Chaptar1〜雨は降り始めた〜
かなり分かりにくくなっていると思います^^;
1−1であることをご了承ください。1−2・・3と続いて分かるようになっています・・・はずですw
法とモラルが制御する弱肉強食の世界。矛盾した世の中で、正義とは何なのか?
審判戦争から一年余り、軍は解体され、俺たちは普通の学生として過ごすことを許された。
しかし、人は争いを好み、求め、何かを失うまで気づかない。俺は、何を失うのだろう。
Chaptar1−1〜雨は降り始めた〜
昨日となんら変わりない今日この頃、授業も面倒で窓から外ばかり見ていた。暇だな。
放課後になっても、することは無く。ただ、時間を潰しているだけ。
審判戦争時、名を馳せた夢道化師。夢を作る道化師が、こんなんじゃいい夢も見せられないな、と心の中で苦笑する。
空いて久しい机と椅子を見る。音無銀閣、行方不明の英雄。審判戦争終結の要となった黒き英雄。数週間前に行方を暗ましたまま連絡も無く、連絡も取れずにいた。
審判戦争の1年、死をも経験したがあの時の俺は満たされていた。
銀閣、お前はまたあそこにいるのか?
何も満たされぬまま平和を過ごす。俺が嫌いなのは、多忙と閑暇と不変だ。今は、閑暇と不変が揃ってしまっている。
「あれ、コースケじゃん」
放課後、駅前の喫茶店でコーヒーを啜っていると、クラスメートの藤堂紅葉と瀬良野葉月がやってきた。彼女らも、審判戦争を共にした仲間だ。
「席、いい?」
「ああ」
テーブル席に一人座っていた俺の向かいに2人は座る。1年間も一緒に居た訳だが、俺も年頃の男子だ。こうしていると、妙に緊張してしまう。
大した話題も無く間が空いてしまう。何か切り出さなくては。
迷った末に出したのは、銀閣の話題だった。
「銀閣の奴、今頃どうしってかな?」
銀閣の名前を口に出して、気づいた。
葉月が、急に元気を無くした様に俯き、ただコーヒーをかき回す。小さな眼鏡っ子、そんな外見に余計暗く見えてしまう。
「音無君、元気にしているかな?・・・」
紅葉が、睨んでくる。普段は可愛いポニーテイルが強い女性をイメージさせる。「全く、鈍いわね」と目が訴えてくる。銀閣はNGワードだったらしい。
「銀閣のことだ、どこかで一匹狼をやっているさ」
フォローをしおうとしたが、的を大きく逸れてしまったらしい。
慌てふためく俺に、救いの天使が舞い降りた。PLDの着信音が鳴る。メールだ。
「銀閣からだ・・・」
「えっ!」
普段はスローな葉月が、異常は反応を見せる。
『仕事を終え、戻ってくることが出来た。荷物が多いんだ。手伝ってくれないか?渡門神木で待つ』
「渡門神木で待ってるってよ。行こうぜ」
渡門神木は、駅の大きな木の円柱だ。ここからは、歩いてもすぐ着く。
俺と同じ城ヶ崎高校の制服を肩に掛けた銀閣は、渡門神木に背を預けて待っていた。あれ、荷物と言ってもキャリーバック一つじゃないか。
「久しぶりだな」
「高が3週間だ」
これぞ、銀閣。何を言っても冷たく返してくる。
「てかよ、手伝ってくれっていうもんだから来たのに・・・それ一つじゃないか」
「何も荷物が、今目にみえている物とは限らないだろう?」
「?」
葉月は、意味が分からないといったようだが、俺は審判戦争時にはいつも銀閣と組んでいたのだ。この謎掛けのような台詞を理解した。
「・・・何がある?」
「時が来れば分かる」
目の前のスクランブル交差点の信号が青になった。大勢の人々が行き交う。
学生、サラリーマン、OLなど日常変わりない風景だ。しかし、銀閣は真剣な眼差しで見つめる。
行き交う人々の中で、黒スーツの男性が手を挙げた。その手には、拳銃が握られている。
響き渡る銃声、足を止める人々。信号機の音だけが、静かに流れる。
俺は、息を呑んだ。最悪の事態を想像してしまったからだ。
紺色のスーツを着た男性が倒れる。じわじわと広がる赤い水溜り。
ソレが何を意味するかは、そこにいる誰もがよくわかった。
「死にたくなければ、逃げろ。まぁ、こいつらからだけどなぁ?」
黒い化け物が現れては、人々を襲い、喰い殺した。
人々は、パニックを起こし、蜘蛛の子散らすように逃げ惑う。
どんなに走って逃げても、化け物からは逃げられない。すぐに追いつかれ喰われてしまう。
「ぎんか・・・」
横を見たときにはもう、銀閣の姿は無かった。
飛び出した銀閣は、大きな剣を2本構え黒スーツの男に襲い掛かった。
「来たな、死に底無いがぁ!」
人混みの中から同じ黒スーツを着た男たちが、剣を銃を構え銀閣に襲い掛かる。
「音無君!」
銀閣は、十数人の敵を相手に大きな2本の剣を器用に操り闘い抜く。
「荷物ってこれかよ!」
俺も、戦闘に参加する。銀閣が、言いたいのは・・・。この化け物を掃除しろってことか!
「行くぜ・・・。<破運>のゲットウ!」
俺は、無垢な心の名前を呼ぶ。無垢・・・イノセンスと呼ばれる思念の力。思いを具現化し闘う。それが、俺たち夢道化師の能力。
宙から降って来た、二刀一対短剣を取り化け物に切りかかる。
「なっ。硬い!?」
戦車の装甲をも切り裂いた俺の短刀は、全く意味もなさなかった。簡単に弾き飛ばされる。
「平和ボケし過ぎじゃないのか?」
これだけの数を相手にしながら銀閣は余裕で言葉を掛ける。
銀閣は、剣を受け流し切り返す。降り注ぐ銃弾を剣を振り回して防ぎ、宙を舞って避ける。
隙間無く繰り出される連携プレーだが、銀閣には掠り傷一つ付けられない。
銀閣の動きに見とれているうちに、逃げ遅れた幼い子供が化け物に襲われていた。
ここからでは、間に合わない。いかし、今助けられるのは俺だけだ。
「春夏秋冬・・・秋!」
“風雅様相!!”
超高速移動をした俺は、一瞬で化け物に追いつき、縦に両断して子供を助けた。
「大丈夫か?坊主」
「うん。ありがとう、お兄ちゃん」
子供の母親が歩道の隅で泣き崩れていた。子供を抱え母親ものもとに送る。
「ふん。遅いぞ」
「ちんたらやっている人に言われたくないね」
銀閣は、不敵に微笑むと剣を持ち直し、構えを変えた。
「月陰ル剣技・・・」
“展映月!”
銀閣が、大きく剣を振り下ろすと辺りを衝撃が襲い黒スーツの男たちを吹き飛ばす。
「手加減はしたさ・・・。さぁ、吐くもん吐いて貰おうか」
「ふん。お前には何も出来ないさ」
黒スーツの男は、懐から取り出した錠剤を呑み込んだ。
「・・・」
それ以来、男が喋ることは無かった。即効性の高い毒薬だったらしい。これだけでも一つ分かることがある。
何故、自殺したか。情報を漏らさないため。組織に属しているということだ。
「だが、ワケが分からない」
俺は、銀閣に問うた。
「あの化け物は何だ?それに、こいつらは?」
「話せば長い。それに、今はやるべきことがある」
「コースケ、生きている人もいる。病院に運ぼう」
紅葉が、怪我をした人たちに寄り添う。そうだな、優先すべきは目の前のことだ。
誤字脱字あれば、連絡ください。
教えて君かもしれませんが、アドバイスとうあればお願いします><