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鐘楼の白い鳩が飛ぶとき (When the white dove in the bell tower flies)  作者: 湖灯
*****卑怯な敵の罠(Cowardly enemy trap )*****
120/301

【罠にかかったのは、どっちだ⑦(Which one was trapped?)】

 走り出して30秒が過ぎた頃、ようやく納屋の窓から小さな灯りが見えた。

 ”マズルフラッシュ!”

 直ぐに急ブレーキをかける様に倒れ込むと、1m先を銃弾が通り抜けるのが見えた。

 ”くわばら、くわばら”

 次は私が身を起こすタイミングを狙ってくるはず。

 身を起こすのは、倒れ込むより時間が掛る。

 パーン!

 さっきまで私が撃っていた場所からトーニが援護射撃を始めた。

 抜群のタイミング。

 さすが、ヤルときはヤル男!

 私は直ぐに立ち上がり、真直ぐに納屋に向かって走り出す。

 トーニの初弾は窓の上の屋根に当たり、ブリキの波板が引き裂かれる様な派手な音が響き、納屋の中から何人かの叫び声が聞こえた。

 いつも思うのだが、トーニは失敗の仕方を心得ていて、考えられる最高のヘマをして敵を翻弄(翻弄)する。

 あんなところに弾が当たるなんて、敵もさぞ驚いた事だろう。

「ナトーのやつ何考えているんだ?一直線で納屋に向かっているぜ!」

「それだけトーニちゃんのこと信頼しているのね。確り援護してあげてね」

「当たりめえよ!敵には掠らせもしねえぜ!」

 パーン!

 トーニの2射目は納屋の窓に吸い込まれて行った。

 まさに凄腕のスナイパー。

 ベストを尽くしている。

 トーニの援護のおかげで、敵の狙撃手もゆっくり狙っている余裕がなく、弾は近くを通るものの私に当てるまではいかない。

 もっとも私自身、真直ぐに走っているように見せかけて、微妙に走路を左右に振って的として定まりにくい様にしているのも今のところ功を奏しているのは間違いない。

 飛び出してから2分が過ぎ、納屋まではあと約300m。

 もう援護は要らない旨、トーニに合図を送る。

 この距離であればHK-416でも十分に狙撃兵と渡り合える。

 いや逆にHK-416のほうが有利に戦闘できる距離だ。

 更に距離を縮めるため全力で走る。

 距離が近くなったことで、適もT-5000からAKMに銃を変え、更に今まで戦闘に参加していなかった奴らも窓越しに姿を現した。

 もう挑戦的には走れない。

 横走りに変えて、窓付近に姿をのぞかせる敵の影に威嚇射撃をしながら距離を詰めてゆく。

 そろそろ時間だ。

 屋根の上の死角に隠れていたドローンが急上昇を始め、移動する。。

 機首を下げてカーゴスペースに積んだ40㎜グレネード弾の投下を始めた。

 ドンドンドンドンドン。

 さすがにMi-24ハインドで歩兵への威嚇の仕方を心得ている。

 遠くから近くへ敵を追い立てる様に爆撃をするから、必然的に3人の迫撃砲手たちは納屋の影から飛び出してきた。

 カールのL96A1の銃声が聞こえ、納屋からも銃を構えた敵兵が4人飛び出してきた。

 敵との距離は100m。

 直ぐにHK-416で倒し、拳銃に持ち替えて納屋の中に飛び込む。

「Hold up!!」

 納屋の中に居たのは、3人の怪我人と20人弱の縄で縛られたサバイバルプレイヤーたち。

「助けてくれて、ありがとう!」

 猿ぐつわが外れて首に垂れ下がっている30代前半の男が、私の前に来て礼を言う。

 身長は私より10㎝以上は高く、体格も良い。

 他にも猿ぐつわが外れかかっている人は何人か居たが、他の者たちは怯えた表情をして侵入者である私を見ていた。

「俺たちは拘束されていたが大丈夫だ。酷い奴らだけど、ここは人道上負傷者を先に出そう」

 確かに、この男の言う通り。

 でも何か違和感を覚えた。

 いくらサバイバルゲームに慣れているからと言っても、この状況下で素人にしては堂々としすぎている。

「снайпер?(スナイペル=狙撃手)」

「いや、そいつは只のстрелок(ストレローク=猟兵)だ……」

 第2次世界大戦で旧ソビエト(現ロシア)は、フョードル・アフラプコフ(スコア429名)、リュドミラ・パヴリチェンコ(スコア309名)、ヴァシリ・ザイツェフ(スコア257名)など、多くの優秀な狙撃兵を輩出していてスナイペルに対して尊敬の念が強い。

「つまり敵の狙撃兵に負けた者はスナイペルではなく、ストレロークと言う訳ですね。少佐」

「どういう事か意味が分からんが……」

「目を見れば分かりますよ、少佐」

「少佐とは誰の事だ?それに誰の目を見れば分かるというのだ?」

「見るのは誰かの目ではなく、貴方自身の目です」

「俺の目?」

「そう。同じリトル・グリーンメンの仲間でも、目的の為なら容赦なく囮に使ってしまう。そして仲間に仲間を殺させる。ヘリの墜落現場で貴方が使っていた卑怯な手口と同じ臭いがしてピンときましたよ、グラコフ少佐」

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