第45話:【スピンオフ】三人の茶会――「盆ちゃん」の思い出とポテトチップス
第45話:【スピンオフ】三人の茶会――「盆ちゃん」の思い出とポテトチップス
シルスが眠ってから2500年。
ドームのテラスで、アリステア、ミーナ、そして人型に擬態したプルが、静かにお茶を飲んでいた。
テーブルに並ぶのは、プルが3000年かけて再現した「地球のポテトチップス(うすしお味)」だ。
「……懐かしいですね。主様が初めてこの味を私に語られた時、その適当な説明にどれほど苦労したことか」
アリステアが、珍しく目を細めて笑う。
「ホント。ミーナに『もっと激辛にして!』って無茶振りして、結局自分で食べて悶絶してたわよね」
ミーナがチップスをかじりながら、かつての主様の情けない姿を思い出す。
「マスター……。マダ、寝テル。……デモ、私、寂シクナイ。……世界中、マスターノ、知恵、デ、溢レテル」
プルが空を指差す。
今や世界中の人々が使う「マナ・ネット」も「コンビニエンス・ストア」も、すべてはシルスが語った断片的な知識を、プルたちが3000年かけて具現化したものだった。
「主様が目覚めた時、『ああ、地球より便利になったな』と言わせたい。それが私の今の、唯一の仕事上の目標(KPI)です」
「私は、ご主人様が起きたら真っ先に『お帰りなさい、この穀潰し』って言ってあげるつもりよ」
三人は、主様がいつか目を覚ますその瞬間のために、また明日も世界を管理し、ホコリを払い、タライを磨く。
宇宙で最も有能で、最も愛に溢れた「お留守番」は、今日も静かに続いていく。




