表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
鐘楼の白い鳩が飛ぶとき (When the white dove in the bell tower flies)  作者: 湖灯
*****卑怯な敵の罠(Cowardly enemy trap )*****
100/301

【ナトー倒れる①(Natow is shot and collapses)】

「LéMATリマットナトー班、出発します!」

「気を付けてね!」

 丁度駐車場に居たニルスが陽気に手を振ってくれた。

 ニルスは今日、国務省で行われる報告会に出席することになっている。

 市役所の事件後一般の過激派によるテロ行為は一旦落ち着きかけていたものの、最近ではリトル・グリーンメンが戦闘の指揮を執る事により活発化している。

“戦闘の指揮を執る”と言えば聞こえはいいが、その実情は一般市民の中に潜んでいる過激派たちの足並みが揃わなくなって来たので、強制的に集めて作戦を計画的に行うための措置と言っていい。

 その様な体制だからリトル・グリーンメン達は殆ど戦場では矢面に立たず、遠くから狙撃銃を構えて戦場での指揮や援護射撃を担う。

 過激派たちの目標は常に分離独立というところにあるのに対して、リトル・グリーンメン達の目的は我々SDF(自衛隊)隊員の抹殺。

 つまり無視することのできなくなったSDFを掃討するために、過激派たちを囮に誘い出して片付けるというのが彼らの目的で、そのために奴らは最新型の狙撃銃を持ち込んでいる。

「敵さん最近、やべーのを持ち込んでいるらしいな」

 移動する車内でトーニが、SVLK-14S狙撃銃のことを言った。

「ああ、気をつけろ。特に格闘戦の後は安全な場所に避難してから捕獲しろ」

“SVLK-14S(スムラク14エス)”

 これはスペツナズの標準狙撃銃であるT-5000の最大射程を、2倍も超える4,000mの化け物だ。

 当然4,000m先の目標までの到達時間は12秒を超えるから、動く人間になど当たりはしないが、その威力はやはり無視できない。

 特に我々SDFは過激派たちを射殺することが目的ではなく、捕まえることを目的としているので犯人たちとの格闘戦が多い。

 そのために格闘戦の最中に、過激派ごと撃たれる事案が増えている。

 T-5000より強力な破壊力を持つこの銃は、1kmくらい離れていてもボディーアーマーの2~3枚は軽く貫通してしまう。

 各国の派遣部隊でも最近問題になっていて、我々の部隊でも、先週マーベリックの部隊で1人が重症を負い過激派のうち3人が仲間によって射殺されるという痛ましい事件が起きた。

 3人のうちの1人は捕らえられた所を隊員ごと狙われたものだが、後の2人は逃げる所を撃たれ、それをビデオに撮影して我々のした残虐行為としてネットに拡散させた。

 こういう相手を陥れるために嘘の情報をバラ撒く行為は、昔からある古典的なもの。

 卑怯な行為だが嘘の情報を流す利点としては、世論を味方につけやすいということと、勝てば嘘が本当のことに替わってしまうということ。

 勝てば誰も調査をしない。

 もし負けた敵側から異議申し立てが出ようとも、戦争犯罪人として処刑してしまえば嘘は容易に隠すことが出来、調査しようにも肝心の現場指揮官が処刑されれば嘘だということを責任のある立場から立証できる人間そのものが存在しなくなる。

 だから我々はそのために各自が戦闘の様子をビデオに収めていて、このような事態があった際に直ぐに同時刻の同じ場所の状況を流し、相手側の嘘を本当のことに替えさせないように努力しているのだ。

 しかし戦闘中にズッとビデオを撮影しているので、市役所での作戦のときのように余り人に見られたくない恥ずかしい姿も撮影されてしまう。

 最近はリトル・グリーンメンたちの、この様な卑怯な行動が目立つようになってきているため、一部の過激派から信用も失いつつあるが、その分ドローンなどの間接的なテロ行為が増えて厄介な状況鏡になっている。

 高度5~20mほどの低空を飛ぶドローンを銃で撃ち落とすことは困難だ。

 市街地ともなれば、尚更なおさら

 なにしろドローン自体は薄っぺらい玩具のような物なので、銃弾を当てたとしても貫通してしまう。

 貫通した銃弾は、ドローンのバックにある建物まで飛んでいってしまうので、もしそこに人がいればOUT!

 だから市街地を低空で飛ぶドローンを落とすには、自らが装備するアンチ・ドローン・ジャマーの有効範囲内に入れてやらなければならないが、迂闊に飛び出すと敵狙撃兵の的になってしまう。

 今日はG-LéMATとLéMAT第3班で、イルピンの北西25kmに位置するボロディアンカの街に来た。

 地元の警察と打ち合わせをして、敵の活動地域の情報を手に入れ現場に向かう。

 向かったのはコミュニティー センター広場の奥に広がるベッドタウン。

 ここにドローンが数機出没して、通報を受けて急行したパトカーの傍で自爆した。

 幸い警察官も住民も近くにはいなくて怪我人はなかった。

 今回出動したメンバーは13人。

 G-LéMATからはトーニとカール、それに私の3名。

 それとLéMAT第3班のカービ3等軍曹を含めた10名。

 その中にはイルピンで運転手を努めたニール1等兵も居て、今回はそのニール1等兵が考案した対ドローン用新兵器の“こけら落とし”も兼ねている。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ