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鉄血の軍人の異世界譚  作者: ILLVELG
12/16

mission3-1


 ゲイルを握り、あたしは立ち上がる。

 毒の痛みは意識の外に追いやられ、なくなっていたはずの左手と右足がなぜかある。 なんだこれは。

 頭のなかに語りかけるように響いたウンタラカンタラ解放の声が聞こえたが気のせいだろう。 よくあることだ。

 いまはそんなことはどうでもいい。

 たかがスリをかわされてガンくれただけで逆ギレするようなクズどもをこのゲイルで蜂の巣にしてやらなければならない。

 あんなにかわいい無関係なベニヒメを何の目的でさらったか知らねぇが―――殺される覚悟はできているに違いないさ。

「どこに逃げようが―――追い詰めて殺す。」

 

 よくも怒らせたな。

 アメリカ軍最強の小隊【ゲイル小隊】を。

 そのリーダーを。

 

 ゲイル小隊をなめたやつは全員血祭りだ。

 

 なんでかは知らないが、最先端技術で作られたヘルメットのマスクに表示されるHUDのように、視界に色々な情報が表示されてる。 示されている文字情報は英語。実家に帰ってきたかのようで、久しぶりに英語を見た。

 さて。

 そこに真っ赤っかに染まった下向きの三角マークが3つ、青く染まったマークがひとつ。

 そこか。 まだあまり遠く行っていないな。

 待ってろよてめぇら。

 あたしは右足から一歩踏みしめた。

 ガシャッ。

 鉄が木製の床を叩く。

 乾いた音と、冷たく硬い音がこだました。

 モーターの動く小さな駆動音が失われた右足から響く。

 

「逃がさねぇぞ。」

 

ドンッ!!!

 

 一心不乱にあたしは走り出す。

 階段を飛んで下に降り、柱をつかんで大車輪のごとくぐるっと回って反対側の玄関へ跳ぶ。

 ドアを蹴破りそのまま黄色い砂の地面に滑りながら着地。

 砂利と砂が巻き上げられ、あたしの怒りを表すかのように飛び散る。

 野次馬どもがなんだなんだとあたしを遠目に見始めた。

 あたしはゲイルを腰にくくりつけ、クラウチングスタートの構えをとる。


 野郎共はだいぶ向こうへ逃げたようで、目視では確認できない。

 だがあたしの目には真っ赤なマークとしてそこに見えている。

 百メートル十秒で走りきったあたしの脚力をなめんなよ。

 

ドンッ!!!

 

 地を駆ける。

 想像以上にスピードが出てきて神経がそれに追い付かず、つまずきかける。

 速くて足がなかなかうまく回らないが、結果走れてるので気にしない。

 いまなら転んだところで対して痛くもないだろう。

 とにかく追うことが重要だ。

 いくらか右に曲がったり、左に曲がったりしていると、ようやく男どもが見えた。ベニヒメが泣き叫び、周りがそれを見て騒いでいる。殺す。

 何人かの男がそれを止めようと動いていたが、逃げる男どもが速くて追い付けないようだ。

 この短時間であそこまで逃げ切るなんていい足してるじゃねぇか。殺す。

「てめぇらぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

 あたしは吼え、男たちはあたしの姿に驚く。

「なっ!!??」

「おいなんでだよ! なんであいつ死んでないんだよ!?」

「うそだろ!!! バシリスクの毒だぞ! 意味わかんねぇぞ!」

「速い! 早く逃げろ!」

 わあわあ騒いで泣き叫ぶ幼女を担いで逃げる男とそれを追いかけるあたし。 きっと観客どもは大体察しただろう。

 あたしは背中のゲイルを左手でとりだす。

 それをくるりと回し、 両手で構える。

 走りながら、アイアンサイトであいつらの足を狙う。

 激しく揺れる照準を気にせず、大雑把な狙いをつけてあたしは引き金を引いた。

 

ダダダッ!ダダダッ!ダダダッ!!!!

 

 かなり大きめの爆発音がハイテンポでやかましく鳴りたてる。

 超高速で飛び出たフルメタルジャケット弾は激しく走りながら撃ってたもんで精度が悪く地面に当たる。

 それでも数打ちゃ当たるもんで、九発中五、六発が一人、足に命中した。

「うっ!? ぁあっ!」

 足を撃たれた男が前に倒れる。 残りの二人は何が起きたかわからぬまま、後ろを見る。

「なんだ!? やつは何をしてる!?」

「いでぇよ!! あしがっあしがぁっ!」

 どうやら当てたところがなかなかいいところだったようで骨まで貫いたようだ。 普通撃たれたくらいで倒れるわけない。

「くそっ! こいつは捨て置くぞ!」

「はぁっ!? おっおいまてまってくれ! おいていかないでくれ!」

 男二人は撃たれた男を見捨てて走り出す。

 あたしもそのまま追いかける。

「ひっひぃぁぁあゆるしてくれええええええ!!」

「うるせぇ!!!!!」

ダダダァッ!

 あたしに殺されると思った男はがばっとうずくまって身を守る。

 それをあたしはやかましく感じて三発撃ち込んだ。 全弾命中。

 その男の体を飛び越え、更に追う。

 さらにゲイルを構える。

 アイアンサイトから野郎共の背中を睨み付ける。

ダダダッ!

 いつもならこのあたりでリロードに入るため、あたしはなかばルーティンと化したリロードに入ろうとする。

 弾箱を外して捨てようとする。

 あれ?

 待てよ。

 あたしこいつに弾込めたっけ?

 ふとした違和感がようやくここで仕事をした。

 最後に確認した限り、こいつに弾は入ってなかった。 そして、弾を込めた覚えもない。

 ………。

 ………まあいいや。

 撃てるようになっているならいまはそんなことはどうでもいい。

「くそっ! 追い付かれちまった!!」

 ようやくあたしたちの距離が縮まり、必殺の距離にはいった。

 この距離であればどれだけ乱れていようがどれだけ早く動いていようが、絶対に撃ち殺す自信がある。

 何でだか知らないけど、よそさまはあたしの必中必殺の距離を勝手に≪レンジオブクルーエル≫と呼んでいる。

 誰だっけなぁ………こんな物騒な名前を言い出したの。 ヒレンだったっけ。

 

 *スキル解放。

 *≪虐殺主義者レンジオブクルーエル≫が解放されました。

 

 あ?

 うるせぇなあさっきから。

「ひぃいいいっ!!??」

 男どもがいきなり立ち止まり、懐のでかいナイフを抜き出す。 なんだそのばかでけぇナイフは。

「やめろっこっこないでくれぇっ!」

 雑なモーションから繰り出されたそれはひどく精度が悪く、正直回避するまでもなく当たらないと感じたんだけど。

 それでもあたしはそれをかわす。

 避けながら、男の懐へ入り込み、胸を撃ち抜く。

ドンッ!ドンッ!ドンッ!

 撃たれた男はそのまま倒れ、びくびく痙攣する。

 さぁ。

 残るは………

「ひっひぃいいいっ………!!!」

 ベニヒメを抱えた男だけ。

 一思いに殺してやろうかと思ったが………。

「おい。」

「ひっぃぁぁっ!」

 男が錯乱して情けない悲鳴をあげた。

 あたしは男を掴んで持ち上げ、顎の下に銃口を押し付ける。

「ひぎぃっ!?」

「余計なことをするなよ。 余計なことしたら………てめぇの頭から赤い花火が吹き上がるぜ。」

 男はガチガチ歯をかたかたして恐怖に耐える。

「言えよ。 こんなことをしろと命令を下したやつは誰だ?」

「なっ何をいってるんだ!?やめてくれっ、殺さないでくれ! 俺が悪かった!!!」

 ………あー。

 めんどくせー。

 英語じゃ言葉が通じないんだった。

 男から解放されたベニヒメは気を失っている。

 しかたねぇ。

「おまえら えらいやつ だれだ。」

 カタコトになったけど、これで通じるだろうか。

「へっ!? えぁっ………!」

 なんか答えあぐねてるみたいなんで催促する。

 ぐりっと銃口を押し付けた。

「あぁぁぁぁぁわかったわかったわかったわかった!!! 言う!言うからぁ! 」

 男が涙を垂れ流しまくりながら、叫ぶ。

「バンバドだ! あそこの屋敷にいる! おれぁバンバドからこのガキを連れてこいって言われてたんだ! 殺そうとしたのは悪かった! 許してくれ! いのちだけはっ! どうかいのちだけはぁ゛っ」

ドンッ!

 男は倒れる。

「ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!!」

 撃ったのは金玉だ。

「よかったな。 あたしに銃口を向けられてまだ生きてる ………あの世で自慢してくれてもいいぜ。」

 あたしは男が指示を受けたバンなんとかをぶっ殺しにその屋敷とやらへ向かう。

 ベニヒメは一旦ここに置いておく。

 これ以上ベニヒメになんかしようとするやつはここにはいないだろう。

 二人何だか知らんやつで攻撃されてびくりとも動かず、金玉を撃たれた男は倒れてじたばた暴れてる。

 群衆は恐ろしいものを見るような目であたしを見ていた。

 シッ。

「見せもんじゃねぇぞ。 さっさと消えろ。」 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お頭っ! 何だかやばいやつが来ましたぜ!」

「あぁ? 誰だぁ………この天下の大傭兵ゲラートさまに向かってくるとはいい度胸じゃねえか。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

虐殺主義者レンジオブクルーエル:パッシブスキル。 使用者より五メートル以内に入った敵に対して敵の能力をすべて半減させる。状態異常:恐怖(大)を付与する。

 

 状態異常:恐怖:精神系状態異常。 効果の大きさは対象のメンタルの強さによる。 ランダムにさまざまなマイナス効果が表れる。 対象のターゲットサイトを自らに強制移動させる。

 

 

 

 

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