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鐘楼の白い鳩が飛ぶとき (When the white dove in the bell tower flies)  作者: 湖灯
*****謎の女(Mysterious woman )*****
133/301

【弱い者いじめ②(Bullying the weak)】

「ふざけんじゃねえぞ!!弱っちいロシア人過激派を痛めつけて英雄気取りかぁ!?」

「たしかにお前の言う通りかもしれん。だがお前たちが虐めているこの人たちは抵抗もしなければ武器さえも持ってはいないではないか。しかも女子供ばかりで人数もお前たちより少ない。それなのにお前たちは武器を……」

 そこまで言いかけて、思わず笑いそうになり口角を上げてしまった。

「てめー、死にてえのかよ!」

「もう一度言おう。武器を置いて立ち去れ。お前たちには10秒だけ、逃げる猶予をやる」

「10、9、8、7」

「逃げる猶予だぁ!?そりゃあこっちの台詞だ!」

 目の前の男が私の胸倉を掴み上げ、銃を喉元に突き刺す。

「6、5、4」

「おまじないは、止めろって言うんだよ!」

「3、2、1」

「撃つぞ!」

「ゼロ」

 パーン!

 奴の拳銃が火を噴いた。

 だが、銃弾は遥か彼方の空を目指して飛んで行く。

 相手を本気で殺そうとするなら、拳銃は両手で保持しておくもの。

 ゼロカウントと同時に私は胸倉を掴んでいた奴の手を除けようと上げていた手を離し、その手で銃の向きを変えて押し上げると同時に腰を落とした状態から脇を踵で蹴り上げた。

「ギャー!!」

 ボクッと関節が抜ける音と共に、奴が悲鳴を上げる。

 同時に、私が10数える間にポジションを移動したトーニとカールが一瞬にして奴等の持っている銃を叩き落とし、すかさず奴等に飛び掛かる。

 10数えている間、奴の仲間たちの神経は私と対峙するリーダーに集中していたから、気付かれずに格好のポジションが取れたわけだ。

 蹴り上げた奴の脇の間をすり抜け奴の健在な左腕を後ろに捻り上げたまま、後ろに居た男の脇腹に回し蹴りを入れると、一瞬くの字に曲がった男の体が宙に浮いて崩れ落ちた。

 手を離し回転力を維持したまま隣の男の銃を蹴り落とした後、次の回転で右の膝関節に蹴りを入れると男の膝は通常ではありえない角度に曲がって倒れ、その男の向こうに居た男には視界が開けて確認できた途端に側頭部にハイキックをお見舞いして未だ倒れきる前の体を飛び越えてその後ろの男に飛びつく。

 後ろの男は、いま目の前に居た男の倒れる陰から一瞬のうちに現れた私の姿に驚いていたが、その両肩を掴んで飛び越えざまに見開いた眼と眼の間に膝を打ち込み、そのまま男の肩を軸にして縦に回転しそのまた後ろに居た男の利き腕の肩に踵を落とす。

「ギャー!」

 2度目の肩の抜ける音と共に男が悲鳴を上げたが、止めは後に回して着地と同時に低い体勢から横に居た男の膝裏を蹴り上げ、いま踵落としを当てた男の後頭部に後ろ回し蹴りを当ててから膝を蹴られて仰向けに倒れる直前の男をマット代わりに“ミゾオチ”に頭を打ち付けるように前転をして、斜め後ろに居た男の側面に躍り出た。

 銃を持った男が振り向いたところに、前転して起き上がったばかりの回転力を利用して顔の中心に頭突きをお見舞いすると、一瞬にして男の両ひざがガクンと折れる。

 目の前に現れた男は私が迫っている事には気が付かづにカールの方を向いていたが、私はお構いなしにその鼻先を狙って回し蹴りを入れて倒した。

 すっかり見通しの良くなった現場では、丁度カールが敵を倒し終えたところで、私の顔を見て両手を肩に持ち上げてニッコリ笑い、トーニも最後に残った敵を倒すところだった。

「ふう。俺たちが3人ずつ倒す間に、いったい何人倒した?」

 敵を倒し終えたトーニが、額の汗を拭きながら言った。

「8人」

「おいおい、倍以上じゃねえか。でも良いのか、こんな弱っちい奴等相手に本気を出して」

「トーニは手加減してやったのか?」

「いや、手加減はしねえ。って言うか、どんな敵にも手加減しちゃあならねえって言うのは、ハンスが隊長だった頃からの伝統じゃねえか」

「それ、どういう事?確かに手加減するなとは聞いているけれど」

 G-LéMATに入って、まだ日の浅いカールが聞いた。

「どんな相手にも油断しちゃあならねえって事だ。手加減って言うのは、余裕だ。余裕は油断を生む。そうだろ」

「だから私も1人を除いて手加減はしていない」

「1人を除いて!??」

 カールが直ぐに気付き、SIG P-320を抜こうとしたので、手で制しした。

「舐めたマネしやがって」

 背中から声がする。

 ゆっくり振り向くと、そこにはさっきまで話していた敵のリーダーが立っていた。

 利き腕ではない左腕で握っているのはルガーP-08。

 脱臼して手を上げる事が出来なくなったので、左手に持ち替えたのだろうが、その左腕だって私に捻り上げられてダメージを負っているはず。

「大丈夫か?プルプルしているぞ。しかもルガーは重心が極端に後ろ寄りで狙い辛い。そんな手で私が撃てるのか?」

 銃を向けられた以上、私も報復手段として銃を抜いた。

「一般市民の俺を撃つつもりなのか!?」

「笑わしちゃいけない。銃を向けられれば、一般市民もテロリストも軍人も関係ない。それにお前は既に1発撃っているじゃないか」

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