。
弁護士は翔の無実を証明すると言っていたが翔に対して言っているだけで特に何も出来て、いやほとんど動いていなかった。
そして判決が下される、この場には真千がいる凛は連れて来なかったみたいだ。
翔は自分の唾を呑み裁判官の言葉に耳を向ける。
「被告人成宮翔は強盗、恐喝、脅迫を行いその反省の様子が見られなかった為短期少年院送致とします」
「う…うぅ…うぅぅ」
翔は認められず泣く事しか出来なかった。こうなるのは分かっていた、罪が重く余罪も多く調査官との面談もやっていないと言っていたし翔は何もやっていない為反省もなかった。翔の頼りは弁護士だけだった。
だが負けた、これで未成年で身バレはしないが警察、裁判所には一生消えない犯罪歴が残る。
真千は両手で顔を覆い泣いている。何も出来なかった自分の不甲斐なさに、息子が犯罪者の烙印を押されてしまった事に自分が許せない。心の中で翔に謝る事しか出来なかった。
そして裁判から半年5月1日翔は少年院から出所した。
この物語はフィクションです。