7 宴会
晴れて、ホブゴブリンのマルスとフレンドになった。なんだか流されるままになってしまったが、同じスマホ使いが早々に見つかって、かなり嬉しい。
今の俺には、スマホしかとりあえず無いわけで、これについて色々知ることは、俺にとって最優先事項なのである。そしてスマホ使いとしての先達から話を聞けるというのは、かなり重要なことだ。
それにしても、小一時間程度話したぐらいで友達認定とは、マルスも充分チョロい奴である。ゴブリン族よ、それでいいのか?
訊きたいことはたくさんあったがそろそろ戻ろうか、と村の広場へと向かうと、既に宴会が始まっていた。特に開始の挨拶などがあるわけでもなく、いつもなぁなぁで始まってしまうらしい。まぁまだ日も高いうちから始めているこの連中は、狩りも引退し、かといって家庭でも仕事がないような翁ゴブリンばかりであるらしいが。
「久シ振リノ宴会ダカラナ。ミンナ楽シソウダ」
とは、マルスの談。
なんでもゴブリン族の宴会は、客人をもてなす時にだけ開かれ、それ以外では行われないらしい。そして、いつ開かれるか分からない宴会に提供するためだけに、各家庭が様々なモノを秘蔵していて、それが解禁されるとあっては、我慢もそうそうもたずに主賓そっちのけで始めてしまった。ということらしい。
ちなみに、マルスの家(族長の家)では、薬草酒を醸造しているとのこと。そのなかでも特別な50年モノを今回は出すと、マルスの鼻息も荒い。「オ前モ、良イトキニ来タ」と50年モノがあるからなのか、自分が飲みたいからなのか分からないが誉められたりもした。
「オマエモ、ノメ!」
すっかり出来上がってしまっている翁ゴブリン達に捕まってしまった。
マルスは? と辺りを見回すと小さくなっていく背中が見えた。逃げやがった!
酔っ払い共にがっしりと肩を掴まれ、木の実の皮をそのまま使った盃を手渡される。そこに薄く緑がかった液体をなみなみと注がれた。
匂いは酒のそれだ。
翁ゴブリン達の目が俺に集まる。
これは逃げられないなと、意を決して口をつける。
ミントのようにスッと鼻に抜ける感じがした後、爽やかな口当たりと程好い苦味が広がる。
嫌いじゃない。
そのまま一気に盃を干すと、周りの翁ゴブリン達は手を叩いて喜び、オレノモノメ、オレノモノメ、と次々と注ぎに来る。
それぞれ微妙に風味が異なり、なるほどこれが家庭の味という奴か。と軽く酔っ払いながら思った次第である。
宴会は夜通し行われた。
途中、イェーガーさんが軽自動車程もある猪のような獣を担いで現れたときは、村中が沸き立った。
ちなみにこの猪、名前を「ウリボア」といい、これでも子供なのだそうだ。親は「ボスボア」といい、デカイ奴だと小山程もあるそうだ。マジかよ!?
イェーガーさん宅の秘蔵ッ子は色々な干し肉で、これが50年モノの薬草酒に合うこと合うこと。お陰で村のゴブリン達と一緒に広場で酔い潰れてしまい、翌日、目が覚めたのは昼もかなり過ぎた頃だった。
なんとか三日坊主にならずに済みました。
これからもとりあえず書いたら投稿という感じで、不定期になってしまうと思いますが、悪しからず。