第11話 炎魔
スキャムマンの産み出す幻に惑わされて、焼きモグラにされ、屋上から落下した裕二。果たして生きているのか?
「死体の確認をしないと…あれ、いないんだが」
スキャムマンは裕二がどうなったか、屋上から身を乗り出し、約100メートル下を確認するが、姿は見つけられなかった。
ドゴンッ!ドゴンッ!ドゴンッ!
何やら下から鈍い音が鳴り響き、ぐらぐらとビルが揺れている。
「何だ、地震か?」
スキャムマンが原因不明の揺れに気づいた、次の瞬間、足元がものすごく揺れ、なんとビルが崩壊し始めた。
ズドン!ガガガーガガガーガラガラッガラガラ!!
「うわ――――――――――!!」
屋上にいたスキャムマンは一瞬で崩壊したビルに、巻き込まれてしまい、瓦礫の下敷きになってしまった。地面に瓦礫ごと打ち付けられた後、なんとか瓦礫をかき分け、地上に姿を表した時、ガシッと何かに腕を持ち上げられ空中で磔の状態にされた。
「なんなんだよ、これはー」
「やっと本体を捕まえたぜ、、あのデカイビルを、ぶっ壊すの、大変だったんだからな」
(六本木タワーを壊しただと?てか、なぜ、あのモグラ男は普通に生きている?)
実は裕二は落下中に、マポトのセフレゴーストのことを、思い出してカードを使用した。都合のいい女はできる女たちで、裕二のことをしっかり支え、地面への激突を防いだのだ。
一方、そんなことは知らないので、状況を把握出来ず、マポトのセフレゴーストに四肢を掴まれ、宙に浮くスキャムマン。いい様だと言いたげな裕二は、ドヤりながらTKQ朴のカードを相手に見せつけ、スロットに挿入した。
「パワハラアップロードブレイク!」
「そいつらは、幽霊だけど、オーラが実態化しているから人やモノを掴めるんや。そしてパワハラは、相手よりも優位に立つと攻撃力が上がるんやで」
裕二はグッと右脚に力を込めると、黒いオーラが右脚に纏わりつく。そして、ひねり回転を加えたジャンプをして、敵の腹に思いっきり足蹴りを叩き込んだ。
「くらえ、ラ〇ダーキック!!」
「どはーー!!」
裕二の蹴りを受けた、スキャムマンは勢いよく吹っ飛び、後ろのビルに体を激しく打ち付けられた。ぶつかった衝撃で、敵が突っ込んだビルの壁には、大きな穴が空いている。
「なんと、まさかその力でタワーを破壊し、私を巻き込むことで、本体を引きずり出したと言うのですか……」
立ち上がり、なんとか歩いてきたスキャムマンが、裕二に問いかける。
「あーそうさ。言ったろ、壊すの大変だったて」
「なるほど。しかしビルには、大勢の人間がいましたよ…あなたも立派なテロリストですね」
「知るかよ。全部、お前のせいだろ。俺は悪くない。悪いのは、戦いに巻き込んだお前だろ。これは、その結果でしかないで」
ニート特有の責任逃れ理論で、裕二は大勢の犠牲が出た全責任を敵に押し付けた。
「あなたねぇ、周りの人間が、あなたがタワー破壊したのを見てたでしょう。そんな理屈通りますか」
「俺はお前に、操られていた。俺の意思ではやってない」
「あなたに幻は見せたけど、操ってはないだろ!改造ニートの脳内チップに、私の幻は通用しないんだよ!」
敵に何を言われても、裕二は動じなかった。さすが高校卒業後、働けと10年以上親に言われても、気にせず実家に寄生し続けた男だ。他人の言うことなど、全く聞く気はないのだ。
そうこうしているうちに、大勢の人がタワー崩壊直後から集まってきていた。そして2人の危険人物に、非難の声を浴びせ始める。
「ふざけるな化物!」
「なんてことしやがるんだ!」
「2人ともくたばれ!」
スキャムマンはやれやれといった態度で、2枚のカードを同時にスロットに挿入した。
「周りのコバエも、そしてあなたも、もう目障りですね。私はねぇ、計画が自分の思い通りにいかないのが、一番ムカつくんだよ!!」
「ファイアーコラボアップロード!バズルフィーバー!!」
「もう全員、焼け死ね―――!!フレイムイリュージョン!!」
スキャムマンの周りの赤いオーラが、どんどん真っ赤な炎に変わり、巨大な火の鳥の姿になった。そして勢いよく持っている杖を、裕二に向けて振り下ろした。巨大な火の鳥は、猛スピードで真っ直ぐに、裕二の方向に飛んできた。周囲にいた人たちは、一斉に逃げ始める。
「なんだよこれ、ふざけんな!!」
裕二は右側に素早く避けてかわした。しかし鳥はすぐ方向転換すると、再び裕二に襲いかかってきた。
「マジかよ、また来た。どうなってやがる」
「ハッハッハーこれこそ、全てを焼き尽くし、灰にする、幻想的なイリュージョン!そして私は意のままに操れるのだ!」
スキャムマンは逃げ回る裕二のいる方向に、杖を向け自由自在に、巨大な火の鳥を操って攻撃してくる。そんな中、何やら人影が猛スピードで、敵に向かって走ってきた。
「でも、その杖なかったら、鳥は操れないはずよね」
スキャムマンの後ろから、なんと美香が現れて、一瞬の隙をついて敵の持っていた杖を奪った。
「何、しまった!」
「前川さん!」
美香は敵から奪った杖を、裕二の方向に投げ渡した。裕二は投げられた杖をしっかりキャッチした。そしてピカキンのカードを、スロットに挿入する。
「お前、バカだろ。さっきといい、今といい、ちょっと上手くいくと調子にのって、周りが見えなくなる。だから手痛いのもらうねん」
「黙れ、黙れ、俺はカリスマなんだ。俺の言動、産み出すモノこそが真実なんだー!」
自分よりも知能が低そうな裕二に、内面を見透かされたことに、さっきまで、余裕の態度を見せていたスキャムマンは動揺した。
「シャイニングアップロードブレイク!」
「美香――!!全力で逃げろよ、焼け死にたくなかったらな」
裕二はピカキンの力で、とんでもなくまぶしい光を発光させた。
「うわ、ぐっくっ、まぶしいー!」
あまりのまぶしさに、その場でスキャムマンは、右腕で思わず顔を覆った。一方、美香はいつものように、尋常じゃないスピードでどこかへ逃げ出した。
「くらえ前川流、火の鳥アタック!」
裕二は持っていた杖を、敵の方向に向け、火の鳥をスキャムマンに直撃させた。直撃した火の鳥は大爆発を起こして、周囲を火の海に変えた。
「ズド―――――――――――――――ン!!!!」
「アア―――――!!!、こんなに炎は熱いのか――――!!」
もろに自分の必殺技をくらい、スキャムマンは本当の意味で炎上した。どうやら炎を自在に操れても、体はしっかり燃えるようだ。
「よかったな、最後に自分の炎の熱さを知れて。そして、これで終わりだ!」
裕二は持っていた杖をへし折ると、シャムのカードもスロットに挿入する。
「オールジャンルアップロード!バズルフィーバー!!」
「切り裂け、ダブルウームスラッシャー!!」
いつもの一撃が、スキャムマンを完全に真っ二つに引き裂いた。
「ズバ――――――――ン!」
「ウギャ―――――――――――――――!!」
スキャムマンは、自分で撒いた火種が原因で、最後は断末魔と共に盛大に爆発炎上して散った。
「いい歳して、火遊びするから、こうなるんだよクソダサ詐欺師が」
戦いを終えて、裕二がドライバーからカードを抜き、フュージョンコラボを解除した。すると、何者から腕を掴まれ、ガチャっと両手に手錠をはめられた。
「えっと……何や、これ?」
「キミに聞きたいことがある。署まで来てもらおうか」
「えっ、え――――――!!」
裕二は気づかなかったが、いつの間にか、大勢のパトカーや機動隊に囲まれていた。そして美香の姿も見えなかった。
(派手に人の多い都会で、暴れまわったから仕方ないか。てか、これからどうすりゃいいだよ。無職で前科者とか人生詰みだぞ)
スキャムマンとの戦いで、六本木タワーは崩壊した。あちこちで炎の煙が上がっており、大勢の消防隊が消火活動にあたる。裕二は周りの景色を見て、自分のしたことの重大さにやっと気づいた。