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鐘楼の白い鳩が飛ぶとき (When the white dove in the bell tower flies)  作者: 湖灯
*****ウクライナの危機(Ukraine crisis)*****
75/301

【ハンムラビ法典②(Code of Hammurabi)】

 音の正体はドローン。

 一体こんな時間に誰が?

 どうやらドローンは窓越しに、俺を探しているらしい。

 探し出して何をするつもりだ?

“!!!”

 気付いて咄嗟にベッドから飛び降りた。

 直後にドーンという爆発音がして、爆風でガラス窓が粉々に吹っ飛んだ。


 病院の前に救急車が到着して、ストレッチャーに乗せられた私は医師と看護師に付き添われて救急車に乗った。

 体中包帯だらけ。

 白い包帯の所々が赤くて、まるでゾンビみたい。

 走り出して直ぐに、救急車はサイレンを止めた。

“死んだのか??”

 でも私はまだ生きている。

 2人の看護師の悲鳴が聞こえたので、見ると恐怖に怯えた顔で前を見つめていた。

「おとなしくしていりゃあ、お前さんたちに危害は加えない。用があるのは、この女だからな」

「この人は、早く次の病院に運ばなくてはなりません」

「重症って事なのか?」

「命が掛かっています」

 金髪の看護師の後に続いて、ブロンドの女医が言った。

 カチャ。

 拳銃を撃つためにスライドさせた音。

「掛かっているのは、あなた方の命ですよ」

「?」

 いつの間にか救急車は渋滞に掛かって止まっていた。

 ドアが開き、銃を持ったハンスたちが中に入ってきて、男たちを拘束した。

「ナトーもういいぞ、お疲れ様」

 ハンスに言われてストレッチャーから起き上がる。

「ふう。こうも包帯でグルグル巻きにされたのでは堪らん」

 私が全身を覆う様に巻いてあった包帯を急いで外し始めると、看護師に扮していたユリアと女医に扮していたエマが驚いた顔で見つめる。

 後ろを通りかかったトーニなどは、足を止めて驚いている。

“一体何??”

 改めて自分の姿を見て見ると、外し掛けて緩んだ包帯の隙間から白い肌が見える。

“もしかして!”

「そう。リアル感出さなくてはと思って、パジャマ外しちゃったの」

 爆風でダメージは受けていたが、いつの間に……。

“ひょっとして!!”

「勿論、下着も邪魔でしょう」

 敵を欺くためのお芝居なのに。と、エマに抗議しようとして立ち上がりかけたとき、緩んだ包帯から胸が零れそうになったので慌てて手で隠すと、外に居たトーニと目が合った。

「アッ、アッ、アッ、み、見てねえ。見てねえから……」

 トーニが慌てて向こうに走って行った。

 つまり、零れ落ちそうになったのではなく、零れ落ちたのだ。

 そして、トーニにそれを見られた。

「も~エマのバカ!着替えはどこよ!?」

「あっ、病院に忘れて来た!」


 結局、敵の仕掛けた罠に乗った形で事を進めた。

 敵は私たちが国防省へ行く日にちを知っていて、その帰り道にワザと情報部内で火災を起こし通りかかった私たちを誘き寄せることに成功した。

 敵との銃撃戦の結果、私は敵の望むように負傷した事にした。

 そして、ここからがエマたち裏方の腕の見せ所。

 市街の中から今は使っていない病院を探し出し、そこを営業している風に見せかけて私を入院させる。

 私が銃撃戦の最中に負傷した事を、関係者に通知する。

 命には別状ない。

 そうなれば実戦から離れ、余計作戦に口出しして来るはず。

 誰もが、そう思う。

 だから裏切り者は、私を始末しに来た。

 1回目と2回目は暗殺者を潜入させたが、看護師に扮したエマとユリアによって阻まれた。

 3回目の攻撃は、ドローンによる自爆攻撃。

 これは威力が高かった。

 相手が部屋を間違えたから良かったものの、自分の部屋の前で爆発されたら死んでいたか、本当に包帯でグルグル巻きにされていたところだ。

 そして4回目は救急車の中での私の殺害だが、予め病院周辺を警戒していたハンスたちにより、これも阻止された。

 私たちはこうして敵の仕掛けた罠を利用して、こちらからも罠をしかけながら応酬することで“ある目的”を達成する事が出来た。

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