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鐘楼の白い鳩が飛ぶとき (When the white dove in the bell tower flies)  作者: 湖灯
*****謎の女(Mysterious woman )*****
274/301

【ボディーガードは誰ですか?②(Who is the bodyguard?)】

 ウクライナ政府の協力で、その日のうちに各携帯会社の情報開示を受けられることになり、早速私たちは基地を出た。

「どう。収集できた?」

 <ええ、先ず第1回目の情報収集は出来たわよ>

「上手く扱えそう?」

 <任せておいて!>

「では、このまま空港に向かう」

 <チョ、チョッと、空港に向かうって事はクリミアに行くってこと?>

「そうだけど」

 <そんないきなりだなんて、だいいち武器も何にも持たずに、危ないわ!>

「気にするな。武器は元々携帯しないつもりだったから問題はない。それにボディーガードちゃんと付いているから大丈夫だ」

「エマ、ナトーの事は俺様に任せろ!大丈夫だって、俺の命に代えてでもナトーは俺が守り通す」

 <そ、そりゃあ……。分かったわ、じゃあお願いね!>

「任せとけって!!」

 たしかにトーニは命を投げ打ってでも、ナトーを助けるだろう。

 それを止める事は出来ない。

 当のナトーでさえ。

 だからエマは何も言わずに承諾するしかなく、データーの収集と解析に力を入れることにした。

 一言にエリア内の通信と言っても、膨大な量に及ぶ。

 電話を使う者、SNSを使う者、外で使う者も居れば屋内で使う者も居る。

 第1回目の情報は膨大な量。

 まさかこんなに沢山携帯が在るとは思ってもいなかった。

 <これから空港へ向かう道に入る>

 ナトーからの連絡と同時に、そのエリアの情報を集める。

 今度も前と同じくらい膨大な量。

 まだ最初の情報が整理できていないのに。

 なんとなく、不安になっているところに、ニルスが声を掛けて来た。

「エマさん、手伝います」

「えっ、でも、これはDGSEの任務よ……」

「ハンスが、平和のためには組織の垣根など要らないって」

「でも、それじゃあハンスが大変になるんじゃない?」

「大丈夫だよ、彼もまたスーパーナトちゃんに日頃から鍛えられているから」

 ニルスの言葉に思わず口角が上がり、焦っていた気持ちが和らぐ。

「じゃあ、こっちのデーターお願い!」

「ひゃぁ~!これ、一人でやるつもりだったんですか?」

「ま、まあね」

 まさか、これをニルスに押し付けてナトーと一緒に行くつもりだったとは、とても言えなかった。


「よし、これで2回目のチェックポイントは通過した。ところでトーニ、お腹の調子は大丈夫なのか?」

「ああ、ナトーに擦り下ろしてもらったリンゴのおかげで、もうスッカリ大丈夫だ」

「そんなに即効性のあるモノじゃないだろう」

「気は心と言うが病気も同じ。全部ナトーのおかげだな」

 たしかに軽い病気なら気持ち次第で何とかなる場合もあるが、私のおかげだと言ってくれたトーニの言葉がとても嬉しかった。

 空港に車を置いて、搭乗手続きを済ませ、これから飛行機に乗ることをエマに連絡する。

 追跡者が居れば、ここでも連絡を入れるはず。

 ウクライナの首都キエフから、クリミアにあるシンフェロポリ国際空港までの距離は約650kmだが直行便は出ていないし、鉄道の線路自体は繋がっているものの運行はクリミア半島の手前で止まっている。

 ロシアのヴィチャゼヴォ空港から新しくケルチ海峡に出来た橋を渡って行くことは出来るが、ロシアによるクリミアの実効支配(クリミア紛争)後にウクライナとロシアを結ぶ全ての空路は封鎖されている。

 だから一旦ベラルーシのミンスク国際空港に向かい、そこからモスクワのドモジェドヴォ空港に行きクリミアのシンフェロポリ国際空港に向かうという面倒な手順を取らなければならない。

 それよりも面倒なのは機内食。

 キエフ~ミンスク間は400㎞程しかなかったのでスナックを配られただけで済んだが、ミンスク~モスクワ間は650㎞程あったので簡単な機内食が配られ、最後のモスクワ~クリミア間は1200km有り尚且つ夕食の時間だったこともあり機内食が配られた。

 トーニは全部食べると言っていたが我慢するように言い、購買で買っておいた食物保存用のチャック付きナイロンに入れて持ち帰る事にした。

 もちろん貰わないという選択肢もあったけれど、食事は人数分用意されているはずなので出された物を断れば捨てることになる。

 世界では食料生産量の3分の1に当たる約13億トンの食料が毎年廃棄されている。

 1日当たりでは約350万トン。

 折角作って貰った物なのだから後で食べるために取っておいた。

 座席は2人並んでエコノミークラスに座り、トーニは相変わらず私に窓側の席を譲ってくれた。

 どうせいつも飛行機の中では寝ているので、遠慮しようかと思ったが、トーニは腹痛なのでトイレに直ぐ行ける通路沿いが良いというので素直に従った。

 夜11時にようやくシンフェロポリ国際空港に到着し、飛行機の待ち時間に予約しておいたシンフェロポリ街中にあるホテルに入った。

 受付の時に、トーニは疲れたらしくロビーのソファーに座っていた。

 部屋に向かい、ドアを開けて中に入る。

「じゃあな、俺の部屋は隣か?」

 セキュリティーの問題があるから同じ部屋だと伝えると、驚いたトーニが素っ頓狂な声を上げたので、慌ててその口を塞いだ。

 他の客に迷惑になる。

「たしかにそれは言えるが、不謹慎だろう!」

「なにかやましい事でもあるのか?」

「い、いや、断じて疚しいことはねえけど、世間体つうものが有るだろうが!」

「任務に世間体などない。疚しいことをしなければ何の問題もない」

 そう言ってからエマに到着したことを伝え、愚図っているトーニは放っておいてシャワーを浴びに入った。

 とにかく今回の任務は、いつ撃たれておかしくはない。

 しかも軍服ではなくて私服。

 いつも装着しているNIJ規格レベルⅣのアウタータイプのものではなく、レベルⅢAのインナータイプだから胸を締め付けられて早く脱ぎたくて仕方なかった。

 自分で言うのも変だけど、レストルームで防弾ベストを脱いだ途端、それまで締め付けられていた胸が元気よくプルルンと飛び出してきた。

「ごめんね、長い間辛かったね」

 自分の胸に声を掛けて、優しくマッサージしてあげてからバスルームに入った。

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― 新着の感想 ―
[一言]  廃棄される食品について書かれていたので、さすが湖灯樣です❗  コンビニとかの廃棄量半端無いそうですね。  食べ物に贅沢になりすぎてる気がします。  だって、食べたいもの食べなくたって生きて…
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