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空想科学オカルト小説 南方呪術島の冒険  作者: 雲居 残月
第六章 先住民の生き残り
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第三十八話 ねじれゆく人々と世界

 帰りの車では、ほとんど口を利かなかった。チマリの腕は兵士が止血して包帯を巻いた。

 レオナルドとギレルモは、森の城に戻ってきた。ギレルモは兵士たちに、チマリたちを工房の倉庫に閉じ込めるように命じる。そのあと二人で、フランシスコの部屋に行き、集落でのことを報告した。


「イバーラさん。先住民全員を連れてきて監禁するなど、許されないことです!」


 レオナルドは、怒りとともにフランシスコに訴える。


「今は緊急時だ。必要な措置を執るのが、俺たちの仕事だ」


 ギレルモはレオナルドに冷たく言う。レオナルドは、フランシスコの返事を待つ。人道的な立場から、自分に賛成してくれると期待した。


「私はギレルモの判断を支持する。全体の利益を最大化するのが私の仕事だ。先住民は、呪術で島民全体を害そうとしている。その実現が差し迫っているのなら必要な措置だろう」


「そんな」


 レオナルドは肩を落とす。ギレルモは胸を張り、集落での出来事を報告した。


「そうか。先住民の生き残りは、ディエゴの呪術について知っていたのか」


 車椅子の上で、フランシスコは硬い表情をする。彼の調査は不徹底なものだった。先住民たちは真実を語らず、呪術のことを黙っていた。


 フランシスコの決定を覆すのは難しいだろう。それならば別の提案をするべきだ。レオナルドは素早く代案をまとめる。


「呪術をかけられた人間を探して、全員島の外に隔離してはどうでしょうか。たとえば船の上などで呪術が終わるまで過ごしてもらうとか」


「対象は先住民だけではない。私も含めて、多数の島民が該当する。それらの人々を集めて動かさなければならない。今この島で、そうしたことをすればどうなると思うかね?」


 レオナルドは押し黙る。島民を大いに刺激して暴動が起きる。


「そもそも誰が呪術をかけられたのか、全てを把握しているわけではない。突然の眠りや虫の夢について、医者に相談した者はごく一部だろう。

 もし隔離するなら、当時生きていた人間をみんな調べなければならない。当時十歳以上と限定しても、五十九歳以上の全員が対象だ。不可能ではないが非現実的だ」


 フランシスコの言うとおりだ。


「今やらなければならないことは、先住民たちに呪術の解き方を聞くことだ。どうやら彼らは、呪術について知っているようだからな。

 また、テオートルという男と、他の先住民たちの行方も尋ねる必要がある。彼らが何をしようとしているかもな」


 フランシスコの目は冷酷なものになっている。目的のためには手段を選ばない。そうした恐ろしさを感じる。


「それではギレルモ、先住民たちから情報を引き出してくれ。ただし、紳士的な振る舞いを忘れてはならない。よいな」


「はい」


 ギレルモは決意の表情を浮かべて返事をした。


 報告は終わった。レオナルドとギレルモは部屋を出た。


「これから、どうするつもりなんだ?」


 レオナルドはギレルモに問う。


「まずはチマリを拷問する」


「なっ」


「イバーラさまの望みを叶えるために、密かに泥を被るのが俺の仕事だ」


 レオナルドは驚きの目でギレルモを見る。


「拷問は反対だ。イバーラさんも言ったじゃないか。尋問に留めるべきだ」


「それで効果が上がるのか? 昨日イバーラさまの足を見ただろう。事態は切迫している。のらりくらりしている暇はない」


 ギレルモの目は血走っている。その様子にレオナルドは全身を硬くする。


「それでも、やめるべきだ。やってよいことと悪いことがある」


「そうか。邪魔をするつもりなら、自分の部屋にいてもらおうか」


 ギレルモの拳が顔面に叩き込まれた。レオナルドは鼻血を出して廊下に倒れる。


「こいつを寝室に軟禁しておけ。手荒なことはしなくていい。しばらくのあいだ出られないようにしておけばいい。仕事の邪魔をされなければ十分だ」


 レオナルドは立ち上がろうとしたができなかった。取り押さえられたレオナルドは、怒鳴ろうとする。しかし頭が朦朧として声にならなかった。


 ギレルモは、冷めた目でレオナルドを一瞥する。そして全身に力をみなぎらせて、廊下の奥に消えていった。

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