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初めの一歩、踏み出す前。
「名前を奪われてしまったんだ」
と、目の前の少年は言う。彼のハイライトが無く、曇った青い瞳には私の姿が映り続けていた。
「記憶も無い。何も思い出せないんだ」
と、また少年は言う。鮮やかで、それでいて毒々しい彼の水色の髪が風になびく。彼はかけていたヘッドフォンを外して、私に言う。
「僕が記憶を取り戻すまで、一緒に居させてほしい」
と。私はこれから旅をするつもりだと告げると、「それでも、むしろそのほうがいい」と彼は言った。
――崩れゆく世界にさよならを告げて、その世界から除け者にされた私達は、その世界への外へと足を一歩踏み出した。