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鐘楼の白い鳩が飛ぶとき (When the white dove in the bell tower flies)  作者: 湖灯
*****謎の女(Mysterious woman )*****
158/301

【集まった仲間たち①(Gathered friends)】

 “sister……”

 あの女が言った最後の言葉が頭から離れない。

 エマの後で似顔絵を書きながら、不安はあった。

 エマから私に似ていると言われた時に、自分でも屹度そうだと思いながら、描いた本人に似ると言って誤魔化した。

 あの女が私の姉、しかもこともあろうか、敵であるPOCのボス……。

「お客さん、着きましたよ」

「あっ、はい」

 ショッピングモールまで戻るのに、病院で客待ちしていたタクシーを利用した。

 トーニとエマに連絡するつもりでいたが、女の事で頭がいっぱいで何も考えられなかった。

「お帰り!」

「どうだった?」

「隊長、ご無事で何よりです」

 出迎えてくれたのは、トーニ、エマ、それとモンタナたちG-LéMATのメンバーたち。

「首尾は?」

「上々です。全員捕えました」

 ハンスが、トーニ1人に危険な任務を押し付けるはずがない。

 トーニが来たと言う事は、必ずそのトーニをサポートする隊員が付いているはず。

 そのことは、休日でもないトーニを発見した時から分かっていた。

 姉だと言ったあの女は、私の事については詳しく調べていたつもりだろうが、ハンスの事について調べるのを疎かにしたことが敗因だろう。

 女が切り出したトーニとエマを捕えると言った言葉は、逆に私に利用されクラウディーから銃を奪う切っ掛けとなった。

 もっとも彼女自身そう簡単に事が運ぶとも考えてはいないだろうから、モンタナたちが捕えた彼女の仲間たちは、POCお得意のアルバイト達に違いないだろう。

 つまり今回の戦いは、お互いに何の成果もなく終わった“引き分け”と言う訳だ。

 結果的には、そうなる。

 だが、彼女の目的があのグラコフ少佐のように、私の殺害であったなら話は別。

 銃も持たずにノコノコと、女に引き寄せられた私は確実に死んでいただろう。

 何故彼女は私の命を奪おうとはしなかった?

 本当に姉なのか?

 だから私も撃てなかったのか?


 ナトー……


「ナトー、女の正体は分かったのか?」

「いえ、分かったのは、仲間が女の事をボスと呼んでいたことと、POCの関係者と言うことだけです」

「そうか……それにしても、お前が追い詰めた敵を逃がすなんて珍しいな。女の仲間に邪魔をされたのか?」

「いえ、女の仲間は1人だけでした」

「そうか……」

 ハンスは、その事を詳しく聞こうとはしないで、ウクライナ軍のレーシ―中佐が持ってきてくれた資料を渡してくれた。

「有り難うございます」

「そんなもの、何に使うの?」

 書類の束を持った私を不思議に思ってエマが聞いた。

「数字遊びに使う」

「数字遊び?なにそれ。それにしても、なかなか頭の良い奴だったわね。ナトちゃんの裏をかくなんて尋常じゃないわね」

 たしかにエマの言う通り。ハンスの機転が無ければエマとトーニは捕えられていたかも知れない。

「だけど、こっちにはハンス少佐も居るし、これからもっと優秀な仲間が増えるわよ」

「仲間が増える?」

「ああ、明日ボルィースピリ国際空港に行け。第1陣の客が来る」

「客?」

「今日はもう退けていいぞ。とんだ休暇で悪かったな」

「いえ」

 ハンスは何故か詳しくは言わなくて早く私を司令部から出したい様子だったので、こちらもそれに従って直ぐに部屋を出た。

 “いったい誰が来るのだろう”

 部屋に戻ってもらった資料に目を通す。

 資料は2つ。

 1つは基地を攻撃してきたミサイルの破片から分析した結果。

 やはりロシア製の9M21F。

 もう一つは9M21Fの仕様書。

 これさえあれば、敵の居所が分かる。


 次の日の昼すぎ、私たちは部隊に通いで仕事をするスタッフの送迎用のロシア製のワズ2206を借りてボルィースピリ国際空港に、客を出迎えるため出発した。

 私と同行するのはエマとトーニ、それとカールの4人で、全員私服だが拳銃を帯同しての出発だ。

 運転手はカール。

「なんだ?昨日の今日だっていうのに、護衛は付かねえのか?」

 助手席のトーニが文句を言っているが、護衛が付いたところでヤラレルものはヤラレル。

 敵の見張りがどこかに隠れて監視していたとしても、むしろ単独の方が仰々しい護衛車両が列になるより目立たない。

 昨日の今日だからこそ、フイになった休日の買い物に最小限の護衛を付けて出て行ったと思うだろう。

 ただしあの女が見張っていれば話は別だが、一味のボスなら忙しいだろうから、そうそう見張りに出る事も無い。

 退屈な平常時の見張りは、下っ端の仕事だ。

 追跡してくる不審な車両もなく、部隊を出発して約1時間後の午後14時に空港に着いた。

「客って誰?」

「さあ?」

 エマは知っているくせに教えてくれない。

「ほいっ、これアンタの係りでしょ」

 話を逸らすためなのか、エマがカールにビデオを渡す。

「俺?」

「ビデオと言えばカール上等兵、それが最近のエピソードの流れでしょ」

「あっ、ま、まあ……」

 ビデオを渡されたカールが撮影を始める。

「まだ早くないか?」

「隊長笑って」

「子供じゃないぞ」

「じゃあ手を振って」

「もう……!」

 カールの相手をしながらゲートを出て来る人たちを見ていて驚いた。

 “まさか、こんなことって”

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