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ウォンツマンZERO  作者: ビヨンド裕P
モグラ激闘録② 戦闘
12/20

第10話 幻影

罠にかかりながらも裕二はスキャムマンの元にたどり着く。そして改造ニート同士の新たな戦いが、始まろうとしていた。

 先手必勝。ここは先に一発かまして、余裕こいてるツートン詐欺師の出鼻をくじいてやる。何、どんなヤバい力を使おうが、とんでも回復と謎レーザーがあれば余裕よ。裕二は前方の敵に向かって一直線に突進した。


「くたばれ、ツートン詐欺師!はぁ―――――!!」


 目の前に立つスキャムマンに、裕二は右手の鉤爪を思いっきり振り回した。しかし攻撃は空振りしてしまい、目の前のいたはずの敵は炎となって消えた。


「何?消えた…だと」


 攻撃は完璧に捉えたと思った。しかしどうやら俺が見ていたヤツは、炎で作り出した幻だったようだ。クソ、本物はどこにいるんだ?


「あれれー?攻撃、当たらなかったね残念。次は当たるかなー?」


 スキャムマンは裕二の後ろに突然現れて煽ってきた。


「クソ後ろか、ざけんな堂々と戦えよ!」


 裕二はすぐに後ろを振り返り鉤爪で攻撃するも、また敵に攻撃は当たらなかった。そして今度は、裕二の手が届かない距離に姿が現れた。


「今戦ってるでしょう。まぁ、今あなたの前にいる、この私も本物の私とは限りませんけどね。フッフッフ」


「だが、逃げてるだけじゃ俺は倒せないだろ。お前の張った罠で受けたダメージもすでに治った。本体見つけて、すぐに終わらせてやるよ」


「フフ、なら、攻撃といきましょうかね」


 スキャムマンはアップロードスロットにビカルのカードを挿入した。そしてすぐにカードを抜いてイバターのカードも挿入した。


「ファントムアップロードブレイク!」


「フレイムアップロードブレイク!」


 2枚のライバーの力をアップロードしたスキャムマンの前に、なんと安全な場所に避難させたはずの美香が現れた。


「美香、どうしてここにいるんだ?避難したはずじゃ…」


「さぁ、なぜでしょうね。敵の前にいきなり現れるなんて、とても危険じゃないですか?あなたの連れの女」


 スキャムマンは持っていた長い杖から、美香に向けて火球を放った。


「あぶね!美香」


 裕二は急いで前方にジャンプし、美香の前に立ち敵の攻撃から庇った。だが、敵の放った火球は裕二の腹に直撃して爆発した。


「うっぐはっ!!あっつ!」


 裕二は爆発の勢いで吹っ飛ばされて、後ろにあった屋上の柵に激突した。柵はグニャリと曲がったが、裕二の体を受け止めたので下に落ちずにすんだ。


「うッ…クッあぶね、落ちるところだった。美香、大丈夫か…」


「ほらほら、次行くぞ。守ってやらないとお前の女が焼け死ぬぞ」


 スキャムマンはまた、火球を美香に向けて放った。しかも今度は二発。生身の人間が受けたら確実に焼け死ぬ。


 またかよ、てか美香もボーっとしてないで、この場から全力で逃げろよな。裕二は何かおかしいと思いながらも、すぐに立ち上がり二発の火球を体で受け止め美香を助けた。今度は直撃した火球は爆発せず、その場で激しく燃え上がり裕二の体を燃やした。


「ぐわ――――――――熱い!!美香、早くなんとかしてくれ――――」


「ハッハッハ、まだ気づかないのかよ。その女、俺が作った幻だぜ。すぐに騙されてくれるから、幻の作りがいがあるってもんだぜ」


 スキャムマンは高らかに笑うと、作り出した美香の幻を消した。そして火だるまになっている裕二の足元にまた火球をぶつけた。


「バ――――――――――――ン!!」


 足元が爆発して、裕二はまた吹っ飛ばされた。今度は柵を越えて、地上約100メートルのタワーの屋上から真っ逆さまに落っこちた。


「うわ―――――――!!」


 屋上から落ちた、裕二の悲鳴があたりに鳴り響いた。


「ヤバい、焼きモグラを勢いあまって、下に落としてしまったー死んだらどうしよう!社長に殺されるぞ」


 スキャムマンは自分の失態に気付き頭を抱えた。まさかこれ程までに作戦が上手くいくとは思わず、調子に乗ってやりすぎたことを後悔した。


 ―――――――――――――――――――――――――――――――


 一方、同時刻の地上では・・・・


「ウーウーウー」


「ピーポーピーポー」


 サイレンが鳴り響いてたくさんの消防車や救急車が現場に到着していた。


「急いで、重傷者から運ぶんだ!」


「水、熱い……助けて…」


「助け……」


 先ほどのスキャムマンの炎で、やけどを負った数十人が横になって手当てを受けていた。火事になったスターボッタカフェが入るビルは、消防士が懸命に消化活動にあたっていた。


 ひどい…前川さんはどうなったのかな?それにしても、私は何も出来ないのね……ホント、無力。


 美香は苦しんでいる人たちに何も出来ないこと、そしてこのような大惨事を起こした外道に、手出し出来ない自分の無力さを痛感していた。


「おっと、ごめんよ」


「あっすみません」


 呆然と立ち尽くす美香に、カメラを持ちながら独り言を話している男がぶつかってきた。


「皆さん、見えますか?現場ヤバいことになってますよ。あっ火がすごい燃えてる!これも大阪で泉南リンクモール消し飛ばした、怪人モグラ男の仕業なんでしょうか?」


「ちょっと何撮ってるの?やめなさいよ」


 美香はぶつかってきた怪しい男に注意する。


「すいません、今、ビーチューブの生配信中なんで、邪魔しないでもらえますか?」


「こんな時に、何してるのよ。作業の邪魔をするのはやめなさい」


「うるせーよ、バカまんさん!」


 美香は無理やり男の撮影を止めようとした。男は生配信の邪魔をする美香に、抵抗をして後ろに突き飛ばした。


「きゃっ!」


「いやなんかさ、正義まんさんが邪魔してきてウケるんですけど。てか、俺のこと知らないの?世の中の真実を伝える生配信ライバー、ブラックナイトチャンネルなんですけど」


「知らないわよ、そんなチャンネル。だいたい何が真実を伝えるよ!野次馬根性で茶化してるだけじゃない」


「違うね。俺は真実を伝えてるんだよ。今、世間で一番の注目は怪人モグラ男。それが六本木に現れて、こんな事件を起こした。最高のネタじゃねーか」


 美香は迷惑ライバーの言うことを聞いて驚いた。泉南での一件がニュースになったのを知ってはいた。しかし内諜が情報統制をしいたから、泉南の事件にウォンツマンが絡んだことを、一般人が知ってるはずがないのだ。


「どうしてあなたが、モグラ男を知ってるのよ」


「あんた何、知らんの?誰かがSNSにあげたんだよ。デカイ熊とモグラ男が戦ってる動画をな。それに、さっきも駅でロボットとやりあってただろ。わかったら邪魔すんなや。てかちょっと美人なのがムカつくから殴るわ」


 理不尽で意味不明な理由で男は美香を殴ろうとして、右の拳を振り上げた。


 パシッ


「あん?今度は誰よ」


「レディには優しくしないとね」


「あなたは!」


 美香を殴ろうとした男の腕を止めたのは、あの岩田サトシだった。


「放せやオッサン」


「ちょっと来てもらうよ。パワーストーンが、キミの持つ因子に反応してるんだ。おめでとう、これでキミも、ハイ、バッチリな存在になれるよ」


「なんなんだよ、それ意味わかんねーよ」


 岩田は暴れる男の腕を、掴んだまま引っ張っていき、待たせていた黒いワンボックスカーの後部座席に男を無理やり押し込んだ。誰がどう見ても男はウォンツに拉致されている。


「待って、岩田社長。その男をどうするの?」


 美香は岩田を呼び止めるが、岩田は男の身動きを完全に封じると美香を無視して車に乗り込んだ。


「待ちなさいよ岩田ー!答えなさい」


 美香は走り去る車に叫んだ。岩田は何をしようとしているのか?美香は追いかけて真相を聞き出したかったが、走り出した車に追い付けるわけがなかった。


「因子に反応?まさか、新しい改造ニートをつくる気なの」


美香はいろいろな不安を抱えながら、裕二の様子を見に六本木タワーに向かった。 


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