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鐘楼の白い鳩が飛ぶとき (When the white dove in the bell tower flies)  作者: 湖灯
*****謎の女(Mysterious woman )*****
148/301

【謎の女①(who is she?)】

「ところで、何故敵の攻撃を事前に察知した?まさか勘ではないだろう」

 次の日、地下司令部に呼ばれて、ハンスに事情を聞かれた。

 何を思ったのか、他の者はシャットアウトして2人きり。

 でもハンスの真剣さに押されて、邪推な感情の芽は伸びてこないからドキドキもしない。

 これは事実をありのままに述べ、それを元に検証する査問委員会なのだ。

「ある女がヒントをくれた」

「女?それは一体誰だ」

「分からない」

「どこであった」

「昨日の教会」

「あの事件現場になった教会か?」

「そうだ」

 ハンスは腕組みをして少しの間考えた後、携帯を取り出してエマを呼んだ。

 まるで待っていたかのように、直ぐにエマが入って来た。

「あら、そっちから呼び出すだなんて、お邪魔じゃないの?それとも新しいプレイ?」

「くだらん冗談は止せ」

「真剣ね……で、何の用?」

 エマが、つまらなそうに私とハンスの間に座る。

「女がいた」

「誰に?」

「誰にじゃない。その発想は封印しろ」

「……了解」

 エマが私を横目で見て、舌を出して戯けてみせる。

 屹度今までの一連の冗談は、私の緊張を和らげるつもりでしてくれたことなのだろうが、私は緊張などしていない。

「で、教会にいた女から、どんなヒントをもらった」

「先ず彼女は喪服を着て現れた」

「教会だから喪服を着ていても不思議はないだろう」

「私も、そう思っていたが、何か違和感を覚えた」

「違和感?具体的には、どういうことだ?」

「履いている靴が、白のクリスチャンルブタンだった」

「まあ、お葬式なら普通、白は履かないわよね。ましてクリスチャンルブタンだと、靴底が赤色で派手だし」

「しかし、女は葬式ではなくて、礼拝に訪れたんだろう?この後に何処かによることも考えれば……ひょっとして色の組み合わせか!?」

「そう。喪服の黒と靴の白、そして靴底の赤を並べるとドイツ帝国の国旗になる」

「ドイツ帝国と言えば、第2次世界対戦でナチスが愛用した旗印ね。国防軍のヘルメットには斜めにカットされた、この模様が付いていたわ」

 実は、そのときはそこには気付かなくて、ただ喪服が何故かナチスの軍服に思えただけ。

 しかし、そう思ったのは……いや、そう思わせさのは彼女が私に、そう思わせる色の演出だったのではないだろうか?

「じゃあ、ネオナチの一味なのか?」

「わからないけれど、違うと思う」

「何故?」

「彼女はリラの香水を付けていたし、帰る時マリア像にリラの花を添えていた」

「リラって、ライラックのことか。何故それが関係ある?」

 腕組みをして渋い顔をするハンスに、ひらめいてスッキリした顔のエマが答える。

「リラの花言葉は“思い出”“友情”“恋の芽生え”“初恋”“青春の喜び”“無邪気”と、良い事ずくめだからよ。ネオナチの一味は、スパイ容疑であの教会を襲ったのだから、そんな良い花は送らないわ」

「それは花言葉を知っている。と言う仮定に基づくものだろう?」

「まあ、それは、そうだけど」

 たしかにハンスの言う通り、エマの言ったことは仮定に基づくものだが、今回敵の攻撃を察知できたのも全てはこの仮定が元になっている。

「彼女のメッセージは花言葉に隠されていたと思います」

「どういう事だ」

「どういうこと?」

 2人が驚いた顔で私を見た。

「私が帰る時、車のワイパーにシャクナゲが挿してあった」

「シャクナゲ!?」

「そう。 そしてシャクナゲの花言葉は“威厳”“荘厳”“危険”などですが、英語圏では“危険”“用心”“注意する”と言われています。そのシャクナゲがワイパーに挿してあったと言うことは、雨に関係するものだと私は思いました。そして当日は珍しく低く厚い雲に覆われていました」

「つまり無人偵察機の目が雲と雨により塞がれている時が危険だと?」

「そういうことです」

「しかし何故、女はそれをナトーに伝えた?」

「分かりません」

「なるほど、それで私を呼んだ訳ね」

 そう。

 エマはDGSE(対外治安総局=フランスの政府機関で諸外国の政治的・軍事的な諜報活動を行う組織)

「そのとおり。ナトー、その女の車やナンバーは覚えているな」

「はい」

「あと、その女性の特徴も詳しく教えて頂戴。何かの事件で引っかかるかも」

「わかった」

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