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鐘楼の白い鳩が飛ぶとき (When the white dove in the bell tower flies)  作者: 湖灯
*****謎の女(Mysterious woman )*****
157/301

【謎の女⑩(who is she?)】

「ふざけるなっ!!」

 私が声を荒げると、クラウディーが銃を向けた。

「言っておくけれど、貴女とフェアーに戦うつもりは毛頭ないのよ。ナトー、貴女が本気を出せば私達2人なんて5秒も掛からずにノックアウトされる。だから変な真似をすれば躊躇なく撃つ」

「賢いな」

「身の程知らずの野蛮人とは違うわ」

「グラコフ少佐のことか」

「馬鹿よね。貴女に策をめぐらせて勝とうだなんて」

「そう言う自分はどうなんだ?」

「私は貴女より1枚上手よ。折角裏をかいたつもりでしょうが、今頃貴女の可愛い坊やは私たちの人質。そして戻ったエマ少佐もね」

「何故分かった!?」

「2人っきりなら、本物かどうかも分からないのに、私を乗せた救急車を追うときに1人は残すでしょう?」

 ”しまった!!”

 思わず自分の失敗に頭を抱えてしまう。

 トーニは絶妙のタイミングで、階段で転び敵に知られずに済んだわけではなく、それ以前からマークされていたのだ。

 私たちはショッピングモールで何をしていた?

 それは私たちを見張っている敵を探していた。

 しかし私たちの目的が彼女であることが分かっている以上、私たちを四六時中監視する必要はない。

 何故なら、誘き出す手段が分かっているから。

 私が見つけたように、彼女はただ目立つところに立っているだけで、私が勝手に見つけて手元に転がり込んでくる。

 彼女たちが見張っていたのは、私ではなく、私の味方になる人間が何人いるかだったのだ。

 完全に私の負け。

 私は彼女の裏の裏をかいたつもりだったが、彼女は既にその裏を先に作っていたのだ。

 しかし何故、先に裏を掛けることが出来たのか?

 答えは明白。

 私の性格を知り、行動パターンを読まれていたからに相違ない。

 基地を攻撃され、ずぶ濡れになりながら戦った私がいずれ服を買いに出る事を予測していたから。

 独りで服を買うのが苦手な私を知っているエマが、気を利かせて付いて来る。

 そうなれば私は派手好きなエマを喜ばせるために、近くの雑貨屋ではなくもっと気の利いた大きな店に行く。

 部隊に近い大きな店と言えば、あのショッピングモールと言うことになる。

 知らず知らずのうちに、自らの手で敵の罠に掛かりに行ったようなもの。

 しかも、お土産を2つも連れて。

 エマとトーニの2人を人質に取られた以上、もう私は彼女に背くことはできない。

 何と言うことだろう……。

 涙も出ない。

 もう終わりだ。

 拳銃を向けられていると言うのに、私はヒステリックに笑うしかなかった。

 ボスである女は冷たい目のまま私から目を離さないが、急に笑い出した私に呆れたクラウディーは驚いてボスである女を見る。

 その一瞬を見逃さずに、蹴り上げた爪先で女の持つ拳銃を弾き飛ばし、蹴った脚が着地する前にもう片方の脚を飛ばしてクラウディーの顎を蹴り上げる。

 次はこの女。

 だが、彼女は私が最初の蹴りの動作を始めた瞬間に動いていて、着地して舞い上がった銃を手に取った時にはもうドアを開けて外に出た。

 慌てて私もドアの外へ出た。

「止まれ!」

 銃を構える私に構わず、後ろ姿を見せたままの女は一瞬立ち止まったが、直ぐにゆっくりと歩き出した。

「止まれ!」

 もう一度言うが女は止まらないまま通路の端まで行き、そこで私を振り向いて笑って言った。

「ナトー、貴女には私は撃てない」

 たしかに女の言う通り。

 相手はPOCだと分かっているし、撃とうと思えばいつでも撃てた。

 だが撃てなかった。

 そして今も……。

 撃てない銃を構えたまま、私は聞いた。

「who is she?(貴女は誰?)」

 女の口が、ゆっくりと動く。

「sister(貴女の姉よ)」と。

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― 新着の感想 ―
[一言]  「謎の女」も凄く面白かったです❗  第一次世界対戦、第二次世界対戦と世界恐慌の処は凄く興味深くて、グリムリーパーの頃のナトーちゃんの事をどうやって調べて今に至ったのかも興味深いです。  謎…
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