表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/20

魂の叫び ソウルシャウト

二話連続投稿、二話目です

「ソウルシャウト?」


 思わず聞き返してしまったが、異世界と言えばそうだよな。俺はこういうスキルやギフト的なものを求めていたんだよ。


「はい、フェルフォル大陸では十歳の誕生日を迎えた者は、例外なしに目覚めの儀式を行います。自分の信じる神を祀る教会におもむき、神の碑石に触れることにより魂叫に目覚めるのです」


「魂叫というのはどういう能力なんだ?」


「その人が強く望んだ力が具現化するとでも言えば良いでしょうか。料理が得意になりたいと強く願っていた人は調理を。強くなりたいと願えば怪力や戦闘技能を」


 いいねー、理想的な力だ。心の中で強く願ったことが力となり目覚めるか……俺は一体、どんな力を得たのか。神の武器があれだっただけに、今度こそは良い能力が欲しいところだ。


「異世界の方は、この世界に送られてくると同時に力に目覚めている筈です。魂叫を確かめる方法は、さっきお渡したカードを掴んで、柱弐鋲、能力開示と唱えてください」


 それでいいのか。ようはハーレムヒートと同じようにやればいいんだな。


「柱弐鋲、能力開示」


 またも虚空に文字と数字が浮かび上がる。


 柱弐鋲 筒の勇者

 魂叫 ホール


 ハーレムヒートと違ってシンプルな表示だ。まあ、それは突っ込むポイントじゃない。問題は魂叫の横に書かれた穴だ。

 穴って何だ。いや、実はこれは強力な能力という可能性も僅かに残っている。


「弐鋲様。どのような魂叫でしたか?」


「穴だね」


「穴……何ですかそれ」


「いや、訊きたいのはこっちなんだが」


 思わず二人で見つめ合ってしまった。ニコユルも聞き覚えのない魂叫なのか。


「私の知りうる限り、穴なんて魂叫は聞いたことがありませんよ。勇者様は希少な力を得ることが多いとは聞き及んでいましたが、穴ですか」


 もの凄くレアな魂叫のようだ。これはいやが上にも期待が高まるじゃないか。穴から連想される能力としては、空間に穴をあけて別の場所に移動できるワープホールや、どんなに硬い相手だとしても風穴を空けることが可能。とかだったら、最高なんだけどな。


「考えても答えが出そうにありませんので、使ってみましょう。やり方を教えますので、やってみてください」


「そうだな、それが一番手っ取り早そうだ」


「まず目を閉じて心臓の鼓動を感じ、意識をそこに集中します。そして、深呼吸を繰り返し、目を見開くと同時に魂叫を口にします。手から放出する系統の場合もありますので、念の為に右手を前に突き出しておいた方がいいですよ」


 じゃあ、やってみるか。手の平は窓際に向けておくか。これで手から何かが飛び出しても安心だろう。


「やるよ! すうううぅはあああぁすうううぅ……ホール!」


 体から何か抜け出るような感覚と、急激な虚脱感に襲われる。

 くううぅ、立っているのも辛いぐらい体がだるいぞ。だが、魂叫とやらは発動してくれたようだ。

 俺の手の平から一メートル程先に黒い円が浮いている。大きさは百円玉ぐらいか。まるで天井から糸で吊るされているかのように、黒い輪がそこにあった。

 手を下げても黒円はそこに佇んでいる。覗き込んでみるが向こう側が普通に見える。空中に黒い輪ゴムが浮かんでいるだけにしか見えない。

 側面に回ってみると、薄い紙ぐらいの厚さしかない。空間に黒い線を一本引いたような感じだ。

 注意してみなければ見落とす存在感の無さだな。


「これがホールですか。黒い円ですよね、どう見ても」


「だよな。で、何なんだろうなこれ」


「取り敢えず、この棒で突いてみてください」


 そう言って何の為に使うのかわからない、木の棒を手渡された。ニコユルは俺の後方へ退避しているな。

 見知らぬ怪しげなナニかだからな。警戒して当たり前か。


「爆発とかしないだろうな……」


 恐る恐る木の棒で穴の中心を突くと――そのまま後ろに突き抜けた。それだけだ。黒い円が存在しないかのように、棒は何の抵抗も感じることもなく普通に貫けた。

 黒い円が消えることもなく、棒に損傷もなく、ただそこに黒い円があるだけ。


「何これ?」


「何でしょうね?」


 質問を質問で返された。本当にナンダコレ。この黒い円って穴ってことだよな。棒を入れたまま上下に振ると、黒い円の縁から外に出ることはできないようだ。

 つまり、空間に空いた穴で間違いないようだ……で、どうしろと。


「えっと、その穴は動かせたりしますか?」


「試してみるよ。はあああっ、ふぬううぅ」


 踏ん張ってみたが微動だにしない。一度出したら、その場に固定されるのか。


「もう一つ出すことは可能ですか」


「やってみるか」


 そうやって、三回発動させてみてわかったことが幾つかある。

 まず、一度出したら固定されて動かせなくなる。

 二つ目を出すと一つ目は消える。同時に二個は無理らしい。

 手を出さなくても狙った場所に出せるが、自分から10メートル以上先には出せない。

 壁に貼り付けるようにして出して、穴に棒を突っ込んでも壁の向こう側に突き抜けることは無い。

 木や植物に穴を設置できない。たぶん、生き物に直接発動させることは不可能。

 そして、異様に疲れる。連続で三回発動させると動けなくなるぐらいだ。


「何これ」


「何でしょうね」


 どうすんだこれ。黒い円というか輪を、好きな場所に貼り付けられるだけの能力。


「使い込めば、威力が増して、応用が効くようになりますから、成長に期待しましょう」


 ありがとう、慰めてくれて。今のところ利用価値がないように思えるが、まあ、意外と使い道があるかも知れないし、成長するなら使いこんでみるか。

 こういう、異世界に勇者として召喚される系統は、チート能力や尋常じゃない威力を秘めた武器を渡される物だと思っていたのだけど、異世界人生はそんなに甘くないようだ。


「今日はここまでにして、体を休めましょうか。夜も更けてきたことですし」


 晩御飯は雑草茹でたのと飴玉だけか。ここで、他に何か食べ物は無いのかと訊ねるのは愚行だよな。魂叫のせいか異様に腹が減っているが、今日のところは我慢しておこう。

 押入れの上部に登り、体を横たえる。みしっと嫌な音が聞こえるが、大丈夫かこれ。俺が怪我するのは別にいいが、下にニコユルがいるからな。

 寝返りをしないように注意しながら寝ることにしよう。





「にぼおうはまは、すばひゃひい、おひょもひゃひふぉ」


「うん、食べながら話さないでいいから。食事に集中してくれ」


 壁の亀裂から射し込む朝日を浴びながら、頬一杯に料理を詰め込み、怒涛の勢いで喰らうニコユルを前に、俺はのんびりと食事をしている。目の前に結構な量の料理があるのだが、これはシンリンとリングが持ってきてくれたものだ。

 昨日は晩餐会があったらしく、俺を除いた四人の勇者は参加したそうだ。そこで、二人は俺の境遇を知り、料理を持ち帰ってくれた。

 朝方まで解放されなかったらしく、二人が来た時には陽が登り始めていたので、俺たちは豪勢な朝ご飯を食べることとなった。

 二人ともかなり眠いらしく、そのまま教会へと戻っていったので、今頃、熟睡していることだろう。


「はあああぁ、これが満腹という感覚なのですね……」


 ニコユルのうっとりとした表情と言葉に涙を禁じ得ない。何処まで極貧生活をしてきてきたんだ。


「ハムは日持ちがするので、晩御飯にとっておきましょう。あと、パンは頑張れば一週間近くはもちますよね」


「ううっ、もうやめてくれ。大丈夫。今日の夜も二人が料理持ってきてくれるそうだから、安心して」


「本当ですか、弐鋲様! おお、神よ! このような素晴らしい勇者に仕えることができ、感謝の言葉もありません!」


 俺は何もしてないけどね。ここまで悲惨な姿を見ていると、ニコユルの為にも、人並みの生活が出来るぐらいは頑張ろうという気になった。

 勇者の使命うんぬんは兎も角、強くなっておいて損は無い。今日からの鍛錬、気合入れていかないとな。

 食事を終えた彼女と連れ立って、教会の外に設置されている鍛錬場へと向かった。


 それは巨大な体育館のような建物で、かなりの硬度がある鉱石をくり抜いて作られた、この国自慢の鍛錬場らしい。

 日頃は騎士団や兵士が使っているのだが、勇者が召喚されてから二週間は五神勇者の貸切りだということなので、気兼ねなく使わせてもらうことにした。

 扉を潜ると、中には誰もいなかった。他の勇者と巫女は昨日の宴会で疲れ果て、今頃は夢の住民となっているのだろう。


「では、まず私との弾丸契約をしてもらいます。左手にハーレムヒートを握り、右手を私の後頭部に当ててください」


 体が密着しそうになるぐらい、距離が縮まる。童貞にこのシチュエーションは緊張するぞ。契約の方法が決まっているので従うしかないのだが、胸の鼓動が聞こえてないだろうな。


「そして、私の言葉を繰り返してください。喜びも怒りも哀しみも楽しみも乗り越え、共に住まい同じ時を過ごすことを、ここに誓う」


 これって結婚式の誓いの言葉に似てないか。かなり気恥ずかしいが、ここは我慢して耐える場面だ。


「喜びも怒りも哀しみも楽しみも乗り越え、共に住まい同じ時を過ごすことを、ここに誓う」


 おっ、ハーレムヒートの表面に走る黄色の線が光を放っている。よく見るとニコユルの全身も仄かな光に包まれているぞ。

 次はどうすればいいのかわからず、ニコユルの指示を待っていたのだが、彼女は俺の目を見つめたまま一言「誓います」と呟いただけだった。

 ハーレムヒートと彼女を包む光が増し、閃光が鍛錬場を満たす。

 あまりの眩しさに耐えられなくなり、ギュッと瞼を閉じて光が納まるのを待つ。それは一瞬の輝きで、すぐさま光は消え失せ、目を開けるとニコユルの姿は消えていた。


(弐鋲様、聞こえますか?)


 直接頭に声が響いてきた。これはニコユルの声で間違いない。


「ああ、聞こえているよ。そっちは大丈夫かい?」


(はい、問題ありません。思ったよりも広々としています! 室温も適温ですし、かなり居心地がいいです。床も板張りですし、汚れが一つもないですよ!)


 声が弾んでいる。そりゃそうか、住んでいる教会よりも良い環境だからな。


「家具とかは?」


(何もないです。四角い空間があるだけですよ)


 これって、居住性の数値を上げたら家具や設備とか増えるということか。


「じゃあ、色々と実験してみるよ。まずは軽く揺らしてみるから」


 銃を慎重にゆっくりと上下に揺らした。この揺れが伝わっているなら、弾丸の中にいるのはかなりの苦痛になる筈だが。


(まだですかー。こっちは準備万端ですよ)


 揺らしていることにすら気づいていないのか。だったら、もう少し激しく振り回してみるか。上下だけではなく左右にも振ってみる。


「どんな感じ」


(全く揺れていません。快適そのものです)


 ということは、弾丸の中に控えてもらいながら戦闘しても、何の問題もないって事か。なら、次のステップに進むとしよう。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ