虚飾の公国は財政難 共通①
「今月は客ハケもよく、稼げました」
「それはよかった。こちらのオークションもうまくいったし……」
男女二名は帳簿を開き、十分にたまっているであろう数字に期待を馳せる。
「お兄様」
継ぎはぎだらけのドレスを着た少女は、真顔になって兄を見た。
「わかっている。いうなシェリス」
二名の男女は紙面に記された数字に頭を抱えた。
「今月もお金がない!」
―――人間の国ルクスダリスはかつて、魔王の国カオスマインにより女王となるプリンセスを失う。
それにより国の存続は困難となり、王弟である公爵が後を継ぎ、ルクスダリスは公国となった。
そしてその王弟の娘で、次期大公となるシェリス=ルクスダリスは苦悩している。
社交界を毎夜のごとく開いては散財し、富めるフリをし、ひけらかす。
実際はその子である兄妹が金を稼ぎ、なんとか保てている虚飾でしかない。
シェリスは朝昼を公爵令嬢と姫騎士団長をこなし、夜はサーカスで資金を稼ぐ。
兄であるリギィは心臓を患っているために動かせない肉体の分、頭を使うオークションや政等で国を支えている。
「こうなったら、やるしかないわ」
「シェリス、それは相手が誰であれ犯罪だ」
「止めないでお兄様」
「止めるわけがないさ、仕方がない。こうなったのも奴等が悪い。やられたらやり返すでレッツゴーだ!」
カオスマインにプリンセスを拐われたのが発端なのだから魔王の息子を拐って身代金をガッポリ貰ってやるわ。