表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ダイバー  作者: パイシー
4/10

行間 一

 欲しかった。ただただ、欲しかった。自分の母親は仕事が忙しいと言って知り合いを預けた。でも、その知り合いは私を決してかわいがってはくれなかった。

「ねえねえ、ちょっとこれをやってみてよ」

 毎日のように色んな機械を見せられて、ただ要求された操作をする。まるでモルモットのような生活。他の子供はさも当然かのようにランドセルを背負って走っていく。

 でも私は違う。色んな機械を渡されて、ただ黙々とそれをいじり続けるだけの毎日。私を引き取ったのは、ハッキリ言って天才だった。人に教えるのは苦手だったようだが、向こうは向こうなりに頑張って私に勉強を教えてくれた。お陰さまで高校程度に通える程度の知識は付いた。

 そしてある日、私はその人に尋ねた「どうして私は学校に行けないの?」と。

 その人は答えた。「あなたは特別だから、まだ公の場に出る訳にはいかないの。悪い大人に連れて行かれてしまうのよ」と。

 まだ中学生ぐらいだった私には、全く分からなかった。

 母親がバイオリンをくれた。でも、私には弾けなかった。母親は忙しい時間を割いて私にバイオリンを教えてくれた。初めて曲が弾けた時は、思わず大声で喜んだ。

 「もう大丈夫」と言われて高校に通うことになった。そして優秀な成績を認められて、気がつくと生徒会長という椅子に座っていた。だけど、何故か他の役員は役立たずばかり。言ったことも理解できないし、私なりに学校を盛り上げようとしても、「面倒くさい」とかの一言で片付けられ、気がつけばひとりぼっちになっていた。

 テレビで見た高校生というのは、友達に囲まれて、帰りにハンバーガーを食べながらだべったりする。そんなものを想像していたが、全く違った。結果は今も昔も一緒。ただ、目の前の出来事を機械のように処理していくだけ。私は感情のない機械だった。

 そんな時、『彼』が生徒会にやってきた。それも、私に対してそれなりに好意を示してくれているようだった。オマケに私の身元引受人と接点もある。驚くほど近い距離にいた。

 彼は、私にとっての青い鳥なのかもしれない。本で読んだ、幸せを運んでくれる青い鳥。私を機械から人間へと変えてくれる魔法の鳥。

 だから、絶対に手に入れなくてはならない。鳥の方から現れてくれたのなら、絶対に逃すわけにはいかない。

 捕まえた鳥は、鳥かごに入れて私以外の目に触れないようにしないといけない。『彼』だってきっと賛成してくれる。

 だって、私と『彼』の出会いは運命と言ってもいいものだったのだから。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ