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鐘楼の白い鳩が飛ぶとき (When the white dove in the bell tower flies)  作者: 湖灯
*****謎の女(Mysterious woman )*****
188/301

【賭け②(gamble)】

 15時。

 そろそろホテルに戻る時間。

 近づいて来る2艘のボート。

 モンタナとフランソワのボートだ。

「よう!“主”は釣れたか」

「いや……」

「トーニ、チョッと手伝ってくれるか」

「エマはこっちを……」

 モンタナとフランソワが左右に横付けしたボートから、2人を呼ぶ。

「なんだぁ面倒臭えなあ」

「あら、お土産かしら?」

 それぞれが呼ばれたボートに乗り移る。

「ちょっと手を貸してもらえませんか」

「なに?」

 カチャッ。

「ちょっと、何するの‼」

 エマの伸ばした手に、手錠が掛けられる。

「おっ、おいモンタナ!何しやがるんでい」

 カチャッ。

 驚いて振り返ったトーニの手にも、フランソワが手錠を掛ける。

「フランソワ!オメーもか!?」

「ナトちゃん、これは一体どういう事‼」

「ナトー‼」

 “すまない”

 2人の声を無視して、ボートを出し逃げるようにスピードを上げる。

 バシャーン。

 誰かが河に落ちた音。

 振り向かないと決めていたのに、反射的に後ろを振り返ってしまった。

「ナトー!」

 ボートに固定されたロープの付いた手錠を片手に掛けられたトーニが、河に飛び込み必死に私の名前を呼びながら泳いでいる。

「ナトー!」

 その声に、一瞬スロットルレバーを握る手が緩みそうになる。

 トーニの必死の泳ぎに引っ張られたのか、フランソワの船がモンタナの船から少しずつ離れて行く。

 “トーニ”

 戻りたいけれど、戻る事は出来ない。

 これから私のしようとすることに、2人を巻き込みたくはないから。

 失敗すれば生きては帰れない。


「モンタナ、さっさとこの手錠を外してナトちゃんを追いなさい‼」

「無理です」

「何故無理なの!?」

「これは隊長からの命令でさあ」

「ハンスの?」

「いやナトー中尉の」

「だったら私が命令します。モンタナ3等軍曹、速やかに私に掛けた手錠を外し、ナトー中尉を追いなさい!」

「却下します」

「どうして?ナトちゃんは中尉だけど、私はもっと上の少佐よ!」

「隊長から命令で、エマ少佐の命令は無視するように言われています」

「なんで!?」

「全ての指揮権はナトー中尉にあり、この任務に限りエマ少佐は少佐としてではなく、一般市民の協力者と言うことになっています」

「知らないわそんな事。いいから船を出しなさい!私の命令を無視するのなら、命令書でも突き付けてみなさいよ。それがない限り納得できない……」

 モンタナがポケットから、命令書を取り出す。

 書面には確かに、全ての指揮権がナトー中尉にある事と、エマ少佐が顧問でもなく一般市民として登録されていることが書かれてあり、本人もそれにサインをしていた。

「どうして、持って来ているの」

「隊長が、エマさんが抵抗するだろうから、これを持ってくるようにって」

「でも、アンタたち、それでいいの?ナトちゃん死ぬつもりよ」

「それも命令です……」

 モンタナは悲しく俯いた。

「さあさあガチョウちゃん。水遊びはここまでだ。サッサとボートに上がってキャンプ場に戻るぜ」

「フランソワ、ナトーを見捨てるつもりか!?」

「仕方ねえだろうが、命令なんだから。それより隊長が単独で居なくなり連絡の取れねえ状況を、早くどうにかしねえとならねえんじゃねえか」

「フランソワ、オメー天才かよ」

「ああ、ナトーと一緒に仕事をしていりゃあ、俺だってちったあIQが上がるって言うもんよ」

「モンタナ全速でお願い!」

「わかってまさあ!」

 エマとトーニを乗せた2艘のボートは、ナトーを追わず舳先をキャンプ地に向け、空を映した紺碧の川面に2本の白い筋雲を描きながら飛ぶように駆けて行った。

挿絵(By みてみん)

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