ぷろろーぐ
魔法のある現代の日本のイメージです。なので異世界かなと思いタグを付けました。
魔法が当たり前のようにある、現代日本。
魔法とガソリンのハイブリット車が走っているような、そんなささやかな差異がある世界。
この世界は一見平和に見えて、大きな危険性を孕んでいたのだった……。
と、書いてみるテスト。
如月慧は、海山学園に在籍している中学一年生の男である。
黒髪黒目の一般的日本人であるが、本人の、良く言えば明るい性格を現したような瞳と背の高さから、小動物のように小柄で可愛いと、女の子達に評判であった。
クラスのマスコットキャラといっても良いのかもしれない。
そんな彼は、入学して二ヶ月。
新しいクラスに新しい友達に囲まれて、そして中学校に入学してすぐの出来事により親友となった、ちょっと変わった風見鶏和臣と慧は話していた。
「やっぱりさ、俺、中学生になったわけですよ。そう、もう小学生じゃないんだ!」
「そうだな、中学生なんだから小学生ではないな」
冷静に答える和臣。
彼はこの学園にトップクラスで入学した、黒髪黒目の落ち着いた雰囲気の少年だった。
そんな彼は、自分の事を『夢見がちな現実主義者』と呼んでいる程度に変わっており――けれど、悪い奴ではなかったのと、似た部分があるのだろう――慧と馬が合った。
そんなわけでごく普通に机が並び、クーラーのため締め切られた教室にて。
お昼休みに、慧は母親に作ってもらったお弁当と食べ、水筒に入れた紅茶を飲みつつ、ここ一月以上、力説している内容を再び熱弁していた。
「やっぱりさ、中学生になったら彼女が一人くらいは欲しいんだ!」
「……それだったら土魔法が使える奴に頼んで、こういうキャラが欲しいんですとお願いしてお金を払えばいいんじゃないのか?」
「俺は生きている彼女が欲しいんだ! できればハーレム! 色んな女の子に言い寄られて、慧様って言われたいんだ!」
慧の脳内にあるのは、美少女達にちやほやされる自分である。
(物語みたいに、可愛くて色々と異なった魅力的な女の子に追い回される自分とか、良いよな……)
と、ほわんと慧が思っていると、そこで和臣に嘆息された。
「男の取り合いをしている女同士の容赦のない戦いなんか見たら、女性不信になるぞ。歴史上の人物みたいに」
「ふ、分ってないな和臣。俺のイメージしている望むハーレムとは、女の子同士が仲良く俺を取り合ったり自分の魅力をアピールしてくるような、ちょっと嫉妬してくる、そんなハーレムなんだ! 目の保養のようなハーレムなんだ!」
「そうか、若いというのはいいものだ」
何回もした話題なので飽きてしまった和臣が、慧の台詞を適当に流した。
その和臣の何処か老成したような言葉に、慧は半眼で、
「同い年が何言ってやがる。でもって、がんばったら可愛がってくれるような子が良いな!」
「姉萌えというやつか?」
「違う。そして姉はいいや、うん。そういう対象に見れないから」
「そういえば慧にはお姉さんがいるんだったな。紹介してくれ」
「姉ちゃんはやらん。でも年上の女の子に可愛がられるのもいいな……年下もいいな年下、可愛がりたい……」
何故か同い年は、明言を避ける慧。
そんな現実逃避をするように呟く慧に和臣は、よっぽどトラウマになっているんだなと思った。
けれど優しい和臣はそのことに対して特に突っ込まず、代わりに、
「やはり、一人の女性をひたすらに愛し抜くのがいいと思う。運命の恋人が一人さえいれば良い、僕はそう思うんだ」
「愛が重い」
特に表情も変えず、けれど夢見がちな事を言う和臣に慧は半眼でいると、和臣が分っていないなと肩をすくめて、
「大体、二兎追うものは、一兎も得ずって言うだろう? 何人もの彼女を追いかけていたら全員に逃げられるぞ?」
「そんな事いったってハーレム……」
「肉食獣だって、一匹の獲物に狙いを定めて追い掛け回すだろう? そうしないと手に入らないんだろう」
「……一人に追い掛け回されるのって怖いんだぞ」
「なんというか、彼女は特別だろう。今まであんな子にあった事はあるか?」
「無い。そして怖い」
「諦めろ。それが嫌なら、他に女の子を捜せ。自分から口説くんだ」
その言葉に、慧は何にか素晴らしい助言を聞いたかのように目を輝かせた。
(そうだ、もしも別の彼女が慧に出来れば、彼女も慧を諦めてくれるかもしれない)
やっぱりもっとおしとやかで可憐な女の子がいいなと思うと同時に、そんな子が自分を口説けるのだろうかと考えて、はっと慧は気づいた。
「そうか、まだ見ぬ女の子が告白してくるのを待つよりも自分から行けば良いって事ですね!」
「……まあ、やる気があるのは良い事だ、うむ」
「ありがとう、和臣、早速可愛い子を探しに行って来る!」
「何処へ?」
「ここではない何処かへ!」
にこやかに、どう見ても現実逃避しているような慧の発言に、和臣はしばしその答えに悩んでから、
「クラスにはいないのか?」
「もしも振られたら気まずいじゃないか」
「……窓から校庭を見て、外でご飯食べている子達から目星を付けたらどうだ?」
「良い考えだ、採用!」
そう言って窓へと走っていく慧。
必死にどこかに可愛い子がいないか探す慧は、窓の外を見ながら食後のストレッチを始める。
いっちに、いっちにと運動しているのは良いのだが、その理由はこれから全速力で逃げ回らなければならないという、既に日常と化してしまった、残酷な現実である。
しかもその事を泣き言のように言うと、何故か慧が悪者扱いされるのである。
解せない、と慧は呟く。
はたから見ている分にはある意味羨ましいのかもしれないが、されている本人にとっては堪ったものではない。
この恐ろしい現実と戦わなければならないその苦しみを、まるで彼らは理解しないのである。
あまつさえ、代われなどと暴言を吐かれるのだ。
そこで、慧は教室の後ろのドアが少しだけ開いていることに気づいた。
この部屋にはクーラーが効いている為に締め切られており、開けっ放しではなかった。
更に加えて言うならば、この今日室内にいる人間は増えても減ってもいない。
そして教室の後ろのドアが開いていたのだから、誰かが入ってきたといえる。
「どこだ、何処にいる……」
そこで、地面を一人の女の子が這っているのを見た。
慧は見たくもないし、気づきたくも無いが気づいてしまった。
そう、そこにはここ暫く慧の頭を悩ませている彼女がいた。
彼女は慧息づかれた事に気づいて、ゆっくりと立ち上がり、服の埃を簡単に落とす。
そして、満面の笑みで微笑み、言った。
「今日こそ、慧は私のものになってくれるかしら?」
そう、いつものように満面の笑みで、けれど肉食獣の獲物を狩ろうとするような獰猛さで、長い黒髪の美少女、弥生姫子は告げたのだった。
ラブコメです。よろしくお願いします。
2013/3/21 一部修正しました。ただコメディさと軽快さというある種の軽さと、描写の追加のバランスをどうしようかなと考えております。読んで楽しい、という気軽な娯楽性が一番の目標なのですが、うーん、難しい。この話はもう少し修正します。