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ウォンツマンZERO  作者: ビヨンド裕P
モグラ激闘録② 戦闘
9/20

第7話 詐欺

ドメスティックマンを倒し、改造ニートに初勝利した裕二。報酬金をもらいウキウキの裕二に、新たな敵の影が迫る。

「斎藤充くん、あなたのためにも、必ず目的を果たしましょう」


 岩田は部屋で1人、ウォンツマンに倒されたドメスティックマンこと、斎藤充の死を悲しんだ。ウォンツ社員の中でも、伝説の配信者の因子に覚醒する者はごくわずかだ。ウォンツ陣営は貴重な人材と戦力を同時に失ったことになる。


「社長、私が必ず、ウォンツマンを連れてきましょう」


 茶髪にロン毛のチャラい見た目の男が、岩田の目の前に現れる。


「あれ石橋くん、ドライバーの調整は済みましたか?」


「ハイ、完ぺ……じゃなかった。バッチリですよ。ウォンツドライバー開発チームリーダーとして、私の方がドライバーの力を引き出せることを、あのグズニートに教えてあげますよ」


「斎藤くんも似たようなことを言ってました。しかし、彼は負けました。前川さんは、因子が完全に覚醒してないにも関わらず、覚醒していた斎藤くんを倒しました。油断は出来ませんよ」


 岩田は心配そうな表情で、石橋に話しかける。失敗してこれ以上の戦力ダウンは、なんとしても避けたい。


「我々の目的のために、彼の力は必要です。ですがそれと同じくらい、同士であるキミたちも必要な存在なのですよ。よろしくお願いしますね」


「もちろんです。計画はハイ、バッチリ」


 石橋はバッチリポーズを取ると、ニヤつきながら部屋を出ていった。


「まぁ、力が完全に覚醒したら、私でも倒せない存在になるんですがね」


 薄暗い工場の一室で、岩田は不適な笑みを浮かべた。


 ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ―


 喫茶店『アルガスタ』 PM.16:33


「こないだはご苦労様だったね。これが、任務協力の報酬金だよ。受け取り確認のサインをよろしく」


「あいよ」


 裕二は黒間からもらった、報酬金の明細書を確認する。


「え、500万すか…俺、右手の骨が粉々になったんですよ?まぁ、いいか次回よろしくお願いしますよ」


 裕二は自分の希望金額と、政府の報酬金に開きがあり、とても残念に思った。だが、あんまり要求金額が高いとお金をもらえなくなりそうだったので、不満はあるがとりあえず貰っておくことにした。


「ハハハッ、厳しいな裕二くんは。これでも、相当頑張ってお偉いさんに頭下げたんだぜ。岩田を倒せば、さらに上乗せ金が貰えるから一緒に頑張ろう」


 黒間は申し訳なさそうに、裕二に謝罪した。


「こんな人に、黒間さんがそこまで気使う必要ないですよ。家族のことだって全く心配してない、最低な人なんだから」


「なんだと美香、俺は親父が殺されたんだぞ。母ちゃんと妹は行方不明。お前なんかに俺の悲しみがわかるのか、ああ?」


 裕二は、美香に家族のことを大して悲しんでないことがバレていることにちょっと驚いた。だが、よく考えてみたら、別に親父の死に涙を流して悲しんだワケでもないので、悟られてもおかしくはないなとも思った。


「まあまあ美香くん、裕二くんはきっと感情をあまり外に出さないタイプなのさ」


「お、おっお前な、黒間さんの言うとおりだぞ。人を感情のないサイコパス扱いはやめろ」


「絶対違うと思う」


 家族の死を乗り越え、悪と戦う正義のヒーローを演じ、美香の同情を誘い告白する。もくろみが早くも外れ、裕二は少し動揺した。


「そういえば裕二くん、これ渡しとくよ」


 黒間は上着の胸ポケットから黒いスマホを取り出し、裕二に手渡した。


「なんすかこれ?」


「裕二くんのスマホだよ。美香くんと僕の番号がもう入ってる。今後はこれで連絡を取り合おう」


「マジすか、スマホとかネットの料金はそちらもちですよね?」


「んー、出来れば払ってほしいけど仕方ないか。使いすぎだけは、気をつけてくれよ」


「黒間さん、甘やかしすぎです」


 裕二は携帯を持たない変わりに、親にインターネット代を払ってもらっていたので、携帯を持つのは学生以来だった。しかもスマホやネットの代金は内諜持ち。ニートには夢のような話だ。


「それじゃ、僕は一旦、本部に戻るよ。美香くん、裕二くんと仲良くね。これは上司としての指示だ。裕二くんが戦いやすいように、キミがしっかりサポートするんだ」


「わかりました」


 美香は不服そうに黒間の顔を見て返事をした。ここ数日、一緒に暮らしてるが、用意した食事も気に入らない時は一口も食べず、何度も入浴時を覗かれ、さらに夜の寝込みを襲われ胸を揉まれたこともあった。美香のストレス耐性値は限界を越えていた。


「そうだぞお前、もっとしっかりやれや。意識低いんじゃないの」


「さすがにそれ、ムカつくんだけど」


 美香は、さんざん身勝手に振る舞う裕二のことを殴りたいそれもグーで、と心の中で何度も思った。だが、尊敬する上司の指示を守るためにぐっと怒りをこらえた。


「あと、実家に行きたいんだけど、いいすか?」


「いいけど、実家はヤツらにバレてるから、気をつけてくれよ」


「わかりやした。美香、ちょっと運転頼むやで」


「わかったわ」


 ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ―


 都内某所『いっくん投資セミナー』PM.18:41


「あんたが、絶対儲かると言うから買ったんだ!」


「そうよ、そうよ」


「そうだ、詐欺グループ金返せ」


 集まった40人ぐらいの人たちは、全員ひとりの男に罵声を浴びせる。


「皆さん、落ち着いて、落ち着いて。儲け話というのは、どれも山あり谷ありなんですから」


 ちょっと投資のプロには見えない、茶髪ロン毛にサングラスの風貌の男が、怒り狂う集団をたしなめる。


「ふざけるな!全部谷じゃないか」


「そうだ」


「そうだ」


「詐欺で訴えるぞ」


 チャラ男は罵声を浴びせるセミナー客に、やれやれという感じを出しながらアタッシュケースを取り出した。


「何よそれ!」


「これが約束どおり、今からあなたたちに送る、素晴らしい夢の力です!」


 チャラ男は勢いよく机の上に立ち上がり叫ぶ。そしてケースを開け、中からウォンツドライバーを取り出す。腰にドライバーを装着すると、いつものように2枚のライドライバーカードをセットして、レバーを押した。


「イバター!ビカル!相手を騙し激しく燃え上がるファイアーライバーコラボ!スキャムマン!ファイアーコラボ」


 チャラ男は、魔法使いのような見た目に、体の右半身が赤色、左半身が金色のツートンカラーのなんとも言えない見た目の怪物に変身した。


「ウワー!!」


「ひぃー助けてくれ」


 突然、目の前に異形の怪物が現れて、先ほどまでの罵声が悲鳴に変わる。


「さぁ、受けとれ、愚かな人々よ」


 スキャムマンは笑いながらそう言うと、アップロードスロットにビカルのカードを挿入した。


「ファントムアップロードブレイク!」


「あれ、何この大金は?」


「どういうことだ」


「こんなに儲けが出てるなら早く言っくれよ」


 セミナー客たちは一斉に幻覚にかかってしまい、何もない床に見たこともない大金が積まれているような幻を見ている。そして客たちは一斉に歓喜の声を上げて喜ぶ。中にはありがとうと言って、スキャムマンに握手を求める者まで現れる。


「ふふ。言ったでしょう、山あり谷ありだって。でも、山があるのは、私だけですけどね」


 ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ―


 大阪府貝塚市『貝塚公務員宿舎』PM.17:52


「あった、あった。免許と我が愛車のカギ」


「わざわざ来るとか、そんなに運転がしたいの?しかし散らかってるわね。きっと必死に、あの暴力男に抵抗したんだろう。許せない」


 悲惨な事件が起きた痕跡を残す、物が散らかったリビングを見て、美香はドメスティックマンの蛮行を思い出し、怒りに震えた。


「いや美香の運転トロくてさ、しんどいから自分で運転したかったんだよね」


「少し気遣いてモノを知らないの、あなたは」


 相変わらず自分中心で、家族のことを心配しない裕二に、美香はさらにストレスを溜め込んだ。そんな美香のことはお構い無しの裕二は、床に落ちていたチラシを拾いあげた。


「ん、(確実に儲かる!いっくんの投資セミナー)やと?これはすごいかもしれない!よし、さっそく行こう」


「胡散臭いわよ、それ」


「チャレンジしなければ、大きな成果は得られんやで」


 美香は明らかに、胡散臭い投資話に感心する裕二にあきれた。だが、チラっと見えた広告に載ってる顔を見て驚いた。


「待って、この人……ウォンツの石橋じゃない?ほら、前に私が言ってた、ウォンツドライバーの開発リーダー」


「なんやと?ということは、ウォンツは投資セミナーもやってるんか。はえー幅広くいろいろやってる会社やな」


「そうじゃないでしょうが!このセミナーに乗り込んで、石橋を捕まえるのよ」


「お、俺も今、そう考えてたところやで」


 あまりにもボケてる裕二に、クールな美香が珍しくつっこんだ。そして新たな戦いが始まろうとしたいた。


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[良い点] シバターとヒカルのコラボは流石に笑う
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