第44話:【スピンオフ】聖域外交術――「タライ」と「契約書」の1000年
第44話:【スピンオフ】聖域外交術――「タライ」と「契約書」の1000年
500年が経過した頃、外界の人間たちが「聖域の恩恵」を求めて強引な手段に出始めた。
ある大帝国の軍隊が、ドームの扉を魔法の槌で叩き壊そうとした時のことだ。
「……アリステア。あいつら、うるさい。主様が寝返りを打たれたわ」
ミーナの瞳が、冷たく紅く光る。
「そうですね。……プル殿、あの方々に『教育』が必要なようです」
プルはドームの外に、一匹の「名刺を持ったビジネスマン型スライム」を派遣した。
スライムが差し出したのは、文字が自動で書き換わる**【不可侵・絶対従属契約書】**。
「ナニコレ? 字が読めないんだけど……」と戸惑う皇帝の頭上に、アリステアが操作する「管理コンソール」から、重さ1トンの**【超硬質オリハルコン製タライ】**が召喚された。
『ドーーーーーン!!』
大地が揺れるほどの衝撃。だが、アリステアの魔法により、音は「ポテッ」という可愛い音に変換されていた。主様を起こさないための配慮である。
一撃で廃人寸前になった皇帝に対し、スライムは無機質な声で告げた。
「コレ、契約、デスカ? ……ソレトモ、次ハ、2トン、デスカ?」
これが、後に世界経済を支配する「スライム銀行」と、聖域を絶対視する「聖域教団」の起源となった。彼らにとって、世界を支配することは「主様の静かなお昼寝環境を維持するための、単なる雑用」に過ぎなかったのだ。




