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鐘楼の白い鳩が飛ぶとき (When the white dove in the bell tower flies)  作者: 湖灯
*****卑怯な敵の罠(Cowardly enemy trap )*****
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【ナトー倒れる③(Natow is shot and collapses)】

 胸を開こうとして声を上げて止まったトーニの手元を見ると、締め付けられていたボタンが幾つか外されたことにより、重力に逆らって突き出すオリーブドラブのTシャツの胸が半分見えていた。

「カール。そこじゃねえ!」

 トーニに言われて、ようやく気付く。

 なんとナトー隊長の手が、上着のボタンを外そうとしているトーニの手を押さえていた。

 “隊長は生きている!!”

「「ナトー!!」」

 俺たちの声に、それまで我慢をしていた他の隊員たちも集まって来て、目を開けたナトーの姿を見て皆が涙を流して喜んでいたが、トーニが直ぐに持ち場に戻るように言った。

「ナトー大丈夫か?何処をヤラれた?」

「どこも」

「どこも?」

 確かに、どこもヤラれてはいない。

 ただ、頭の直ぐ近くを銃弾が通り過ぎていっただけ。

 敵の狙撃兵が頭を狙っていたから避けられたが、胸や腹を狙われていたら避けられなかったかも知れない。

 いや、避けられなかっただろう。

 無茶をしてしまった。

 しかし、あのドラグノフを持った青年の潔白を証明したかった。

 このまま戦闘が始まれば、玩具の銃を持っている確証がない限り、撃たざるを得ない。

「トーニ、なかなか兵長らしくなったな。敵の狙撃手はトーニの言う通り300~400前後で、実際の距離は370m付近だろう。カールを助けて素早く私を安全な所に移したのも、心配して集まろうとした皆を持ち場に留まらせた判断も良かったぞ」

「まっ、まあな……」

 トーニは照れて頭を掻いて笑った。

「ところで、ナトー隊長は何故死んだふりを?」

「……」

 カールに聞かれて、自分自身戸惑った。

 “死んだふり?”

 マズルフラッシュを確認した瞬間に、体を倒して避けることは決めていた。

 予想していた最も近い距離で、銃口を出た銃弾が届くまでの時間は0.3秒。

 ギリギリ避けられる距離。

 ただし敵が私の頭を狙っていたらという前提が付く。

 つまり、予想していた行動。

 ひょっとしたら、死んだふりではなく、超至近距離を銃弾が飛び去った衝撃で本当は気絶していたのではないだろうか?

 こんなことは、今までなかった。

 “何故、気絶した……?”

 今まで幾多の戦場を渡り歩いてきたが、戦場で失神したり気を失ったりしたことなどない。

 それが……。

「どうしました?どこか痛みますか?」

 いつもなら直ぐに質問に答える私の返事が遅いことに気の付いたカールが、心配して尋ねる。

「お返しだ」

 気を失っていたなどと正直に言えば、心配させてしまうだろうし、不安がらせるかも知れない。

 だから、咄嗟に嘘をついた。

「お返し?」

「そうだ。昨日、私のエロ場面集を見られた“お返し”だ」

「……」

 私の答えにトーニとカールが顔を見合わせた。

 “何!?”

「やはり隊長は、どこか怪我をしているかも知れない」

「メディカルチェックが必要だ」

「い、いや、私はどこも……」

 言い終わる間もなく2人が上着の中に手を入れて、半分むき出しになった私の胸や脇腹をくすぐり出す。

「な、なにをする!」

「隊長、我慢してください。メディカルチェックです!」

「いや~~~っ!あっ、あっん、あ~ん♡」


「はあ、はあ、はあ」

 2人をボコボコにして、ようやくメディカルチェックから逃れる事が出来た。

 いったい何のつもりだ。

 危うく、興奮しそうになったではないか。

 こんな所で興奮させて、責任はとってくれるのか?

 レイプでもするつもりだったのか?

 いや、違う。

 2人は心底私の事を心配してくれていたから、私が自身の気絶を隠して悪質な嘘をついたことへの報復攻撃に違いない。

 まだ少しモヤモヤする体を抑えて、衣服と装備を整え直し、再び戦闘態勢に戻る。

 “お遊びは、ここまで”

 ここからは、チャンと仕事に取り掛かる。

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― 新着の感想 ―
[一言]  さすがナトーちゃん❗  しかし、やり方が無謀すぎますね。笑  メディカルチェックは笑えました。笑  ナトーちゃんもみんなが大好きで、みんなもナトーちゃんが大好きなんですね。笑  とても微…
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