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鐘楼の白い鳩が飛ぶとき (When the white dove in the bell tower flies)  作者: 湖灯
*****謎の女(Mysterious woman )*****
252/301

【謎の銃弾(Mysterious ammunition)】

「大丈夫か!?」

「大丈夫、死んだふりをしているだけだから。それより俺から離れろ」

「何故?」

「敵は、爆発物の解除を邪魔しようとしている。俺を撃った後、次はナトーが標的になっちまう。だから早く離れろ!」

 死んだふり作戦を取っているトーニが小声で呟く。

「いや、敵の狙いはトーニじゃない」

「えっ?」

「一瞬焦ってしまったが、あの銃声は22口径弾のもの」

「味方か?」

「味方かどうかは、分からない」

 銃の発射音は22口径に間違いない。

 我々の他に22口径弾を撃つ事が出来るのはルガー10/22を持っていたサラしか居ないはず。

 だけど彼女は、もう関与しないと言って先に帰ったはず。

 他にも誰か隠れているのか?

「血痕を見つけました!」

 さっきまで私が歩いていた場所から30mほど離れたダクトの下で、キースが床に落ちていた血痕を見つけた。

 見に行くと、ダクトの僅かな隙間からAS Valシャフトが覗いていて、その銃の先にはさっきまで私が立っていた場所があった。

 コイツ私を狙っていたのか……。

 ダクトには22口径弾により小さな穴が開けられていて、貫通した弾が敵の側頭部を撃ち抜いていた。

「死体を降ろしておけ」

「了解」

 穴と撃たれた敵の角度から射点を探すと、丁度建屋の反対側のダクトに同じような隙間が空いていることが分かった。

 距離は40mほどだったが、その途中には何本もの配管が通っている。

 この状態で当てられるのか?

 気になった私は直ぐに反対側のダクトに移動し、踏み台になりそうな物の上に立って射殺された敵の位置を確認した。

 確かに、あの隙間から銃が覗くのは見えるが、配管が邪魔になって穴の開いた場所は見えない……いや、待てよ。

「キース、まだそこに居るか?」

「はい」

「その穴の位置から真上に線を引いてくれないか?」

「えっ、線を?油性のサインペンしか持っていませんが、いいですか?」

「それでいいから、ゆっくり上に向けて線を引き、止めろと言ったら何ミリ上に線を引いたか大凡で良いから教えろ」

「はい」

 キースが線を引き始める。

 隙間から線が見えたので止めさせた。

「約50㎜です」

「了解、有り難う」

 50㎜……いくら非力だからと言っても距離は40m。

 ライフルタイプで50㎜も弾道は落下しない。

 “もしかして!”

 射点から、到達点の間にある何本ものパイプを見て回ると、予想通り“それ”は有った。

 パイプの下側に付けられた僅かな傷。

 つまりサラは、ワザとこのパイプに銃弾をかすらせて、弾道が到達点で50㎜下に向かう様に角度を変えたのだ。

 何という正確さ!

 今まで数えきれないほど射撃をしてきたが、銃弾の直径まで計算に入れて撃ったことなど1度も無かった。

 しかも、放った銃弾を一旦違う物に当てて角度を変えるなんて。

 ホンの少し間違えただけで、弾は届かなくなる。

 サラ……。

 本当に、サラが撃ったのか……。

 だとしたら凄い腕だ。


「よーし、終わったぜ」

 トーニはそう言うと爆発物のユニットから、起爆装置を外そうとする。

 皆が一斉に離れる。

「馬鹿かオメーら、今更その程度離れた所で生き残れる訳ねえだろう!」

「すまねえ、つい条件反射で」

「どういう条件反射なんだよ!」

「よし、ユニットをみんなで外に出すぞ」

「了解!」

 これで一応は原子炉建屋での戦闘は終わったが、手放しでは喜べない。

 それはセルゲイ大佐の行方。

 大変な任務を終えた皆の顔を見ると、いまそのことは言えないので無理して私も明るく振る舞っていた。

 外に出ると直ぐにウクライナの化学消防隊と救急隊が到着した。

 エマが手配してくれたに違いないが絶妙のタイミングで、我々の報告を聞いたのち放射線防護服を着た彼等はシェルターの中に入って行った。

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