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鐘楼の白い鳩が飛ぶとき (When the white dove in the bell tower flies)  作者: 湖灯
*****謎の女(Mysterious woman )*****
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【クラウディー救出作戦①(Crowdy rescue operation)】

「よし、私たちも行くぞ!」

「トンヅラか!?」

「いや、クラウディーを助ける!」

「なんでアイツを助ける?クラウディーはナトーの命を狙っているんだぞ!それに殺すのなら、もうあの倉庫で……」

「いや、あの倉庫から銃声は聞こえていない。それにクラウディーには、まだ利用価値がある」

「利用価値?」

「彼女はPOCでサラのボディーガードをしていたから、サラの素性やPOCの秘密の部分も知っている可能性が有る。それに」

「それに?」

「確かにクラウディーは私の命を狙っているのは知っているが、命を取られたわけではないだろう?それよりも早く見つけないとセルゲイがクラウディーの命を奪ってしまう」

「でも、秘密を探るんじゃなかったのか?」

「クラウディーの気性から考えると、セルゲイの怒りを買いかねない。なにしろ、ブレジネフの命を奪った奴だからな」

「そりゃ大変だ!でも、いいのか?アイツの執念は1度や2度命を助けられたからって、ナトーの命を奪う事を諦めねえように感じるんだが」

「それでも構わない。肝心なのは余分な死者を出させないことだ!トーニだって、そのための消火器爆弾だったんだろう?」

「い、いや、あれは……」

 いつの間にかナトーの考えと時分の考えが、リンクしていることに気が付いて驚いてしまった。

 昔の俺ならあの時、ひたすら拳銃を撃ちまくって“弾がねえ!”と喚いていた事だろう。

 それが消火器を使う事によって、ワンカートリッジで事が足りた。

 でもマダマダ。

 まさか自分の命を狙っているクラウディーを助けに行くとは思っても居なかった。

 こういう時は意地でも止めるべきなのだろうが、俺はナトーの好きなようにやらせることにした。

 無責任じゃねえ。

 ナトーの人生は、ナトーらしく、ナトーが決めるもの。

 俺は、それをサポートしてやりてえ。

 いざと言うときには、ナトーの楯として守ってやりてえ。

 屹度、俺はそのために生まれて来て、外人部隊でナトーと出会ったんだ。


「行くぞ!」

「おお!……でも、クラウディーの居場所は、どこだ?」

「おそらく、まだ倉庫に居るはずだ」

「そりゃあいい。来た道を引き返すか」

「いや、手っ取り早く、窓から飛び降りる」

 ナトーが言い終わる前に窓から飛び降りた。

 普通の家の2階の窓から飛び降りるのとはまるで高さが違う。

 なんたって工場の2階だから、どちらかと言うと2階の屋根の天辺から飛び降りるのに近い。

 ナトーは無事着地したみたいだが俺は自信がねえから、不細工だけど一旦窓からぶら下がった所から手を放して降りた。

 身長分低くしたって事。

 恰好悪いが、着地の際に捻挫して戦力にならなくなるよりはマシだ。

 つまり、良い恰好したいだけで無理をしちゃあ元も子もないって事。


 逃げる私たちに向けて発砲されて空いた穴から倉庫の中を伺うと、暗い倉庫の中で縛られたクラウディーが2人の見張りに監視されていた。

 その状態が少し異様に思えたので注意して見るとクラウディーは両手を後ろで縛られていて、足は膝と足首を縛られていて足首を縛っているロープは体が伸びないように手を縛っているロープと結ばれて、柱を背に当てて空気椅子状態になる様にさせられていた。

 しかも酷いことに、空気椅子状態からお尻を地面に着かせないように、柱の上部から伸びたロープが首に巻き付けられている。

 要するに空気椅子を緩めると、首が閉まると言う寸法。

「ひでえな、これじゃあ虐待じゃねえか」

 たしかにトーニの言う通り虐待だ。

 体を伸ばすことは出来ないから、いつまでも空気椅子を続けるしかない。

 できなくなれば自らの体重で、自らの首を絞めてしまう。

 なんとも汚い縛り方。

「入るか?」

「いや、このままドアを開ければ、外光が入る事で簡単に敵に私たちの侵入を察知されてしまう。だから、このドアよりも大きな板切れを探す」

「了解」

 さすがに元工場だけあって、大きな板切れは直ぐに見つけることが出来たので、その板でドアを覆ってから中に忍び込む。

 見張りは2人。

「銃でやるか?」

「いや、銃は極力使わない」

「そう来ると思ったぜ」

 トーニが楽しそうな笑顔を向けてくれた。

 通信室で更に2丁の拳銃を押収しているから、トーニだけでなく今は私も銃を持っているし、予備のカートリッジもお互いに2つ以上は有るので弾にもそう不安はない。

 でも、できるだけ銃は使いたくない。

 出入り口のドアに衝立ついたてを立てている以上、発見されるまでそう時間は掛からないはずだから、その前にクラウディーを救出する。

 壁伝いにクラウディーが拘束されている場所に近付いて行く。

 他に誰かに見張られていないか細心の注意を払いながら進み、コンテナの影を上手に使いなら近付いて行く。

 クラウディーとの距離が5mまで縮まったとき、その過酷な状況が確認できた。

 ただの空気椅子ではない。

 背中にある鉄の柱には、のこぎりが結びつけられてあった。

 つまり空気椅子を楽にしようと背中を柱に押し付けると、のこぎりの歯が背中に食い込み、それが嫌で背中を離すと足への負担が大きくなる。

 もうクラウディーの足は限界近くに達していてプルプルと小刻みに震え、耐えかねて背中を柱に付けては、のこぎりの歯が食い込みギャーと悲鳴を上げる。

「なんて、酷えことを……」

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― 新着の感想 ―
[一言]  トーニ、めちゃくちゃ男前❗( ≧∀≦)ノ  カッコいい❗( ☆∀☆)  しかし、クラウディーのは拷問みたいに残酷ですね。  セルゲイ、許せん❗  ナトーちゃんが助けに行かなかったら、人知…
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