第9話:神の抜き打ち訪問――生態系の暴走と「知恵あるスライム」
第9話:神の抜き打ち訪問――生態系の暴走と「知恵あるスライム」
勇者たちを追い出した数日後。シルスがリビングで昼寝をしていると、空間がパチンと弾けるような音がした。
「やっほー、盆ちゃん! いや、今はシルス君だっけ。居心地はどう? ちゃんと引きこもれてる?」
そこには、ポテトチップスの袋を片手に持った神アルシエルが、我が物顔でソファに座っていた。
「……神様。不法侵入は勇者だけで十分ですよ」
「冷たいなぁ。君が魔素を安定させすぎて、あんまり面白いデータが取れるから、ちょっと観察に来ただけだよ」
アルシエルは窓の外、庭で甲斐甲斐しく働くスライムたちを指差した。
「君、気づいてる? このドーム、魔素が濃すぎて『新しい生態系』が爆走しちゃってるよ」
「生態系?」
シルスが慌てて庭に出ると、そこには目を疑う光景が広がっていた。
筆頭スライムのプルを中心に、スライムたちが数体集まり、**「会議」**をしていたのだ。それも、泥で簡易的な「机」と「椅子」を作り、地球の文字によく似た記号で地面に何かを書き記している。
「彼ら、君の『地球知』から漏れ出した魔力を浴び続けちゃったでしょ? そのせいで、知能が人間並み、いや、それ以上に進化し始めてるんだ。見てよあの子、計算機(電卓)を模倣した体組織で、ドーム内の収穫効率を計算してるよ」
見れば、一匹のスライムが体に数字を浮かび上がらせ、畑のゴブリンたちに「最適な肥料の配合」を指示していた。さらに、森の奥では鳥たちが合唱団のように美しいハーモニーを奏で、ドーム内の空気振動を利用して「有線放送」もどきを始めている。
「……これ、放置しておくとどうなるんですか?」
「うーん、あと一ヶ月もすれば、この1キロの中で『スライム文明』が誕生するんじゃないかな? 彼ら、君を『万物の創造主(お父様)』として崇拝してるし。宗教戦争が起きないように気をつけてね」
「冗談じゃない! 俺はただ、静かに暮らしたいだけなのに!」
アルシエルは楽しそうに笑い、「あ、これお土産。地球の新作スイーツのデータ、無限倉庫に入れといたから!」と言い残して消えていった。
シルスは、知的な輝きを瞳(らしき点)に宿してこちらを凝視してくるプルを見つめ、溜息をついた。
「プル……。お前、いつの間に俺より賢くなったんだ?」
「ぷるっ。……マスター、ツギノ、コウジ、ハ、スイロ、ノ、ジドウカ、デ、ヨロシイ、デショウカ?」
ついに喋り始めたスライム。
シルスの「最強の引きこもり生活」は、外界からの侵入者だけでなく、内側からの「進化という名のトラブル」によって、ますます賑やか(カオス)になっていくのであった。




