第41話:マザー・プル――3000年熟成された「管理AI」の慈悲
第41話:マザー・プル――3000年熟成された「管理AI」の慈悲
健斗は、アリステアの監視を盗んでドームの最深部、**【中央演算核:プル】**へと辿り着いた。
そこには、かつての「青いゼリー」の面影を残しながらも、直径100メートルを超える巨大な透明な球体へと進化した「プル」が鎮座していた。
「……プル……様、ですか?」
「プル……。健斗、サトウ。貴方、マスタート、同ジ、臭イ。……懐カシイ、社畜臭、デス」
プルの内部には、世界中の「幸福度」「気温」「経済指標」がホログラムとして流れている。
プルは今や、この惑星のすべてを裏から管理する「慈愛のOS」となっていた。
「マスター、シルス。今モ、寝テル。私、ソレ、守ル。……健斗、教エテ。今ノ、地球、マダ、残業、アル?」
「……ああ、あるよ。みんな死にそうな顔して、電車に揺られてる」
健斗の言葉に、プルが悲しげに明滅した。
すると、プルの触手が一本伸び、健斗の脳に「三千年前のシルスの記憶」を直接投影した。
それは、49歳の盆ちゃんが、初めてスライムに名前をつけ、一緒に泥遊びをした時の、素朴で温かい記憶。
「マスター、言ッタ。『自分タチガ、楽ヲスルタメニ、世界ヲ、作レ』。私、ソレ、守ッテキタ。……健斗、貴方、モ、休ンデ、イイ。私ガ、全部、計算シテ、アゲル」
プルの巨大な粘液が、健斗を優しく包み込む。
それは、母親の胎内に戻ったような、あるいは「完璧に自動化されたオフィス」で、全権限を丸投げされた時のような、背徳的で圧倒的な安心感だった。




