魔法学園の教師です。学園内における公爵令嬢と王太子の婚約破棄騒動を私の目から検証してみたいと思います。悪役令嬢などと言い出したのは一体誰?令嬢は殿下の浮気相手をいじめていたのでしょうか?
「レイラ・アルフレッド、お前をわが愛しいリリーをいじめた罪、彼女を階段から突き落として殺そうとした罪、許しがたい。ここに婚約破棄し、断罪する!」
やっと小うるさい、失礼、生徒たちが卒業し、休みという平和を勝ち取れると思ったのですが、私は卒業パーティーの時行われた騒動の始まりのせいで、休みを返上して、この婚約破棄騒動は一体どこからはじまり、どうしてこうなったのか調査をする役目を学長から命じられたのです。
はじまりは、王太子殿下の宣言から始まりました。私はおいしそうなお肉を頬張って、この宣言を聞いて、思わず肉を喉に詰まらせましたよ。
まず王太子が同級生のリリー・アールという男爵令嬢を引き連れ、壇上にあがり、公爵令嬢の婚約者レイラアルフレッドにこう宣言をしたことからはじまり。
それから取り巻きが突き落としたのを見た! と言い出し……。
ええ、彼女はそんなことはしていないと言い張り、パーティーは騒然となりました。
一旦、発言だけの証拠では弱いと学長が言って、なんとか場をおさめ、聞き取りをして事の次第をあらためるといいだしたのです。まあ学園内のいじめと殺害未遂では学長の身も危ういですし。
そして白羽の矢が立ったのが私、水の魔法使い教師のジル・フォートレールでした。
いえ、どうして私? と聞くと、あいつらの副担任だからそうです。担任は辞職したって逃げましたねあいつ!
私はしょうがないとばかりに、あいつらに聞き取りをはじまることにしたのです。
王太子「リリーが突き落とされたといっている。愛しいリリーが嘘をつくわけがない」
の一点張り、でリリーが虐められたというのも彼女から聞いただけという、こいつは論外。
リリー「私は殿下の愛を独り占めしているといって……レイラさんに水をかけられたり、足をひっかけられたり、私が庶民だと言ってののしられていじめられましたわ。同級生のみなさんが証人です!」
目撃者は同級生と言い張る。具体的に持ち物を盗られたとかノートを破られたという証言もあったが、これは自分でもできるしねえ。
同級生たちを呼び出して聞き取ると、まあこいつら判で押したように同じことを言いやがる!
リリーさんはレイラさんに水をかけられ、だから具体的にどこだ! と聞くと、中庭からお手洗いから、教室からばらばらだ。何回水をかけられているんだ!
ノートを破られたとかものを隠されたとか、これもバラバラ。
階段から突き落とされたというのは目撃をしたというものもいたが、具体的に背中を押したというわけでもなく、レイラが手を伸ばして、リリーを助けようとしたとも見えたという。
私はもう同級生の線もあきらめました。最後にレイラに聞いてみるとそんなことはしていないの一点張り。
いや気持ちはわかりますがね? でもそんなに怒鳴ることはないと思いますよ。
私は聞き取りによる証拠集めをあきらめ、記録魔法を調べることにしました。
学園内には記録をとるシステムがあります。まあプライバシーだのうるさいから教師と学院長しか知りませんがね。
私は記録魔法をとりよせ見てみることにしましたが……。
どこを探しても、レイラがリリーをいじめているという画面がない……。階段から突き落としたというシーンも助けようとしてるようにも見えて……。八方ふさがり。
お手洗いや更衣室などはさすがにこの魔法がしこんでないから、ここでされたといわれたらうーん。
「……どうすればいいんですかねえ」
「簡単な話だ、バカ、お前は深く考えすぎなんだよ!」
同僚のセシル・オブライエンに相談してみると、バカだろお前と言われてしまいました。
医務室に常駐している医者の同僚は、眼鏡をくいっとあげて、簡単だといいますが。
「どういうことです?」
「だからさ、証拠がないっていうんだろ? だったらないんだよ。口裏合わせて公爵令嬢様を陥れようとしてるのさ、将来の王太子妃にしっぽ振ってるんだよあいつら」
しかし証拠がないからお前嘘ついているだろというわけにもいかず……私は寝台に寝ころび、さてどうしようかなとため息をまたつきました。
「お前、嘘発見器っぽい魔法持ってただろう? あれにかけりゃいいんだよ」
「しかし、魔法は証拠になります? 公爵令嬢様とか王太子殿下とやらにあんなのかけて、私、下手をしたらクビになりません?」
学長も追い詰められているから使用許可位取れるだろとにやっとセシルは笑いました。ああその顔、素敵です。好きですねえやはり。両手を広げてこちらを見るセシル。ああもう好きですやはり。
「……ほら、来いよ」
「相変わらず、優しいのか、優しくないのかよくわかりませんねあなた」
「お前、本当に要領悪いなあ」
私をぎゅうっと抱きしめて、よしよしと頭をなでるセシル。だからそれはやめてといつも思います。
「……やってみますか、あなたに会えなくなるのは寂しいですし」
「パートナーが無職なんて避けたいしな、まあ私が養ってやってもいいが」
「それはちょっとねえ……」
一応私たちは恋人同士でして、一応、というのは契約恋人というやつでして、私がセシルに告白したところ、好みじゃないと一蹴されまして、なら好きにさせてみせる! とこの1年仮契約というやつで恋人になってもらっているというか少々ややこしい関係です。
私は頭を撫でられながら、いろいろとあいつらどうしてくれようと考えを巡らせていたのでした。
「……嘘発見魔法って、そんなものを私にかけてどうする!」
「私嘘なんてついてないです先生!」
「私は嘘なんてついていませんわ、かけてください先生!」
当事者3人をまず呼び出し、私は学長の許可を得て、学長室で、こいつらに魔法をかけて本当のことを聞き出すと宣言したのでした。
学長も必死で、そんなものがあるのなら是非といってすぐ許可をだしてくれましたよ。
「……煩い! この騒動をなんとかしないと、私は恋人と南の島で休暇を一緒に過ごそうと約束していたのに、それがなしになってしまうんです! お前たちのせいで私のプライベートがめちゃくちゃになっているんですよ! ただでさえ労働条件悪いのに!」
私怨ですよ。はっきり言って、でも今は休みのはずなんです。
セシルと南の海で過ごしていたはずが、どうしてこんなことに……。
私は奴らを一喝、有無を言わせず魔法をかけました。
「リリー、階段から突き落としたのはレイラでしたか?」
「いいえ違います先生、私が自分から落ちたのですわ!」
ペラペラとリリーが今までの嘘を話し出し、二人は目を点にしてそれを聞いているが、しかしなあ、嘘発見魔法なんて使う機会がないと思っていたのに……。
「ならレイラはリリーをいじめたというのも嘘か?」
「はいそうです!」
何かすごく疲れてきました。私は仕方ないとばかりに聞き出すと、みんなリリーが勝手にいじめられたと吹聴し、取り巻きたちもそれに一役買ったということがわかりましたよ。
ええ、全部嘘、私はどうします? と殿下に聞きますと……。
「レイラは無実です。申し訳ないレイラ、婚約破棄などと失礼なことを言って」
「いいえ殿下、それはいいのですが、この嘘つきはどうされます?」
「それは心配しなくていいですよ。学園側で処分しますから」
私は二人とも仲直りで、卒業したら結婚するんですよね? と念を押します。
するとはいと二人はうなずきました。なんというか殿下、百年の恋も冷めたという顔です。
私はペラペラと本当のことを話し出したリリーに拘束の魔法をかけて、嘘つきの事実を学長に話して、どうするかと聞きました。
リリーは処分として退学、王族と公爵令嬢に対する不敬罪で辺境の修道院送り、男爵の家もおとりつぶしとなりました。
学長が王家と秘密裏に連絡をとりあって処分を出したのです。
これで婚約破棄騒動は終わったと思われたのですが……。
「セシル、私と今度こそは結婚するといってほしいです」
「残念ながらお前は私の趣味ではない」
南の島で私は愛しい恋人ともに休暇を過ごしていました。新学期ははじまっていましたが、私は学長をおどいいえ交渉して休みを伸ばしてもらったのです。しかし私のもとに魔法学園から伝令がやってきまして……。
『すぐ帰ってこい、一学園下の殿下の弟君がまた婚約破棄を宣言した!』
という文章がそこにはありまして、いやだから、お前ら兄弟何考えているんだ! という。
「どうしてこんなことに」
「嘘発見魔法などというものを開発したお前が悪いな」
「うう、セシルの水着姿がやっとみられたのに!」
「早く行ってこい、この馬鹿!」
私はセシルに縋りつくと、頭をけられてしまいました。水着姿がとてもまぶしいですけど、白衣もいいがそれもとてもいいです。
「あう……」
「お前、男の癖に情けなすぎるぞ!」
「君こそ、女性のくせに口が悪すぎますよ」
私は彼女のまぶしい水着姿を見ながら、ああ、どうやったらこの騒動は決着するのかと考えました。
下にまだバカの王太子の弟が二人いるんですよ……
ため息をつく私、セシルもついて行ってやると上着を羽織って歩き出します。
この騒動はまだ終わりそうになさそうです。
「がんばれよ……」
「はい……」
愛しい恋人が頬にキスをしてくれて、私は少し元気を取り戻しました。騒動を終わらせて休みを絶対にバカンスしてやります!
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