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メフケケ森のメリークリスマス

作者: グラニュー糖*

「リスト!遊ぼうぜ!」


楽しそうな声が耳に入る。

外から聞こえているのだろう。だが……。


「寒いから無理」


そうだ。寒いのだ。

寒い日に無理に外に出ても風邪引くだけ。馬鹿は風邪引かないと聞くが、本当なのかもしれない。


「えー!何でだよ!今日は何の日か知らないのか?」

「……寒風摩擦推進週間?」

「お年寄りかな!?」


大声を上げて窓越しに話していたレインは窓から屋敷に入り、両手を腰に当てて叫んだ。


「今日は!クリスマスだ!!」

「うるさい!」


オレは持っていた雑誌で頭を叩く。

スパーン!!と良い音がした。


「痛っ!クリスマスで浮かれてもいいじゃないか!」

「とにかくオレはクリスマスはのんびり過ごすんだよ」

「やーだー!あーそーぼー!」


レインが腕を持ち、グワングワンと揺らす。

その勢いで雑誌がすっぽ抜けてしまった!


「あっ」

「ねー!リースートぉー!……あだっ!!」


飛んでいった雑誌は後ろに飛び、ちょうど部屋に入ってきたヘッジの手に渡ったのだ。


そう、ここはクノリティア。そこのヘッジやムジナの屋敷だ。ここがクノリティア内で一番暖かいので、滞在させてもらっている。


その屋敷の主であるヘッジははっきり言ってレインと仲が悪い。

なので……レインの頭をオレより強く叩いたのだ。


「騒がないでくれるかな?徹夜明けで頭が痛いんだ……」


ヘッジは半目で面倒そうに唸った。


「ヘッジ、リストが遊んでくれないんだ」

「そういう時もあるだろ。レイン、お前ももう子供じゃないんだ。弟も妹もいるのにみっともないぞ?それに、どうしてクリスマスを楽しもうと思ったんだ?」

「い、言うじゃねぇか……。呪術師は信心深くねーとやってられないんだよ」


こめかみをひくつかせて震えるレイン。

だが諦めたのか後ろを向いた。


「くそっ!いーよいーよ!!オレは一人でもクリスマスするからな!」


レインは怒って出ていってしまった。

残されたオレはヘッジを見た。


「……クリスマス、か」

「行くのか?」

「しょうがないからな」

「……レインはおそらくメフケケに向かったと思う。あそこにはクリスマスだけ見られる特別な現象があるからな」


特別な現象?流れ星はあの森ではいつでも見れるが……聞いたことない。


「わからないって顔してるだろ。ハレティの雨の一件から見られるようになったらしいからな」


「ハレティの雨」というものは、ハレティは水を使うのだが彼が死んだことでその行き場のなくなった力が天候となった現象である。

その際、ハレティが生きていたときの技術が戻ってきたので機械などの概念が戻ってきたのだ。


「でも、それを実現させるには『チェーン・ザ・ミルキーウェイ』ってのが必要なんだ」

「チェーン……ミルキーウェイ……?うーん……一回聞いたことあるような……ないような……」

「まぁ簡単に言えば、ツリーのモールだな。それが天の川のように大きく綺麗だからそう呼ばれてるんだ。あれはメフケケの星を呼び、留める鎖の役割をしているんだ。場所は一番星と近いと言われているクノリティアの雪山の頂上に……って、どこ行った!?」



場所を聞いたあたりでオレは外に出ていた。

レインには良くしてもらっている。さっきは申し訳ないことをしてしまった。だから、サプライズとして受け取ってもらえたら……。


「ふふ、あいつの喜ぶ顔が楽しみだ」


オレは雪山を見て気を紛らわせるために笑った。


____……えぇー……登山?雪山を?嘘ぉ……。


これが本心である。


「あぁ……鞭凍りそうだなぁ、やだなぁ」


そう呟いていると、後ろから声が聞こえた。聞き覚えのない声だ。クノリティアの死神のうちの一人かもしれない。


「君ですね、リストというのは」


振り向くと、長く白い髪に黒いメッシュ。パンクな黒い服に似合わない気弱そうな赤い目をしている十七、十八くらいの男の人がいた。


「誰だ?」

「私は『クロウ・エボニー』。たまたまこの辺を歩いていると、スノーのお兄さんによく聞かされていたあなたを見かけたので、追いかけさせていただきました」


クロウと言った彼は深々とお辞儀をした。

こんなところなのに半袖か……と思ったが、背中に生えている純白の翼を見て口を閉じた。


「スノーの兄……レインか」

「はい。あの……山、登るんですか?」

「そうだけど」


オレはもう一度頂上付近を見た。


「山頂……あぁ、チェーン・ザ・ミルキーウェイですね」

「知ってるのか?」

「もちろん。レインさんが取りに行こうとして諦めていたそうですけど……」

「諦めたのかよ!」


あいつならまぁ諦めそうだ。

しかし、知っていたのか……。


「登るなら私が連れていきましょう!」

「いいの、か……っ!?」


急に高度が上がる。

否応なしにぶっ飛ばそうとしていたのか。

……ってか……!


「ぎゃあああああああああ!?」

「初めは怖いですけど、慣れますよ~」

「慣れますよ~、じゃない!ぼぼぼ、帽子はっ!?下駄は!?」

「持ってます」


寒いし重力すごいし目が回るし下半身固定してないし!!

死ぬ!死ぬ!


「ほら、下見てくださいよ!綺麗ですねぇ」

「……!」


言われた通り下を見る。

一面真っ白で、ここは本当にさっきまでいた世界なのかと思えるほどに美しかった。


____この景色、メフケケでも見られたら……。


いや、不可能だ。

オレには魔法なんて使えない。使えたとしても……季節外れの桜が出てしまうからな。


「じゃあ山頂まで行きますね」


『山頂』と言っているくせに下降していく。

それが魔界ジョーク?それなら……。


「いいぜ」


楽しんでいくしかない。



「よっ……と」


少しの岩肌感と雪があり、滑りやすくなっている山頂に降り立った。


「星を呼ぶ準備をしておくので、緊張をほぐしておいてください」

「星を呼ぶ?」

「星を呼ばないと顕現しませんからね……はい、じゃあここに立ってください」


クロウが足でポンポンと踏んで指し示す。

そして何かよくわからない言葉を呟き始め……。


「キャッチしてください!」

「うええっ!?わっぷ!!」


でかい。白い。モッサモサ。そしてキラキラ。あとでかい。


こんなに簡単に入手できるとは……って、八割はクロウのおかげで、もう二割は情報源のヘッジのおかげだが。


「どうですか?それが求めていたものです」

「若干ダイジェストっぽい……」

「何か言いましたか?」

「何も。ほとんどお前のおかげだ、ありがとう!」


クロウの両手を握り、ぶんぶんと振る。

彼は動揺していたが、にへらと笑った。


「つっ、ついでにどこに向かうのですか?」

「メフケケ」

「あ、私の活動拠点ですね……わかりました、そろそろ星が降る時間ですし、また連れていきましょう!」

「え?ちょ」


言いかけたときには遅かった。

後ろからがっしりと掴まれ、体は空を飛んでいた。


「あああああああ!!!」

「耐えてくださいね~」

「こっち!慣れてないから!!」

「魔界はみんな(なお三分の一くらいのもよう)飛びますよ~慣れましょうね~」

「ひいいいいい!!!」


__________


「____サニー、星は来そうか?スノー、料理は?」

「もうそろそろ時間だよ、お兄ちゃん」

「……うん。できたよ」


メフケケの森……。

別名、星の森と呼ばれるほど星が多いしよく見える。


この森には一際大きな木があるのだが、この木の上に星が数分間留まるという。それがクリスマスツリーのてっぺんの星のようだと、木と直接話した大地の神に教えてもらったのだ。


肝心の本人は用があって来られないそうだが、せっかく教えてもらったのだから楽しもうとサニーとスノーはもちろん、リストも誘ったのだが……。


「……ったく、寒いから嫌ってそんなこと……」

「リストさんも無理に誘ったら悪いよ」

「うんうん」


いつものお礼も兼ねたかったのに……。


「はぁ……」


ため息をつく。

そんなオレをサニーとスノーは顔を見合わせて悲しそうな表情をした。


「……ーーーっ!!!」

「あれ?お兄ちゃん、何か聞こえない?」

「は?何言って____」


……悲鳴だ。確かに悲鳴が聞こえる。

それに、聞いたことのある……!


「あああああ!」

「あっ」


ドスッ!という音と共に白いものが落ち、もう一回ドスッ!という音がした。

何事かと草木を掻き分けていくと、天使の羽が……いや、片方の翼が丸ごと落ちていた。


「うわああああ!!」


わりとガチな悲鳴を上げ、踵を返す。

すると落ちてきたもう一つが……リストが帽子に葉っぱを乗せた状態で目を回していた!


「リスト!?」

「うぅぅ……はっ!!」


リストは何かモフモフとしたものをクッションとして落ちたため、ダメージはほぼ無いに等しかった。

それどころか、キラキラと瞬いて……。


「大丈夫か!?あと、それって……」

「『チェーン・ザ・ミルキーウェイ』……だよ」

「もしかして、オレのために取ってきてくれたのか!?」


オレは目を輝かせてた。

リストならばそうされると少し意地悪をしたくなるだろうが、今はそんな元気は残っていないだろう。リストは大人しく、ニヤと笑った。


「あぁ、そうだ。サプライズプレゼントだ」


オレはさらに目を輝かせ、とても嬉しそうに笑ってリストに抱きついた。


「ありがとぉーー!!!」

「痛い痛い!擦り傷と微妙な凍傷に響く!!」

「あぁっ、ごめん!それなら……サニー!」


草木の向こうにいるサニーを呼び、治癒してもらった。スノーは?と聞くと、クロウの翼を探しているらしい。

……まぁあの二人はオレより前から仲良かったって聞くからな……。


「そういやアリアとレチタは?」

「寝てるよ。ご飯を口の中に突っ込めば良いと思う」

「おいおい……」


サニーの言葉にリストは呆れる。

間違ってはいないから何とも言えないけど。


「よし!そろそろ星が出てくるし、それ、飾っちゃおうぜ!」

「オレがやろうか?」

「リストはゲストだし、ゆっくりしてて。それに……」

「飛べないから、だろ?」

「正解!って、もー、怒んなよー!」


ツリーにグルッと何重か、『チェーン・ザ・ミルキーウェイ』を巻き付けた。

白くてキラキラしていて、それだけでも美しいのに、一瞬強く光ったそれは一番星をツリーの真上に固定した。


「わぁ……!」


サニーが感嘆の声をあげる。

スノーもクロウの背中に翼を取り付けながら空を見上げた。

リストはツリーの前に用意した、長いテーブルの回りに置いた椅子に座り帽子を取ってうっとりと眺めていた。


「……さてと!翼が付いたらクロウも座って!」

「いいのか?」


まだ翼がついておらず、黒髪の状態のクロウは驚いた。


「もちろん!なんたって、今日は……クリスマスなんだもんね!!」


そして、こうも続けた。


「メリークリスマス!!」

どうも、グラニュー糖*です!

クリスマスは楽しめましたか?

楽しめましたね、はい!(おいおい)


この小説の構想は24日の昼に作りました。

内容は24日の(サボりながら)、25日の昼から(サボりながら)作っていました。

表紙は30分です。


なんでルビになってるんだろう……


では、また!

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