4 緑色の小鬼と言えば?
ゴブリンである。
いや、実際は違うかもしれないが、見た感じゲームなんかに出てくるゴブリンそのものである。
ちょうどすっぽりと草に隠れるくらいの背の高さに、下顎から伸びた牙を覗かせる醜悪な顔。体表は緑色で、申し訳程度に腰に獣の皮を巻いている。
ギギグギ。
ゴブリンと目が合った。というか合いっぱなしである。ここで目を逸らしたらヤられる!
ギギグゴ?
ゴブリンが首を傾げる。
俺も同じ角度へ首を傾ける。座って半身の状態であるため些か無理な体勢ではあるが、ここは引けない。引いたら負けである。
するとゴブリンが口を開く。
「オイ、ニンゲン、コンナ、トコロデ、ナニシテル」
意外とネイティブな発音である。それにつられて、「何と言われましても……」とかなり混乱しながらも会話をするべく口を開く。
ゴブリンって喋るんだな。じゃあさっきのギギギ言ってたのは何だったんだ?
とそんな疑問に気付くわけもなく、ゴブリンは更に口を開く。
「ココ、オレタチノ、ナワバリ。オマエタチ、コッチコナイ」
ちょっとムッとしている雰囲気。
マズイ。マズイ。このままだとそのまま頭からバリバリいかれる感じだ。俺ってば不味いですよー。腹壊しますよー。と心のなかで助命嘆願していると、
「ニンゲン、マヨッタカ?」
とまさかの気遣いの言葉。
「ニンゲン、マヨッタナラ、ウチクル?」
とまさかの気安いお誘い。
断ったならどうなるのか?と思いつつも頭の中のそろばんを弾く。このまま大草原のど真ん中で、使えないスキルを持て余してビクビクおっかなびっくり進むよりも、少なくとも話は通じる相手についていく方が100倍良いに決まっている。もし、このまま連れていってお家の方でバリバリするつもりなら、ここで見つかった時点で俺は終わってるということだ。それなら潔くついていって歓待されることに賭けるのが俺の唯一の正解に思える。
「それではお願いしてもよろしいですか?」
できるだけ下手に出てみる。
すると、これはゴブリンなりの笑顔なのだろうか?
元々醜悪だった顔をさらに歪ませて、「クルトイイ」と手招きしながら来た道を引き戻すゴブリン。俺はそれに素直についていくのみである。