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鐘楼の白い鳩が飛ぶとき (When the white dove in the bell tower flies)  作者: 湖灯
*****謎の女(Mysterious woman )*****
172/301

【敵補給部隊発見!①(Enemy supply unit found!)】

 それから数日後の夕方、待望の連絡は予想通りモンタナとフランソワから入った。

 連絡と言っても直接携帯電話が入った訳ではなく、SNSを使った暗号でのやりとり。

 これは敵が携帯会社の通信記録を押さえていた場合、通話履歴を盗聴される恐れがあるからで、勿論平文でのメールはもっと危険になる。

 モンタナからSNSで届いたのは

 “I want to come fishing for smelt in winter(冬にワカサギ釣りに来たい)”

 それに対してフランソワが返したのは

 “November is good!(11月ならいいぜ)”

 これは一見会話として成り立っているように思えるが、列記とした暗号。

 モンタナの文中には西を表すWから始まる単語が2つと、南を表すSから始まる単語が1つ、そして来ると言う動詞が1つ入っているから“西南西から来た”となる。

 モンタナの暗号に対してフランソワが返したのはNだから“北”を表しgood!は褒め言葉として使われたのだろう。

 モンタナとフランソワの位置は予め決めてある。

 つまりモンタナから見て西南西、フランソワから見て北、この2つの線が交差する点が現在の不審船の航行する位置。

 続いてメントスから不審船の位置情報に関する詳細なSNSが届く。

 “Unfortunately at that time I was about to move from Nantes to Bordeaux.(残念その頃僕はナントからボルドーに移り住む頃だ)”

 この暗号は確認した不審船の位置を地図上でパリとした場合、自分の位置ナントから見た予想航路ボルドーを描いて見せている。

 フランスに長く住む者なら地図を見なくても、敵の位置が読み取れる。

 続いてハバロフから“Bordeaux will arrive immediately from my parents' house(ボルドーなら俺の実家から直ぐだ)”と、直ぐに到着できる旨を伝えてきた。

 更にキースとトーニから“I'm sorry I can't go(行けないと思う、ごめん)”と、自身の持ち場を見張る意思を伝えてきたけれど、私は”Deliver the pizza!(ピザを届けろ)”と、トーニを呼んだ。

 敵の接岸点はスコルチキアからトロクンの間のどこか。

「さて、私たちも腰を上げるとするか」

「まあ、男の子みたい」

 車に戻り、接岸点を目指す。

 今回は敵の補給の邪魔をすることが目的ではない。

 目的は、敵の船がどこへ戻って行くかだ。

 ただその中でも、敵の補給物資が何で、どのくらいの量かは見届けておく必要がある。

 これまで何日も船を浮かべて釣りをしたり護岸で買いを採ったり、森で山菜や果物を採っていたのは良く見かけるものと、そうではないものの区別をつけるため。

 秘密裏に行動をしようとすればするほど、それは見かけないものとなる。

 私たちはスコルチキアの砂浜に車を止めて、泳ぐことにした。

 さすがに河とは言え、川幅が8kmもあると向こう岸なんて微かに見える程度。

 その広い川をモンタナたちが見つけた怪しいボートが通り過ぎて行く。


「おい、見て見ろよ。あの女たち脱いでいるぜ」

「おーっ!しかも極上に美人!」

「服の下に予め水着を着ていたのは残念だが、2人ともスタイル抜群じゃねえか!」

「映画かモデル雑誌の撮影か?」

「いや、カメラマンは居ねえから、ただ単に会社帰りにひと泳ぎってぇ所だな」

「でも、なんで女だけ?」

「男は、あとで引っ掛けるのに決まっているだろうが」

「ちくしょ~!仕事中でなけりゃあなぁ……」

「おいおい、仕事中でなけりゃあ、どうするって?」

「決まってんだろうが、ナンパして、お持ち帰り」

「うまくいくのか?」

「うまく行く可能性は、やってみなくちゃ分からねえが、あの背の高い方なら何とか脈がありそうだぜ」

「ボリュームあるな」

「ほんと、あの女さっきから俺たちの事を見てニヤニヤしているぜ」

「ありゃあ、そうとうな欲求不満だな。あの女なら俺でも簡単に落とせそうだ」


 私たちが服を脱いで水の中に入るのを、ボーとの男たちが鼻の下を伸ばして見ている。

 小型ボートに明らかに荷物と分かる木箱や段ボール箱、そして運送屋らしい作業服を着た男が3人。

「なんか船の上、随分盛り上がっている様ね」

「エマの事、褒めているよ」

「あら、なんて?」

「スタイル抜群でボリュームがあって、脈がありそうだって」

「よく聞こえたわね」

「聞こえないよ」

「じゃあ、読唇術!?凄いじゃない!」

「エマが教えてくれたんだろう」

「私が教えたのは、読唇術と言うものがあると言う事だけよ。しかもこの距離でロシア語の会話、しかも相手は3人なんて凄すぎるわ」

「そうか?でもそれしかコミュニケーションをとる手段がないと考えれば、誰にだってできそうな気がするんだけど」

「まあ、確かに“それしかなかったら”できそうだけど、私たちには“それしかない”訳じゃないでしょ?」

 船は港の方に消えて行った。

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