mission0
あぁ。
痛いなぁ。
どうしてあたしがこんな目にあわなきゃならないのだろう。
速射砲に撃ち抜かれ、大量に穴の空いた右足。
灼熱の刃に焼かれ、無くしてしまった左腕。
無理な体勢を取り続け、痣だらけの左足。
そして.....胴体を大きな槍が貫いている。
痛い。
もう、それしか言えない。
「ひゅー………ひゅー………」
あたしの掠れた呼吸音だけがきこえる。
あたしを貫いている槍は後ろの壁に突き刺さっており―――あたしの下半身は悪いところをやられてしまったのか全く動かない。
唯一、動くのは………アサルトライフル―――【GALE】を持った右腕と、頭だけだ。
あたしは、前を見る。
「無様なものだな、≪セイバー≫。」
男の姿があった。
黒いベレー帽に、黒いコンバットスーツに身を包み、階級の高さを表す紋章を身に付けている。わずかに見えるスキンヘッドにはタトゥーが見える。
「≪セイバー≫の名をもつおまえも所詮小娘。 やりようはいくらでもある。」
痛い。
寒い。
熱い。
苦しい。
助けて。
「知っていたか? 」
やめて。
何も知りたくない。
「おまえはもう要らない。」
ふざけんなよ。
やれっていったのは、てめぇじゃないのか。
「安心しろ。 骨はちゃんと埋めてやる。一足先にみっともなくやられた、仲間と共に……クソ溜めのなかにでもな。」
意識が遠退く。 あたしは、それを防ぐためにゲイルを握る右手に力を込めた。
許さない。
それだけは確かな意志として右腕を動かす。
目の前の男に照準を合わせる。
本当だったら両手で合わせるはずのそれは右腕だけでは持ち上げるにも苦労し、照準も定まらない。
「なんだ? ………これ以上戦ったところで何の利益もないだろうが。」
男は鼻で笑う。その間にも合わせる。 穴の空いた体で。
あたしの体に死神の鎌が添えられている。
死というものはこうやって静かに訪れてくるものなのかと。
あたしはふと思った。
あたしは最後の力を振り絞って。
ゲイルの引き金を引く指に力を込める。
その時男の顔がはっきりと焦りに変わった。
そうして男は手に持っていたアサルトライフル―――Matlix100をこちらに向け。
あたしが引き金を引き切る前に。
「この死に損ないが!!!」
撃つ。
たくさんの銃弾があたしのからだの中に撃ち込まれていく。
新たな激痛がいくつも生まれ。
真っ赤な体液が飛び散る。
からだの中に次々と大きな穴が開く。
何度もからだが衝撃と激痛で魚のように跳ねる。
意識がだんだん白くなっていく。
痛みと喪失感とがないまぜになっていく。
ぐちゃぐちゃとした思いが混沌と成り果て、あたしは涙を流す。
どうして。
どうして。
どうして。
やめて。
もうやめて。
やめてください。
だれか。
だれか。
たすけて―――
これは、あたしの物語。
理不尽ともいうべき運命があたしからすべてを奪い。
こことはまったく違う、不可思議な世界へ旅して。
あまたの人々と出会い。
そして―――再び異境の地で戦うお話。