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ウォンツマンZERO  作者: ビヨンド裕P
モグラ激闘録② 戦闘
16/20

第14話 約束

ついに始まった、ブラックナイトマンとの戦い。美香との約束を果たすため、裕二は己を奮い立たせて戦う。

 東京『警視庁六本木東署』PM.22:48


 危ないヤツらは静かに、にらみ合う。沈黙を破って裕二が話しかける。


「お前、俺のファンなんだろう?なら、憧れの人の言うこと聞けよな。今ここで警察に自首しろ。こんだけ人やって、確実に死刑やろ。諦めろ」


 裕二は疲れで戦うのがしんどいので、黒騎士を説得し始めた。しかし力に溺れた男が、そんな説得を聞くわけがなかった。持っていた剣を振り上げ、無言で裕二に突っ込んでくる。


 ガキン!


 黒騎士の振り回す剣を、右の鉤爪で受け止める。すかさず裕二は左の鉤爪で攻撃する。黒騎士は盾で防ぐと、右足で裕二の右脇腹を思い切り蹴った。裕二はそのまま吹っ飛び、壁に打ち付けられた。


「ぐっは!」


「ファンだからこそ、俺の全てを、知ってもらいたいんだろ。それがファン心理ってもんだぜ」


 そう言うと、倒れこむ裕二に剣を振り下ろす。それも何度も執拗に、裕二の体に剣を叩きこむ。もはや剣で斬るというよりは、棒で殴っているようだった。


「痛めつけたら、絶対に俺のこと忘れないでしょ?だから、あんたを徹底的に痛めつけるんだ。そして死ぬまで、俺のことを、覚えていてもらうんだ!」


「ぐっ…ざけんなよ」


 裕二は必死に立ち上がると、両手の鉤爪をブンブンと振り回した。黒騎士は後ろに下がって攻撃をかわす。


「いいねぇ…あんたのヘイト、すごく高まっているよ…」


「パワーが違いすぎる。ならこれだ」


 敵との距離ができたため、裕二はオーバーグラスを外し、モグレーザーを放つ。


「ビィィィィ――――ン!!」


 黒騎士はこれを瞬時に盾で防ぐ。一点集中の強力なレーザーも、分厚い盾を貫くことは出来なかった。黒騎士はそのまま、とぅーふさんのカードをアップロードスロットに挿入した。


「ヘイトアップロードブレイク!」


 アビリティの発動と共に、裕二の心が段々とイライラが募ってきた。そして、それは憎しみの感情へと変わり、我を忘れて黒騎士に突っ込み、右手の鉤爪で攻撃した。


 ガンッ!


 ――しまった!――


 敵に感情を囚われた裕二は、せっかく取った間合いを、自ら縮めてしまった。黒騎士は盾で平然と防ぐと、今度はスロットにゆゆおたのカードを挿入した。


「エモーションアップロードブレイク!」


 剣先に灰色のエネルギーオーラが溜まる。黒騎士はそれを片手で思い切り振り上げ、目の前にいた裕二を頭の上から、真っ二つに斬りつけた。


「ズザァァァ―――――ァァン!!」


「ウワワ――――――!!」


 体の真ん中を斬られた裕二から、ブシャーと血が吹き出した。


「ふつくしい……鮮血が吹き出す瞬間が、何よりもエモい……」


 黒騎士は目の前の光景に興奮して、床をバンバンと足踏みして鳴らした。裕二はその場で足から崩れ落ちて倒れ込んだ。


「モグラ男!」


 八雲が上の穴から倒れた裕二を、大声で呼び掛ける。しかし、ピクピクと指先を動かすだけで裕二は反応しなかった。



 ――――――――――――――――――――――――――――――



 その頃、美香は署の入口に、血まみれで倒れる黒間の元に戻っていた。


「黒間さん!!しっかりしてください」


 美香は必死に黒間を呼び掛ける。黒間は呼び掛けに反応して意識を取り戻したような演技をした。


「……美香くん?」


「よかった…生きてた、生きてた」


 黒間は右手を、涙ぐむ美香の頬に添える。美香は黒間の手を優しく握った。


「すまない、もう少し…頑張ってアイツを引き付けたかったんだけどね…」


「何言っているんですか!黒間さんのおかげで、裕二さんが、アレと戦えているんですよ」


「そうか。美香くん、僕はいいから、裕二くんのところに行ってくれ…」


 黒間は美香の手をそっと払うと、裕二の元に行くように促す。


「でも、黒間さん置いていけないですよ」


「僕はいいから、早く行くんだ。あと、裕二くんに、伝言を伝えてほしい」


 黒間は美香に、伝言を耳打ちして伝えた。美香はうんうんと頷いて聞いた。


「…わかりました。ここに来る途中、救急車を呼んだので、来るまで持ちこたえてくださいね」


「わかった。伝言、頼むよ」


「ハイ!」


 黒間は裕二の元へ向かうため、走り去って行く美香を見送る。そして美香の姿が見えなくなると、何事もなかったかのように立ち上がった。


 ――裕二くん、キミには期待しているよ――


 黒間は裕二の何かに、期待をよせると、警察署を後にして闇夜に消えた。



 ―――――――――――――――――――――――――――――――



「おい死ぬな――――――!!しっかりしろ――ウォンツマン!!死ぬな――――――!!」


 死ぬなと言いつつ、黒騎士は裕二の体を何度も剣で斬りつける。床一面に、流れ出た裕二の血が溜まっていく。


「アイツ、サイコパスかよ…てか、俺は何も出来ないのか…」


 八雲が目の前の残酷な光景を見て、思わず呟く。そして何も出来ない自分を情けなく思い、力を込めて拳をグッと握る。


「さてと、お仕事しないとな。でっ仕事何だっけ?」


 黒騎士がとぼけると、岩田が脳内に指示を出してきた。


「前川裕二さんの確保でしょう。ようやく声が届きましたね」


 黒騎士は岩田の指示を聞くと、剣をその場に置き裕二の体を肩に担ぎ上げた。


「モグラ男、目を覚ませよ!こんなところで、くたばるんじゃねーよ!」


 八雲は必死に裕二を呼びかける。だがやはり、裕二に反応ない。


 黒騎士は裕二を担ぎながら、壁を破壊し穴を開けながら前に進む。その後、二階の床に穴を開けると、そこから一階に飛び降りた。飛び降りるとまた、壁を破壊して穴を開けると、そこから外に出た。


「ウオオオオ――――――――――!!」


 夜の街に勝利を確信した、危ない男の叫び声が遠くまで響いた。


 そこに美香が到着した。美香は裕二に大声で呼びかける。


「前川さん!!起きてくださいよ!このまま私とヤらずに、童貞で死ぬんですか?力に選ばれたんでしょ、ならここで証明してくださいよ!!」


「そこの嬢ちゃんの言うとおりだ!モグラ男、立てよ!男なら、愛した女にいいところ見せやがれ!」


 美香と八雲は裕二を目覚めることを信じて、必死に叫んだ。


「ムリムリ、コイツはもう戦えないぜ。だって死んだんだからよ」


 黒騎士は肩に担いでいた裕二を、思い切り前方に投げた。


「ドガッ!バリン」


 投げられた裕二の体が、駐車場に停めてあった車のフロントガラスに叩きつけられた。車のガラスにはヒビが入った。


「前川さん!立って!」


「立て!モグラ男」


 黒騎士のことを無視して、なお2人は必死に呼びかける。すると、それに応えるように裕二が反応し、フラフラしながら立ち上がった。


「美香…」


 立ち上がった裕二がそっと呟く。


「どうしたの?前川さん」


 美香が裕二に問いかける。


「何、生きてたいるだと?バカな」


 黒騎士は、動くはずがないと思い込んでいた裕二が立ち上がったことに驚いた。


「美香、お前は…、お前は処女かぁぁ――――――」


 裕二は美香に、大声でセクハラ質問すると、ビカルのカードをスロットに挿入した。


「ファントムアップロードブレイク!」


 次の瞬間、裕二の姿が消えた。


「何、どこへ行った?」


 黒騎士が辺りを見渡すと、背後から裕二の姿が現れる。黒騎士は持っていた盾で、裕二の姿を殴ろうとしたが、裕二の姿はすぐに消えた。


「くっ幻か、本物はどこだ!」


「パワハラアップロードブレイク!」


「くらえ、処女膜貫通手マ〇クラッシュ!」


 黒騎士の頭上から突然現れた裕二は、マウントを取ることで威力を高めるアビリティを発動し、落下しながら右鉤爪を黒騎士の頭に突き立てた。


「ガキンッ!!バキン」


「ぐわー!!」


 敵の鎧兜は落下の勢いとマウンティングで高まった鉤爪攻撃を、防ぐことが出来ず割れた。そして爪が脳天に刺さった黒騎士は、頭から血を流してうずくまった


「どうだ?まるで鎧のように、ガードの固い女子のバージンを突き破るかのような、俺のゴッドハンドテクは!美香、俺は童貞でも、テクニックのある童貞だ!」


 裕二は童貞だったが、素直に認めるのは嫌だったので少し見栄を張った。ニートだが、謎にプライドが高いのが前川裕二という男だ。


「何よこれ…」


 しょうもない攻撃をドヤ顔でする裕二を見て、美香は心配して損したと、心の底から思った。


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