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world police  作者: 真田丸
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第3話『少女の名は』

目を開けると、少し汚れの染み付いた天井がうっすらと見えてきた。この組織に所属してから何度も何度も目にした光景。


そう、翔太がいる場所はworld policeの中に設置された医療保健室である。


「お、やっとお目覚めか

全く、無茶をどれだけしたら気が済むんだ?」


そう声をかけてきたのは翔太の寝ているベッドの隣の椅子に座り込む、長い艶やかな黒髪を後ろでまとめた女性というよりかはというよりかは、背の高さからいって美しい少女といった方が的確であろう人だった。

名を華連といい、この怪我人の多い組織に設置された医療保健室の部長である。


「すいません……

そういえば、キャッシュさんとあの青い髪の少女は?」


ベッドから起き上がろうとすると体の腹部に痛みが走る。思わず「痛!」という声がもれる。


「はぁ、無理に動こうとするな 私が回復魔法をかけてやったからといってまだ傷が無くなった訳じゃない

最初に運ばれた時には骨が何本か折れていたがな

まあそれは全部直してやったがな」


得意げにそう話す華連。

その姿だけをみれば可愛いんだけどな~と残念に思う翔太。

なにしろ彼女は今年で28歳、立派な大人である。


「ありがとうございます

それよりあの2人は?」


「ああ、そうだったな

安心しろキャッシュはもうすっかり元気になっていつも通り訓練所で修行の続きをしている」


「よかった~

それであの青い髪の少女は?

たぶんあれ誘拐何なんかだと思うんですけど大丈夫なんですか?」


「ん? ああ、あの組織に捕まえられてたっていう娘か

ちゃんと保護して今はベッドで休んでる

恐らくもうそろそろ目を覚ますと思うぞ」


一つ一つ思い出すように語る華連。


「なんなら、会いに行って見るか?」


その提案に翔太は深くうなずく。彼女がどの様な経偉で捕まったのかを知りたいと思ったからである。


「じゃあついてこい

そこに車イスがある 好きに使え」


彼女なりの気遣いをしてくれたのだろうと思うが遠慮しておこう……


「いいえ、大丈夫で~す

もうちゃんと立てますから」


わざと大袈裟にそう言い、ベッドから抜け出す。


「そうか、じゃあ来い」


せっかくの厚意を否定され気を害したのか言葉にトゲが出ている。

まあ気にしないしよう……俺はそう決めた。



しばらく華連についていくと右側に保護対象者管理部屋と書いてある場所に差し掛かった。


「ここだ、あの少女がいるのは」


華連がその部屋を指差し、そう呟く。


「なぜ、部屋が一般の怪我人と分けてあるんですか?」


とこの部屋を見たときに感じた疑問を口にする。ただ手当てをするだけなら分ける必要はないと思うのだが


「それは、保護対象となる人間は何かのトラブルに巻き込まれているから、その恐怖などを取り除き、精神を安定させる必要があるからだ」


「なるほど」


「さあ無駄話はもういいだろ

さっさと中に入るぞ!」


華連の折れてしまいそうな細い腕が扉を開く。


例の少女はその入り口のすぐそばのベッドで眠っていた。


最初に見たときはあまりよく分からなかった顔がはっきりと翔太の目に映る。思ったより小柄な少女。年齢は小学6年生ぐらい。目立った傷は無いものの服がとても汚れていることから、まともに生活が出来ていないということが伝わってきて翔太は心が傷んだ。

とその時、彼女の目が開く。その眼の星空のような美しさに見とれる翔太。少し頬が赤くなる。


「お なんだ翔太 こういう娘が好みなのか?」


それに気付いた華連が翔太を小馬鹿にする。


「ちがいますぅ ただ目が綺麗だなって思っただけです!」


慌てて翔太は首を振って否定する。


「あなた達は………」

青い髪の少女が初めて口を開く。


すると突然「ううぅ」という声をあげが苦しそうに頭を押さえる少女。

その反応に戸惑う2人。


「おい、いったいどうしたんだ?」


「また、また……連れていかれちゃう

みん…な いなくなっちゃう……………」


か細い声を絞り出すように発する少女。


「おい、いったいお前に何があった?」


再度、華連が話しかける。


「いやだ、いやだ、いやだ………もういやだぁぁーー!」


いきなり叫び声をあげベッドから飛び出す少女。そのままドアへと向かっていく。


とっさの事で反応が遅れる翔太。


「待て!娘!!」


華連の小さな体から発せられたとは思えないほどの声が部屋中に響く。それと同時に少女の動きが止まる。

華連の魔法で生まれた、多数の魔方陣から出る鎖が彼女の動きを封じていたからである。


「ったく、こんな所で魔術を使わせるなよ…」


「いやだ、放して!」


「落ち着け娘! 私達はお前を保護しているだけだ!

事情をきちんと落ち着いて話せ」


言い聞かせるようにそう少女に語りかける華連。その言葉で力が抜けたようにへなへなと座り込む少女。


「よし、じゃあ事情を聴くからここの椅子に座れ」


椅子を引いてそう促す。素直にしたがう少女。翔太と華連はその向かいの席に座る。


「じゃあ、まず始めに名前と年を聞いてもいいか?」


なれた口調でそう問いかける華連。


「私の名前はレティシア。14歳です。あなた達の言うところの魔術サイドの世界でカヒナ王国の次期王女といわれていました」


一言目から驚くことを言う少女。


王女様だと……しかもカヒナ王国って話によるとあっちの世界の4つある王国の一つだぞ…


「じゃあなんでこちら側の…つまり科学サイドの世界に来たんだ?」


「私のいたカヒナ王国はあなた方の開いた『扉』の出現場所なのです

我々はその調査のための部隊を送りました

しかし、いっこうに彼らが戻ってこないためその場所には立ち入ってはならないと言われていました

ですが私は興味本意で何人かの仲間と一緒に調査にいってしまったのです」


どこぞのバカが開いてしまったという『扉』はお互いの世界の切れ目。宇宙船に穴が開いた状況と同じように、そこに近づいた者はその中に強烈な力で引き込まれてしまう。

その被害に彼らは遭ったのだろう。そして彼女も…


「そして」


「なかに引きずり込まれてしまった…」


翔太がそう続ける。


「はい、そして私は一緒にこちらの世界に来てしまった生活していました

そしてこの世界に来てからしばらくたった頃、私達のような異世界から来た者を受け入れてくれる法律ががあることを知りました

それの適応者である私達は カナガワ という場所で住むことを許されそこで1年間暮らしていました」


少し口調が明るくなっていくレティシア。


「しかし…この世界での生活にも馴れてきたその時でした…」


その顔が急に険しくなる。


「私達は襲われたんです…

気がついたときにはどこかもわからない荒野に連れていかれていました

私達は移動式魔法を使って彼らから逃げました」


そこで一旦言葉を区切るレティシア。


「それでどうなったんだ?

逃げ切れたのか?続きを教えろ」


華連が前のめりになって催促する。


「はい、彼らからは逃げ切ることが出来ました

でも、同じ様なことが頻繁に起こるようになって…」


「役所には相談しなかったのか?」


「しました

でも、そのときは色々な場所の整備とか戸籍の改正とかがあって忙しいからムリだって言われました」


「あの時は世の中が混乱したままだったからな

しっかし、市民の悩みも聞いてやらんとは、とんだ政治だな」


毒舌を吐く華連。


「だから私達はいろんな所逃げ回りました

それでもまだいろんな人が追いかけてきて…」


「みな、同じ格好や特徴がなかったか?」


そう尋ねた華連の意図が翔太には理解できた。恐らくこの人はあの2つの秘密組織の関連を疑っているのだろう。


「いいえ、全然違う服装で

けれど、皆共通して私を拐おうとするんです!

私を守ろうとそばにいた人は…殺されてしまいました……」


「そして、あの闇取引の奴らに捕まったと言うわけだな?」


「そういうことです」


レティシアが小さく頷く。


「オーケーだ、大体の状況は分かった

じゃあまだお前を狙ってくる輩がいるかもしれんということか」


「はい、だからもう皆さんの近くにはいることは出来ません

助けてもらったあなた方を危険にさらすわけにはいかないので」


そう言って立ち去ろうとするレティシアの手を華連が強く握りしめる。


「待て」


「放してください!」


手をほどこうとするレティシア。そんな彼女に華連は優しく語りかける。


「何を恐れることがある、ここは世界一の力を持った平和維持組織world policeだ」


「え…world policeってここが!?」


驚いたように辺りを見回すレティシア。

あちらこちらにある世界の地図に鳩の羽に2つの手が握手をしているというデザインのworld policeのマークを彼女の目がとらえる。


「ホントだ! じゃあ私はworld policeに助けてもらったんですね」


「そのとーーり」


「じゃあ何であなた方みたいな小さな子供と高校生がいるんですか?」


な……そんな事をあの人に言ったら…

恐る恐る隣を向く。

そこには案の定、恐ろしい顔をしている華連がいた。


「えっと……どうしたんですか?」


ただならぬ雰囲気を感じ取ったのか、ためらいがちにそう尋ねる。


「私は……私は 子供では無ぁぁい!!」


いきなり魔方陣を発動させる華連。


やばっ とめねぇと!


「先生ちょいまち!」


暴れる華連の手を無理やり捕まえる。


かなりの力で華連を床に押さえつける。

「ドベェ」華連がうめき声を上げる。


「放せぇ私はれっきとしたレディだ!」


「レディだったらもうちょっと落ち着いて下さい!」


「あの、私なにか悪い事を言ってしまいましたか?」


焦った様子のレティシア。


「言った!! 私は28歳、正真正銘の成人だ!」


「すいません! 怒らせる気は無かったんです」


「ふ、分かったならいい

それより翔太、いつまで私を押し付けているつもりだ」


「はぁ、そんな事で暴れないで下さい」


押し付けていた手の力を抜く。


「そんな事だと! 私には重要な問題だ!」


「はいはい、分かりました」


「あのところで翔…太さん」


レティシアが恐る恐る話しかける。


「ん? 何?」


「そちらの女性が28歳ってことは……あなたは40歳ぐらいなんですか?」


レティシアが何を言い出すのかと思えば……

なぜこの俺が立派なおじさん認定されなきゃならねーんだ…

翔太は


「いやいや俺は本当の高校生だから!」


「あ、そうなんですか

でもそんな年齢でこんな組織に入れましたね」


もっともな質問だと翔太は思った。

この組織の中でも高校生以下の年齢は片手で数えるぐらいしかいないであろう。そもそも犯罪者相手に普通なら武器の扱い、筋力の差などで負けるのは目に見えている。しかし、彼が立派(w)な主戦力として活躍できるのは異能力、そしてここで過ごして得た様々な経験のおかげである。

まあ、銃の扱いはまだ下手なままだが…


「まあ、俺は世界で99しかいない異能力者の一人だからな」


少し自慢気に翔太は自らの力を明かす。それを見る華連の目は優しくはないが。


「え、そうなんですか!」


驚いて翔太をまじまじと見つめるレティシア。


当然の反応だ。世界総人口何十億人の中で99人に会える確率などとてつもなく少ない。まあ、会おうと思えばworld policeに入れば一人ぐらいには会えるが…


「ほらほら異能力の自慢はいいから

それよりもっと大事なことがあるだろ」


レティシアが翔太に興味を持ち始めた所で会話に割り込む華連。


「ん?何がですかい?」


「娘、world policeは一時的な保護は許可するが、長期間住まわせたりすることは許可されていない

つまり自分が住む所は確保しなくてはならない」


少し冷たい気もするがそれを今議論したってしょうがないな…

「前住んでいた所はどう?」 そう翔太は提案してみる。


「ダメです……あの家には私を捕まえようとする人達が来て荒らされてしまっています」


「そうだなー 誰かの所に居候するっていう手もあるがな~

やっぱり強い奴が一緒にいてくれた方がいいよな

異能力者とか…」


華連がこちらに視線を送ってくる。

もしかして、この人、俺の家に居候させろって言うんじゃないだろうな


と、華連が翔太の耳を引っ張る。

「痛い痛い 何するんですか!」


「おい、お前あの娘を居候させてやれよ」


そう耳元で小声で言われる。


「俺の家には妹と母さんがいるんで十分ですー」


「何を言っている一人ぐらい増えたってそう変わるもんじゃないだろ

そ・れ・に 部屋で二人っきりであんなことやこんなことを…」


からかうように言う華連に顔を赤くする翔太。


「しませんから!!」



















































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