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鐘楼の白い鳩が飛ぶとき (When the white dove in the bell tower flies)  作者: 湖灯
*****謎の女(Mysterious woman )*****
141/301

【突然の嵐①(Sudden Severe Storm)】

 シャワーのコックを止めると、外から誰かの声が「降って来たぞー」と雨が降り出したことを伝えていた。

 雨は瞬く間に激しい音を立てだし、土砂降りに変わった。

 “まずい!”

 濡れた体も拭かずに、その上から慌てて服を着て司令部棟に向けて走る。

 外は叩きつける程の激しい雨。

 時折雷も鳴っている。

 廊下を走り司令部の扉を勢いよく開けると、サンドウィッチを頬張っているニルスが驚いた顔で私の事を見ていた。

「ナトちゃん、どうしたの?そんな恰好で……」

 悪いが呑気に返事をしている間は無いかも知れない。

 館内放送のスイッチを入れ、直ぐに緊急避難警報を鳴らし、全員地下壕に移動するように繰り返して言った。

「ちょっとナトちゃん、どういう事!?ハンスから何か連絡でもあったの?」

「連絡はない!」

「ハンスの指示?」

「それもない!」

「だったら……」

 ニルスが言うのも無理はない。

 緊急避難警報は司令官か副司令官、もしくはその2人のどちらかから指示を受けた将校以外に警報を発令する事は出来ない。

 だから今この場面で、指示も受けずに独断で発令するのは違反行為に当たる。

「間違ったら申し訳ないが、間違っていなければ大変な事になる」

「だったら警戒警報に切り替えたら?」

「駄目だ!」

 事の重大さを話す余裕もない。

 のんびり構えているニルスを押し出す様に部屋に出し、地下司令部に連れて行った。

「ナトー!これは一体何なんだ!?」

 地下司令部にはG-LéMATのメンバーが、ワザワザ雨に打たれながら入って来た。

「他の者たちは!?」

「ああ、皆血相を変えて地下壕に入って行ったぜ」

「なにしろ、訓練以外で緊急避難警報が発令されるのは初めてだからな」

「で、なにがあったんです隊長?」

「分からない」

「分からない!?」

 皆が私の言葉に驚いた時、ドーンと言う音が鳴り天井から砂埃が落ちた。

「雷が近くに落ちやがったな」

「トーニ、付いて来い!」

 私はトーニの手を引いて、状況を確認するために一旦外へと向かった。

「ひぇ~土砂降りじゃねえか!……あ~あそこに落ちたんだな、納屋が燃えていやがる」

「雷じゃない!空を見ろ!!」

「空、なっ流れ星かぁ??」

「馬鹿!こんな土砂降りの日に流れ星なんか見えるか!」

「じゃ、じゃあ」

「そう。敵のミサイルだ」

 少し外に出ただけで、びしょ濡れになってしまった。

「敵のミサイル攻撃だ!」

「ミサイル攻撃!?」

「でも一体何故?」

 驚くのも無理はない。

 万が一の敵のミサイルによる攻撃に備え、上空では無人偵察機MQ-1 プレデターが24時間の警戒任務に当たっていて、敵の行動を監視している。

 ミサイル攻撃や本格的な砲撃など、準備と人手が掛かるものは、事前にプレデターの赤外線監視網に引っ掛かると言う手筈。

 ただし今夜のような激しい雨の日以外なら。

 無人偵察機は敵からの対空ミサイルを避けるため、高度5000m以上から高感度カメラで監視している。

 そして今夜の様な低く垂れこめる厚い雲と、激しい雨が赤外線監視システムを無効にしてしまう。

 敵は、この時を待って密かに準備していたに違いない。

「でも、それだったら、この穴倉に籠ったままじゃ!」

 たしかにその通り。

 ミサイル攻撃の終わりは敵のみぞ知る情報だから、悠長に全てが終わるのを待っていたら敵の地上部隊に囲まれて殲滅させられるのがオチ。

 かと言って、頻繁に外を監視していると、いつかは必ずミサイルの爆発に巻き込まれてしまう。

 いつか見た夢を思い出す。

 あれはハンスからプロポーズされた日の夢。

 今夜の様に沢山のミサイルや迫撃砲弾が飛んできた不吉な夢だった。

 私たちは、あの日の夢の様になってしまうのか……。

「ジャジャ~ン!」

 重く圧し掛かる空気の中、ニルスが陽気な声を出した。

 皆に見せたのは各所に設置されたPTZ(パン・チルト・ズーム機能を備えた遠隔操作が可能な監視カメラ)カメラの映像。

「いつの間に」

「まあ、こんな日が来る可能性も考えて、配線を2系統に分岐させておいたのさ」

「じゃあ警備室が爆破されても見えるのか?」

「ああ、カメラ本体から分岐させているから、カメラ本体が壊れない限り、どちらかで確認できる仕組みさ」

「線が切られたら?」

「一応、Wifiでも操作できる仕組みなんだ」

「ここに沢山あるパソコンで?」

「そう」

 さすがニルス。

 のんびりしている様でも、こういう事には抜け目がない。

 早速ブラームとトーニの2人がニルスの指示に従って、カメラでの監視を始めた。

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