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ウォンツマンZERO  作者: ビヨンド裕P
モグラ激闘録② 戦闘
14/20

第12話 凸撃

激闘の末、スキャムマンを倒した裕二。しかし、警察に連行されてしまう。果たして裕二はどうなるのか?

 東京 某所


「サトシ、チップの教育が完了したよ。彼の名前はどうする?」


 長身の男が岩田に話しかける。隣には、岩田に拉致された迷惑ライバーの男が、拘束されて椅子に座っている。


「そうだね、そのままブラックナイトマンでいい。彼の『凸進の因子(とっしんのいんし)』には期待してるんだ。斎藤くんと石橋くんの分まで、大いに働いてもらうよ」


「お前、いつもネーミングセンス直球だな。まぁ、判別できればいいか」


 岩田と男は、仲良くハハハと笑いあった。そして拘束されてた男が目を覚ました。


「岩田社長……命令はあるのか?」


「黒岸勇太くん。キミは今日からウォンツ正社員だ、おめでとう。我々のために必ず、前川裕二くんを連れてきてくれ。ハイ、バッチリ」


「おいおい、俺はウォンツマンの一番のファンだぜ。彼のことはよーくわかる。社長、バッチリ任せとけよ。ウオオオオオ――――――――ンツマン!!待ってろよー!」


 拘束を解除された黒岸は、雄叫びをあげながら猛ダッシュでその場を後にした。


「彼、すごく威勢いいな。頭は悪そうだけど、勢いでワンチャン、やってくれるかもな」


「フフッ頭が悪い人間なんて、この世にはいません。ただ、物事をよく知らない人のことを、そう呼ぶだけ。知らないから恐れない。恐れないから、自分を制限しない。制限をしないから、全力で全てを壊せる。彼は最高の爆弾ですよ」


 岩田はそう言うとニヤニヤしながら、男にバッチリポーズをした。


「それなら、ボ〇バーマンのがよかったかもな。じゃあサトシ、俺は行くよ。美香くんから、裕二くんが逮捕されたと連絡があってね。ちょっと助けてやらないと」


 男はバイバイと手を振って、この場を離れた。岩田も笑顔で手を振り、男を見送った。


「ボン〇ーマンは、商標登録されているから、アウトだよ、黒間くん」


 ――――――――――――――――――――――――――――


 東京 『警視庁六本木東署』PM.19:48


「まず、あなたの名前、年齢、住所、職業、教えてもらってもいいかな?」


(なんか怖そうな刑事やな。あんまり刺激しない方がよさそうやで、これは)


 強面の男性刑事が裕二に質問する。裕二はちょっと、ビビりながら答え始める。


「前川裕二、30歳。住所は、大阪府貝塚市二色浜3―20-5貝塚公務員宿舎203。職業はフリーランスの音楽家です」


「ふーん、なるほどね。で、早速聞くけど、キミは人間?それとも宇宙人か?」


「正直、俺もわかりません。つい最近までは、普通の人間だったけど。ウォンツのせいで怪物にされました」


 どうせ真実を話しても、この刑事は信じないだろう。裕二はそう思ったが、とりあえず自分の身に行った事実を話してみた。


「正直、信じられないな。けど、キミは怪物の姿になっていたのは事実だ。それに、ウォンツぐらいデカイ会社なら、それくらいのモノ、造れそうだしな」


 意外と話わかるじゃんか。裕二はもしかしたら、無実だとわかってもらい、解放されるかもしれないと、ちょっと心の中で期待をし始めた。


「せやせや。案外、話わかる刑事でよかったやで。あのビル崩壊や火事も、全部ウォンツの仕業。俺は止めようとしたんだで。ちょびっと燃えたけど、街を救ったヒーローなのに、無理やり逮捕はないやろ。もう帰らせてもらうで」


「現場の状況から見て、キミを連行しただけさ。それに、わるいけど、しばらくは留置所に入ってもらう。キミの話は全て確証がないから、もっと聞く必要があるからな」


「ふざけんな!関係ないって言ってるやろ、職権乱用や。弁護士を呼べ、クソ税金ちゅぱちゅぱ野郎が」


 手錠をかけられた裕二は必死に暴れて抵抗したが、周りの警官に取り押さえられた。そして警官達に抱き抱えられて、留置所に入れられてしまった。


 あとは、妙な機械の鑑識結果待ち。いつまでもアイツの身柄置いとくことは出来ないし、俺が何とかしないとな。


刑事は鑑識課に行こうとした。だが1人の警官が、慌てながら走って刑事の元にやってきた。


「おいどうした?葛城」


「ハアハア……八雲さん、内諜職員を名乗る男女が、あの化物に会わせろと署に来てます」


「内諜って、内閣諜報局だろ。政府機関が一体、何の用だ?」


 政府機関が動くということは、何か裏で、とんでもないことが起きているんだろう。話を聞くため八雲刑事は足早に署の入口に向かった。


 ――――――――――――――――――――――――――


『六本木東署入口』PM.20:14


 黒間と美香が担当が来る間、話し込んでいる。


「ずいぶん、ボロボロだったね美香くん。あと大変なのに悪いね、ブラックナイトチャンネルのこと、調べてもらっちゃって。それで彼、どんなヤツ?」


「いえ、仕事ですから。ブラックナイト、本名は黒岸勇太21歳。登録者数15万人がいる、最近話題のライバー。いろいろ話題な人に、ファンを名乗ってアポ無し凸配信を繰り返していた、いわゆる迷惑系ライバーだったようです」


 美香はさっき会った、感じの悪い男について、すでに調べが終わっていた。さすがと、黒間は心の中で美香を称えて拍手する。


「そうか、話聞く限りいいヤツではなさそうだな。おそらく改造ニートにされただろうし、すぐ裕二くんのところに現れるだろう」


 2人がそうこう話をしている時に、八雲刑事がやって来た。


「お待たせしてすいません。担当の八雲優一です。今日はどのような用件で?」


「初めまして、内閣諜報局カウンターインテリジェンスエージェントの黒間映未です。よろしく」


「部下の白鳥美香です」


(長身イケメンにスレンダー美女。国のエリートはやっぱり違うね。しかし最近の役人の肩書きは横文字が多いな)


 八雲は2人のビジュアルの良さをちょっと妬んだ。


「それで、どのようなご用件で?」


「単刀直入に言いますと、前川裕二くんの身柄をこちらに返してほしいんです。彼はすでに、我々の管理下にあります。あなた方に彼を拘束する権利はない、よろしいですね」


 管理下だと?コイツら、あの化物使って一体、何しようとしてるんだ。しかし八雲も、ここで身柄を引き渡すワケにはいかないので、黒間達に説明を求めた。


「彼は、一連の事件の重要参考人です。いくら政府のお偉いさんでも、理由もなくそれは出来ません。どうしてもと言うなれば、あなた方の、目的を教えてくださいよ」


「日本を救う。これしか言えないね美香くん」


「ええ、そうですね」


「おたくら、我々をなめてますか?そんな理由で渡せるわけないでしょう」


 八雲は黒間を睨んだ。こっちは六本木の事件のせいで、大変な思いをしている。なのにコイツらは、何も話そうとせず、化物使って何かをしようとしてる。八雲は秘密主義の役人に段々とイライラしてきた。


「ブオオ――――オン!」


「そこの車、止まりなさい!!」


「皆さん避けて!!」


 3人が話ている時、突然、1台の車が猛スピードで署に突っ込んで来た。


「ガッシャーン!!」


「キャ――――――――!」


 驚きの出来事に周りが悲鳴をあげた。暴走車は入口のガラスを突き破り、署内に侵入して停止した。そして車の中から、見覚えのある男が出てきた。


「ウォ―――――ンツマンさん、一番のファンが助けに来ました―――。大丈夫、寂しくない!俺がいる――――」


 大声で奇声を発しながら、車から現れたのは黒岸だった。


「黒岸勇太、やはり来たわね」


「……早いな来るのが」


 黒間は小声で呟き、近くの物陰に隠れた。そして、大勢の警官たちが、一斉に黒岸に銃を向けて取り囲む。


「動くな、止まれ」


「おとなしくしろ。さもなければ、射つぞ」


「なんだ?俺のアンチのホ〇ガキか。まあいいか、そうだコレ使おう。実戦でこそ、兵器の使い処だぜ」


 黒岸は着ていた服のポケットから、ライドライバーカードとウォンツドライバーを取り出して、腰に装着してカードをセットした。


「とぅーふ!ゆゆおた!全ての憎しみを集めて力に変えるヘイトライバーコラボ!ブラックナイトマン!エモーションコラボ」


 またなんとも言えない音声の後、剣と盾を持つちょっとカッコいい、黒い騎士が現れた。


「これが因子の力、素晴らしい…体中に力がみなぎる。はぁ、気持ちいい……。よし行くぞ〇モガキ共、ウオオオオオー派手に暴れるぜ――――!!ウォンツマ――――ン!!何処にいますかー」


「かまわない射てー!」


 八雲の掛け声と共に、警官たちは黒騎士に向かって一斉に発泡した。


「バン、バン、バン!」


「バン、バン、バン!」


 何発もの銃弾が命中した。しかし、黒騎士には全く効かなかった。


「俺の使うライバーの力は、憎しみ(ヘイト)を向けられるほど強くなるのさ。つまり、俺の能力は、ヘイトを力に変えて、歯向かうアンチを叩き潰すってことだ」


 黒騎士はとぅーふさんのカードを、アップロードスロットに挿入した。


「ヘイトアップロードブレイク!」


「この、化物が――――!」


「くたばれー」


「死ねー!」


 カードの力が発動すると、なぜか警官たちは、ヘイト感情を増し、黒騎士に何発も銃弾を発泡する。


「よせ、無駄なことはやめろ!何かおかしい」


 たまたま敵から距離があったため、正気を保っていた八雲は警官たちを必死に止めるが、警官たちの発泡は止まらない。


「ハッハッハ、いいねー素晴らしいヘイトだよ。憎しみこそ、一番真っ直ぐな感情。ダイレクトに最高のパワーに変えられる。説明したところで、高速エネルギー変換!」


 黒騎士は笑いながら今度はゆゆおたのカードをスロットに挿入した。


「エモーションアップロードブレイク!」


 黒騎士に向けられたヘイトが、灰色のオーラとなって、剣先に集まる。


「まずい逃げろ!」


「しゃー!!オラ!死ね」


 八雲の呼び掛けも間に合わず、黒騎士の剣から放たれたオーラの斬撃波が警官たちの体を切り裂いた。


「うわ―――!!」


「ギャ―――――!!」


 周りの警官たちは斬撃波に体を切られて、大量の血が吹き出している。一瞬で警察署内が、血溜まりの海へと変わってしまった。


「いいね!こりゃ、血の噴水だね。芸術だよ、こんなに気持ちいいことないぜ」


 黒騎士は、今まで感じたことのない快楽を、全身で感じて悦に入っていた。そして目につく人やモノを剣で切り始めた。


「おい、前川裕二なら、あの化物止められるのか?」


 受付の下に隠れていた、黒間と美香に、同僚の血を浴びて赤く染まる八雲が聞いてきた。


「もちろん、私が敵の気を引くから、美香くんその隙に急いで裕二くんとドライバー探して、ここに連れてくるんだ。時間がない行くぞ」


「俺が案内する、こっちだ」


「くっ…わかりました。気をつけてくださいよ、黒間さん」


 黒間が敵の気を引くために、立ち上がったと同時に、美香と八雲は駆け足で裕二の所へと向かった。黒騎士は2人を追わず、黒間の方を見る。


「最高の気分ですよ、黒間さぁん」


「少し派手にやりすぎだ勇太くん。俺たちが裕二くんを、外に連れて来てからやって来いと言っただろ」


 黒間は、美香たちが行ったところを確認すると、黒騎士に話かけ始めた。


「とりあえず、作戦変更。俺は勇太くんに斬られて、意識失ったことにする。勇太くんはこの後、裕二くんと戦う。そんで、生きてサトシのところに連れていくんだ。わかったか?」


「ハイ、バッチリ」


「ほんとかー?」


 作戦の確認をすると、黒間は、黒騎士の持っていた剣で、着ているスーツをズタズタに切ると、体にキズをいれた。そして床に流れていた警官の血を全身に塗りたくると、そのまま倒れこんだ。


「早く来―――――い、ウォンツマン!!」


 黒間が倒れた後、黒騎士は大声をあげながら裕二を探し始めた。静かになった警察署内に、危ない男の声が大きく響いている。


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