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鐘楼の白い鳩が飛ぶとき (When the white dove in the bell tower flies)  作者: 湖灯
*****謎の女(Mysterious woman )*****
235/301

【ブレジネフ①(Brezhnev)】

「コノヤロー‼てめーセルゲイに幾ら貰った!?」

 爆発が収まったかと思ったら、通路ではフランソワが大爆発。

 ブレジネフの襟を掴みあげて大声で怒鳴っていた。

「やめろ、何があった!?」

「コノヤロー、敵の装備を知りながら、俺たちに絶対敵いっこねえ装備をさせやがったんだ!おかげでボッシュは敵に撃たれ、隊長が居なけりゃあ俺たちも全滅だぜ」

「敵は9×39㎜、こっちは5.7㎜×15.6㎜だ、これじゃあ敵いっこねえ」

「AS Valシャフトに対抗すには、少なくとも.45ACP弾を使用しねえと……」

「無い物を強請ねだっても仕方ないだろう。それにブレジネフが関与する前から、装備は核施設を破壊しないようにと、作戦会議で決まっていた。それよりも、コレを見ろ」

 ポケットから放射能測定器を取り出して皆に見せた。

「イライシャ、ここへ入る前の放射線量は幾つだった?」

「はい10.5マイクロシーベルトです」

「ブラーム、現在表示されている放射線量を読め」

「ハイ……1ミリシーベルトです」

 皆がざわつく中でボッシュが聞いた「多いのか」と。

 それに対してイライシャが戦う前の100倍に上がっていることを伝えた。

 1ミリシーベルトと言う値は、ICRP(国際放射線防護委員会)の定める実効線量限度(実線量に、人体の各臓器が影響を受ける[臓器荷重係数]を掛け合わせた値であり、実線量=実効線量限度ではない)に相当する。

「いま分かっているのはブレジネフの言う通り、施設を破壊する事は重大な結果をもたらすと言う事であり、それはここで証明された。敵の装備や攻撃の仕方を見る限り、セルゲイは兎も角として一般の兵たちはその危険性を知らされていないのは確かだ。彼がスパイであるかどうかは分からないが、彼はその危険性を知り、私たちが失敗した場合の自らの身に何が起きるのかも知ってついて来ている。それに原子炉建屋の構造をこの中の誰よりも知っている。帰りたい奴は帰っていいぞ」

 皆の顔を一通り見渡し、最後に一言だけ付け加えた。

「人を疑うのは簡単だが、その前に自分が何を成すべきなのか考えろ」

「……すみません。俺としたことが、気が動転しちまって」

「無理もない。だが、ここから先も同じ戦いが続くぞ」

「なーに、隊長のやり方を見て習得させてもらいます」

「他の者は?」

 フランソワがそう言ってくれたせいか、誰も帰ると言い出す物は居なかった。

「ボッシュ。傷を見せろ」

「大丈夫です。少し脚に掠っただけですから」

 ズボンを脱がせて傷の状態を見る。

 確かに、掠っただけで、大した怪我じゃない。

 激しい運動を避け、支援要員として使えば、戦闘を継続するには対して問題はなさそうだった。

 傷口周辺を水で洗って清潔にしてから絆創膏を張る。

「すみません」

 丁度その頃、血相を変えたトーニが走り込んできた。

「爆発音が聞こえたが、みんな大丈夫か!」

「大丈夫だ。折角来たところ申し訳ないが、ボッシュを外に連れて行ってくれ」

「いや、隊長大丈夫です。俺は未だ戦えます」

 今までおとなしくしていたボッシュが抵抗した。

「放射能濃度と外傷の関係について詳しくは無いが、影響がないなんて素人の私には判断できない」

「でも、今直ぐ何とかなるわけではないでしょう?」

「おそらくな。しかし、さっきも言った通り私は医者ではないし放射能の専門家でもない」

「じゃあコイツに聞いてみてくれ!一応専門家なんだろう?」

 ボッシュの問いに答えようとしたブレジネフを手で制止して、眼で喋るなと合図した。

「専門家ではなくても簡単に分かる。傷口から高放射能を帯びた異物が混入するとどうなるか。今直ぐにどうなるとは言えないが、将来何らかの影響が出る可能性があるかも知れないと言う事だけは分る」

「でも、それはただの可能性だ」

「ボッシュ、分かってくれ。あと5年後10年後の君は1人じゃない。素晴らしい家庭を築き、家族を守っていかなけれなならない。血の繋がった家族の居ない私が言うのもなんだが、その時私の間違った判断で君を家族から引き離したくはないんだ」

「隊長……」

「ボッシュ俺たちを信じろ」

「オメーの結婚式には間に合わねえかも知れねえが、オメーの子供の結婚式には俺の農場で取れた極上のヴィノ・デ・パゴ・エスペシアル・ナトー・ホワイトを用意してやる」

「俺たちで奴等を片っ端からやっつけて戻って来る。それまでサオリさんたちを守ってやってくれ」

「みんな……」

「さあ、ボッシュ、行くぜ」

 珍しく自身が再び引き返すことに対して文句を言わないトーニが、ボッシュに手を差し出した。

「折角ナトーが貼ってくれた絆創膏が剥がれるとイケねえから、肩を貸してやる」

「すまねえなトーニ」

「いいってことよ。ほんじゃあ、まあ行って来るぜ」

「ついでにメントスと一緒にもう一つの放射能防護服を持って来てくれ」

「あいよ!」

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