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鐘楼の白い鳩が飛ぶとき (When the white dove in the bell tower flies)  作者: 湖灯
*****202号機救助作戦(Unit 202 rescue operation )*****
31/301

【捜索②(search)】

 機内の確認を終え、今度は機外の確認作業に移った。

 30㎜機関砲で破壊された木々の枝が散乱して、まるで空爆を受けた材木置き場の様になっていて足跡などは確認できないが興味深いものを発見することが出来た。

 それは紙袋。

 臭いを嗅ぐと、微かに食べ物の匂いがする。

 おそらくピロシキ。

 ユリアたちは任務中だったから、バスケットにピロシキを詰めて持ってくることはない。

 となると、これはユリアたち以外の者が、ここに立ち寄ったと言う事。

 紙袋の状態で残っていると言う事は、当然ユリアたちが不時着した後と言う事になる。

 何故なら、不時着する前にあったものは30㎜機関砲で粉々にされているはずだから。

 もし万が一、クルーの誰かが隠し持ってきた物だと考えても、無理が有る。

 程度は分からないがケガ人も出て、敵の追撃から一刻も早く逃れなければならない状況で、のんびりピロシキを食う奴なんていない。

「吸殻が有ります!」

「幾つ有る?」

「7つです」

 ブラームの傍まで行ってみると銘柄の違う煙草の吸殻が2種類、吸殻は合計7つあった。

「他にも痕跡を残して居るかも分からない。徹底的に調べろ」

 偵察を終えたモンタナとトーニの報告を聞き、異常はなかったので、フランソワとモンタナの2人を見張りに立たせ、トーニを加えた3人で周辺の“落とし物”を探した。

 結果は、他にも煙草の吸殻が発見されて銘柄の違う煙草の種類は4つ、吸殻は12本。

 食料を入れていたと思われる紙袋も合計4つ見つかり、そのほかにキッチン用のラップも2枚クシャクシャに丸められた状態で見つかった。

 あとはウィスキーのポケット瓶が1つと、吐き捨てたチューインガム、それと鼻をかんだティッシュ。

 23時00分。

 ミーティングを兼ねて、ここで遅い夕食をとる事にした。

「敵は何人くらいでしょう?」

「おそらく10名前後の分隊規模だろう」

「10名以下と言う事は無いのか?」とトーニが聞いてきた。

 敵の人数は少ない方が良いに決まっているが、人数を少なく見積もると、敵を侮る事になりかねない。

「紙袋の数で中身の重量は測れないが、煙草の銘柄と吸殻の数で喫煙者の人数は大凡割り出す事が出来る。民兵と言えど休憩時間は決まっているはずだからな。この場合喫煙者は5~6人。そこにベラルーシの男子の喫煙割合40~50%を入れると丁度分隊規模の人数になる」

「ユリア中尉たちは、どっちの方角に進んだのかは?」

「それは分からないが、ここに立ち寄った奴等の向かった方角は分るな、ブラーム」

「……一番ヘリから離れた所に捨ててあった紙袋の方向、ですか?」

「その通り。だから皆も戦場でゴミは捨てないこと。やむを得ず捨てなければならない時は必ず地中に埋めること」

「燃やすのは駄目なのか?」

「阿呆!それだと煙も出るし、地面に灰が残って余計目立つだろうが」

 トーニがモンタナに小突かれた。

「あと、気になるのは他に敵が何人いるのかだ」

「10人前後じゃなかったのですか?」

「それは、ここに寄った奴等の人数だ。作戦計画書によると既にウクライナ軍の捜索隊が3分隊もこの森で行方不明になっている」

「行方不明ですか!?」

「何故そのようなことが?」

「それはまだ分からないが。おそらく、無線封鎖もその対策なのかも知れない。そしてユリア中尉が救難信号を切っている訳もそこに繋がっている気がする」

 今までリラックスして話を聞いていたモンタナたち4人が、一斉に周囲を見渡した。

 そう、この森には一筋縄ではいかない何かが潜んでいる。


「さあ行くぞ!」

 食事で出たゴミを片付けてから、ヘリの着地地点を後にした。

 ユリアは何の証拠も残さないで立ち去ったので消息は分からなかったが、それはここに立ち寄った敵も同じ。

 違うのは、奴等が個々に到着した時間。

 ひょっとしたら救難用の発信情報を待っている間に煙草を吸っていたのだろう。

 ふつうは、今さっき落ちたばかりのヘリの残骸を前にして、のんびり食事などとらないはず。

 休憩を追え1時間ほど森の中を進むと、先頭のブラームが身を低くして止まった。

 時刻は0時27分。

 何かを発見した合図。

 しかも重大な。

 モンタナたちに周囲の厳重警戒をさせ、直ぐにブラームの傍に駆け寄る。

「どうした!?」

「いえ、この木に、銃弾の後があります」

 ハンドライトで照らしてみると、まだ新しい傷。

 しかも微かに血の腐った匂いも感じる。

「行ってくれるか?」

「喜んで」

 ブラームはそう言うと、リュックを降ろし、ほふく前進を始めた。

 私とフランソワでブラームの行く先と周辺を警戒し、モンタナとトーニを右手奥からグルリと周囲の偵察に向かわせた。

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