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鐘楼の白い鳩が飛ぶとき (When the white dove in the bell tower flies)  作者: 湖灯
*****テロとの戦い(Fight terrorism)*****
87/301

【立て籠もり犯との対決④(Confrontation with a standing-up criminal)】

 サプレッサーを装着したSSIG-P320を構えて、誰も居ない通路を奥に進むモンタナとフランソワ。

 お互いが交互に位置を変え、サポートし合いながら慎重に前に進む。

 偵察の際に赤外線で確認した数は5つ。

 配置も両側の出入り口に2人ずつと、中間点に1人と言う事は分っているが、今も同じだとは限らない。

 予定通りなら、この真ん中のドアの向こうに1人居るはず。

 だが、何故か話し声が聞こえる。

 何を言っているのかはロシア語なので分からないが、どうやら携帯が使えないと言っているようで、会話の中にしきりに携帯メーカーの名前が出ていた。

“2人”

 モンタナが指でフランソワに、誰がどっちの敵を倒すのか確認の合図を送る。

 ドアの向こうに居るために、敵の姿や位置は見えない。

 予めお互いの意思の疎通を図っておかないと、同じ方向の敵に2人で挑んでしまったり、逆にお互いが交差する位置に居る敵に向かってしまったりしてしまうと、敵に先手を取られてしまう。

 敵の先手とは、この場合銃の発砲となる。

 今の状況で我々の侵入がバレると、市役所に入り込んだナトーたち4人に逃げ場はない。

 モンタナがフランソワにチアッパを用意するように手に持ち、フランソワも同じようにチアッパを持った。

“行くぞ!”

 そしてモンタナが指でフランソワに合図を送る。


 裏を周って西側にある屋上に続く梯子を駆け上る。

 私たちが梯子に取りつくのを確認したニルスが、ドローンを高く上げて屋上に居る見張りの気を引く。

 タタタ。

 ターン、ターン。

 苛立った敵が、ドローンに向けて発砲する。

 私たちが屋上に上がる前に、ドローンが堕とされればThe End。

 見の軽い私は猛然とダッシュして梯子を駆け上る。

 カールはまだ2階を越えた辺り。

 少し遅れている。

 屋上に着くと、丁度5人居る敵が全員ドローンを追って背を向けていたので、素早く物陰に隠れ忍び込むことに成功した。

 ニルスは上手に私の隠れている場所を見つけて、空調設備の間に敵を誘導するように飛行して2人を私の所に届けてくれた。

 2人とも上を向いたままドローンを追うのに夢中で、私の事に気が付かない。

 通り過ぎ際に1人目のミゾオチに肘を入れ、やっと気が付いた2人目には拳銃を握った手でアッパーカットをお見舞いすると、あっという間に2人は倒れた。

 空調機の陰になって、2人が倒れた事は後の3人には分からない。

 ニルスがそのままドローンを東に向かわせると、残った3人はまた私に背を向けたので、一気に走る。

 最後尾の奴には追い抜き際に後ろから、膝の裏側を蹴り上げて抜き際に浮いて少し後ろ寄りになった上半身を更に肘打ちを入れ、丁度柔道の裏投げを投げ捨てた様な体制で沈めた。

 2人目には追い抜き際に後ろから襲う様に腕を取り、そのまま中に潜り込んで一本背負い。

 さすがに2人も倒れれば音もする。

 気が付いて振り向いた最後の男には、回転して裏蹴りを腹に巻き付けるように深く入れて、そのまま“蟹ばさみ”で後ろに倒した。

 遅れて上がって来たカールが、その一部始終を見て驚いていた。

「ひえ~っ、ナトー隊長は狙撃やボインだけじゃなく、格闘技も凄いんですね」

「まっ、まあな」

 カールはオッサンだから仕方ないが、ボインは言わないで欲しかった……。

「ところで、背負い投げで倒したコイツだけKOのダメージが浅いようですが、ひょとしてワザと?」

「ああ、詳しい情報を聞くためだ。戦場で全ての敵を殺したのでは情報は得られないからな」

 答えた後、レシーバーのコールボタンを1回押した。


 2階には西向きの窓がない。

 けれども通りに面した窓は有る。

 だから、ここにも建物の両端に1人ずつ居るはず。

 いなければ儲けものなのだが……。

 そう思いながら歯磨き検査用のミラーで覗くと、案の定両端に1人ずつ居た。

「いいかトーニ、敵に気付かれるまでは出来る限りそーっと音を立てないように進め」

「OKブラーム。でも気付かれたらどうする?銃を使うかナイフを使うか?」

「いや、銃もナイフも駄目だ。気付かれたら思い切って相手に向かって走れ」

「特攻か!?」

「ここから相手までの距離は25m弱。もし半分まで接近できれば残りは12.5mだから、1秒チョットで敵まで届く」

「おいおい1秒も有れば撃たれちまうだろうが」

「普通はな」

「普通はって事は、普通じゃないと言う訳か……分かったぞ、俺様を撃とうとすると、その向こうに居る仲間も撃ってしまいかねないってことだな」

「そう。だから狙いを定めるためにホンの少しだけ時間を要する」

「その間に、敵の懐に飛び込めれば俺たちの勝ちってことだな」

「格闘戦に勝てばな……大丈夫か?」

「あたぼうよ」

「どっちを選ぶ?」

「俺は、どっちでも構わねえぜ」

 そう言いながら、トーニはチョコッと通路を覗いて左右の敵を確認する。

「じゃあ俺は右利きだから、右の奴をやる」

「OK小さい方だな」

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